「ロンドン・ドックランズ博物館」その名を馳せた埠頭の過去と現在

「ロンドン・ドックランズ博物館」その名を馳せた埠頭の過去と現在

更新日:2018/07/19 11:56

Lady Masalaのプロフィール写真 Lady Masala 知られざる名所案内人、蚤の市マニア
高層ビルが立ち並ぶロンドンのウォーターフロント「カナリー・ワーフ」。現在はオフィス街となっていますが、1980年までは世界的な商業埠頭として知られていました。

当時の面影を残すのは、倉庫として使用されていたというレンガ造りの建物。その一角を改装してつくられた「ロンドン・ドックランズ博物館」には、大英帝国とともに繁栄した埠頭と、周辺地域の歴史を知るための貴重な資料が展示されています。

高層ビルが建ち並ぶウォーターフロント「カナリー・ワーフ」

高層ビルが建ち並ぶウォーターフロント「カナリー・ワーフ」

写真:Lady Masala

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ロンドン東部にある「Canary Wharf(カナリー・ワーフ)」は、金融会社の高層ビルが建ち並ぶウォーターフロント。ロンドンの街並みには、レンガ造りの歴史的建造物が似合うと思っていると、突然現れる摩天楼に驚いてしまうでしょう。

ここは、かつて「West India Docks(西インド・ドック)」とよばれた世界でも有数の商業埠頭があった場所。1980年に閉鎖されてからは、再開発によって、オフィスが林立する一大金融街へと生まれ変わりました。その規模は、ロンドン中心部にある「シティ」を凌ぐほど。

高層ビルが建ち並ぶウォーターフロント「カナリー・ワーフ」

写真:Lady Masala

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西インド・ドックは、1802年に開港して以来、カナリア諸島やイギリス領であった西インド諸島との貿易拠点として発展を遂げました。1960年代には最盛期を迎えましたが、港湾産業自体の衰退とコンテナ輸送に伴う貨物船の大型化に対応できなかったことが原因で、1980年には完全に閉鎖されました。

高層ビルが建ち並ぶウォーターフロント「カナリー・ワーフ」

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かつては、砂糖の保管庫として使用されていた建物を利用して2003年に開館した「Museum of London Docklands(ミュージアム・オブ・ロンドン・ドックランズ)」では、埠頭周辺の変遷を中心に、ローマ時代から近代までの歴史を振り返ることができます。

組織的に運営されたレンガ造りの「倉庫」

組織的に運営されたレンガ造りの「倉庫」

写真:Lady Masala

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最初の見学ルートは、「Warehouse(倉庫)」に関する展示。船から下ろされた積荷は、すぐに倉庫へと運ばれました。

貿易商たちには、輸入品の種類や質、個数、重さを把握し、税関に申告する義務がありました。倉庫内では、船乗りや港湾労働者だけでなく、税関職員も立ち会い、不正が行われないように厳しい審査が行われました。盗難防止のために警備員も雇われるほどで、海の男たちの荒っぽいイメージとは裏腹に、各々が与えられた役割を組織的に果たしていたといいます。

組織的に運営されたレンガ造りの「倉庫」

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埠頭が開港した当時は、造船業やそれに関連する工場、船乗りや港湾労働者を当て込んだ食べ物屋などが相次いで開業し、埠頭周辺は、大変な賑わいをみせました。

1850年頃につくられたという舵を取る船乗りの像は、帆柱を製造していた「Bawn & Co.mast-makers(バウン・マスト・メーカー)」のトレードマーク。創業者で、彫刻家でもあったバウン氏自らが製作したもの。工場の屋根にそびえたこの像は、当時、埠頭周辺のランドマークとして知られていました。

船乗りと港湾労働者たちの生活を垣間見る「船乗りの町」

船乗りと港湾労働者たちの生活を垣間見る「船乗りの町」

写真:Lady Masala

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「Sailortown(船乗りの町)」は、1840年代から50年代の埠頭周辺の町を再現した展示。薄暗い路地に建ち並ぶパブや商店、船乗りたちの住居は小奇麗とは程遠く、ごちゃごちゃとした印象を与えます。

船乗りや港湾労働者たちの多くは、仕事場に近い埠頭周辺に住んでいましたが、その生活は楽ではありませんでした。狭い一部屋に一家全員が、時には、複数の家族が暮らしていたこともあったといいます。

船乗りと港湾労働者たちの生活を垣間見る「船乗りの町」

写真:Lady Masala

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下水道設備の整っていなかったという埠頭周辺。「船乗りの町」を歩いていると、きついアンモニア臭がただよってきます。なんと、この展示では、当時の臭いまでもが再現されているのです。

現代と比べると劣悪だったといわれているヴィクトリア朝の庶民生活。その暮らしの一端を垣間見ることができるでしょう。

テーマはカリブ海 レストラン・バー「ラム&シュガー」

テーマはカリブ海 レストラン・バー「ラム&シュガー」

写真:Lady Masala

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お腹がすいたなら、博物館に併設されるレストラン・バー「Rum & Sugar(ラム&シュガー)」に行きましょう。西インド諸島からの主な輸入品であったラム酒と砂糖にちなんだネーミングがおしゃれです。

酒樽をディスプレーした広々とした空間に、トロピカルなイメージのカウンターバー。食事はもちろんのこと、カクテルをはじめとするアルコールも注文できます。

テーマはカリブ海 レストラン・バー「ラム&シュガー」

写真:Lady Masala

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ここでのお勧めは「Jerk Fish & chips(ジャーク・フィッシュ&チップス)」。ジャークとは、ピメントとよばれる赤ピーマン、オールスパイス、激辛唐辛子ハバネロを混ぜてつくられたジャマイカ風ソースのこと。

カリブ海風のピリッと辛いフィッシュには、スイートポテトを揚げたほんのり甘いチップスがついてきます。辛いのが苦手と言う人は、Classic(伝統的な)フィッシュ&チップスも注文できますが、ここでしか味わうことのできないジャマイカとイギリスの絶妙なコラボレーションを試してみてはいかがでしょうか。

テーマはカリブ海 レストラン・バー「ラム&シュガー」

写真:Lady Masala

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スーツ姿のビジネスマンが行き交う「カナリー・ワーフ」。つい40年ほど前までは貨物船が往来する商業埠頭があったなどとは想像もできないほどに、近代的な地域となった現在。

繁栄を極めた輝かしい埠頭の歴史を振り返ることのできる「ロンドン・ドックランズ博物館」は、ロンドン東部を観光するなら、ぜひとも訪れたい場所といえるでしょう。

※関連MEMOには「シティ」に関する記事を掲載しています。よろしければそちらもご覧ください。

「ロンドン・ドックランズ博物館」の基本情報

住所:No.1 Warehouse, West India Quay, London E14 4AL
電話番号:+44-20-7001-9844
アクセス:地下鉄 Jubilee Line(ジュビリー線)Canary Wharf(カナリー・ワーフ)駅より徒歩3分、または、DLR West India Quay(ウエスト・インディア・キー)駅より徒歩8分。
開館時間:毎日午前10時から午後6時
入場料:無料 

※2017年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/11/02 訪問

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