写真:中山 久美子
地図を見るフィアッコレとは直訳すると「松明」ですが、アッバディアでは薪を積み上げた櫓のこと。このイベントの起源は1000年ほど前、サン・サルヴァトーレ修道院に訪れる巡礼者を暖めるため、薪を積んで火を点けたことから始まったと言われています。この修道院前はもちろん、現在は、旧市街を中心に約30ほどのフィアッコレが設置されます。
この修道院は、伝説によると743年にロンゴバルド族の王によってその基礎が築かれました。修道院で残っている一番古い部分は地下礼拝堂で、36本が連立する柱とその装飾は、今もその当時のまま残っています。現在のロマネスク様式の姿になったのは1036年、当時はトスカーナ南部の重要な修道院の1つとなり、北からローマへ向かう巡礼者もこの修道院に立ち寄ったそうです。
写真:中山 久美子
地図を見るイタリアのクリスマス・シーズンの正式な幕開けは、12月8日の 聖母無原罪の御宿りの日から。ここアッバディアでも、フィアッコレの設置が始まります。フィアッコレの高さは最大10mにも及び、それぞれの地区の男性たちは、何か月も前からフィアッコレに合う薪を集めているのだそう。上に向かって細く、そして安定するように計算されて積まれてゆく様子は、一つの芸術作品を作り上げているかのようです。
写真:中山 久美子
地図を見るイブに火を灯す大きなフィアッコレ以外にも、1m前後の小さな可愛いフィアッコレがあちこちに。旧市街に入る門の前、教会の入り口、家の軒先などに設置され、松ぼっくりや赤い実が飾り付けられた小さなフィアッコレも、アッバディアのクリスマスムードを盛り上げる愛らしいオブジェとなっています。
写真:中山 久美子
地図を見る12月8日は、クリスマス・イルミネーション点灯の日でもあります。日本の都市のような派手なイルミネーションはないですが、石造りのアッバディアのような古い町では、それがとても自然でしっくりと町に溶け込んでいます。
このイルミネーションの点灯やフィアッコレが積み上げられるにつれて、アッバディアはイブの一大イベントに向け、日に日に町全体が湧きたつような空気に包まれてゆくのです。
こうして迎えた12月24日。旧市街脇のメインストリートにある市役所前は、そのオープニングセレモニーを見ようと何百人もの人で埋め尽くされます。18時になるとクリスマス・ソングが演奏される中、祝福を受けた「聖なる火」からフィアッコレに火が灯されると、大きな歓声が沸き上がります。
写真:中山 久美子
地図を見る市役所前のフィアッコレから火をもらった松明は、それ以外のフィアッコレに火をつけるために旧市街を中心に周ります。写真は、旧市街南側の入り口すぐのメルカート広場。ここでは例年屋台が出て、ホットワインなどの販売が行われます。
写真:中山 久美子
地図を見るこちらはメルカート広場からほど近い、サンタ・クローチェ教会。この広場では例年、教会のファサードにキリストをテーマにした映像が映写されます。
フィアッコレの燃え方は、点灯時間やフィアッコレのサイズなどによってバラつきがあります。私は毎年21時くらいに行くのですが、まだ人もまばらでフィアッコレもほとんどが形が残っています。おそらく大半の人は、フィアッコレの点灯式を見てから夕飯のために家に帰ったりレストランに行き、22時以降に戻ってくるのでしょう。それからミサの始まる23時半までが、一番の人出となります。
写真:中山 久美子
地図を見る具体的にフィアッコレで何をするのか?と聞かれれば、特に何をするわけでもありません。炎と活気、そしてイルミネーションとクリスマスオーナメントに彩られた旧市街をそぞろ歩き、すれ違う友人とクリスマスの挨拶を交わしたり、家族や友達とおしゃべりしながらその雰囲気を満喫します。
写真:中山 久美子
地図を見る普段でさえ童話の世界に紛れ込んだような旧市街ですが、素朴なイルミネーションとオーナメントがそれをいっそう引き立てます。毎年行っていても、何枚写真を撮っていたとしても、ついついシャッターを押してしまう素敵なシーンにあちこちで遭遇してしまうのです。
写真:中山 久美子
地図を見るそれぞれの地区ではミニ屋台を出して、ホットワインやこの地方のお菓子を販売しています。標高の高い町なので夜はとても冷え込みますが、フィアッコレの炎で暖をとり、ホットワインを飲みながら人々の笑顔を見ているだけで、心身ともにホッコリとしてきますよ。
写真:中山 久美子
地図を見る旧市街を歩いていると、所々で建物の中にカメラを向けた人に出会います。イタリアではクリスマス・シーズンになると、教会はもちろん、一般家庭でも飾られるあるモノがアッバディアの旧市街あちこちでも見られるんですよ。
写真:中山 久美子
地図を見るそれはプレゼーぺという、キリストの誕生を再現したジオラマ。マリアさまやロバや羊、当時の人々の様子を小さい人形で再現されたものです。凝ったものは電気仕掛けで動いたり、川が流れていたり・・・そんな趣向を凝らしたプレゼーペが、窓や入口のガラス戸に飾られているんです。
写真:中山 久美子
地図を見るプレゼーペにはリアルなものから抽象的なもの、木製のものや鉄製のモノ、またカラフルなものから、写真のようにカラーを絞ってシンプルに仕上げたものなど、本当に個性豊かです。
イブの時点では、まだどこもキリストは置かれていません。0時を過ぎたころか、クリスマスの朝に置かれるのが一般的になっています。
カトリックの総本家であるイタリアでは、クリスマスはやはり特別なイベント。町には大きなツリーが飾られ、美しいイルミネーションにも包まれ、大都市には海外からもたくさんの人が訪れます。そんな観光地で過ごすクリスマスも良いですが、喧騒を離れ、このフィアッコレのような田舎町の伝統行事に参加してみるのはいかがですか?1000年前から脈々と続くその地の歴史を感じながら、独特のムードに包まれて迎えるクリスマス。日本とはもちろん違う、またイタリアの観光地でのクリスマスとも違う、格別な思い出になることでしょう。
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この記事を書いたナビゲーター
中山 久美子
2001年のイタリア・フィレンツェ留学後に結婚、現在はトスカーナ州北部のド田舎に暮らしています。私自身が昔から歴史好き&旅行好きで、要塞や路地、小さな村に特に魅力を感じており、家族とのバカンスやお出か…
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