炎に包まれてクリスマスを迎える!イタリア、アッバディア・サン・サルヴァトーレの「フィアッコレ」

炎に包まれてクリスマスを迎える!イタリア、アッバディア・サン・サルヴァトーレの「フィアッコレ」

更新日:2017/11/30 20:01

中山 久美子のプロフィール写真 中山 久美子 日伊通訳&コーディネイター、ライター
アッバィア・サン・サルヴァトーレはトスカーナ南部、アミアータ山の中心的な町。標高822mにあり、夏は避暑やトレッキング・冬はスキー客が多く訪れます。様々な年間行事がありますが、2016年に全国版テレビで中継が行われたほど有名になりつつあるのが、クリスマス・イブの「フィアッコレ」。アッバディアで1000年も続く、この地の人々に最も愛されている伝統行事とは、一体どんなものなのでしょうか?

起源はなんと1000年前!修道院に集まる巡礼者を暖かく迎えるのが始まり

起源はなんと1000年前!修道院に集まる巡礼者を暖かく迎えるのが始まり

写真:中山 久美子

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フィアッコレとは直訳すると「松明」ですが、アッバディアでは薪を積み上げた櫓のこと。このイベントの起源は1000年ほど前、サン・サルヴァトーレ修道院に訪れる巡礼者を暖めるため、薪を積んで火を点けたことから始まったと言われています。この修道院前はもちろん、現在は、旧市街を中心に約30ほどのフィアッコレが設置されます。

この修道院は、伝説によると743年にロンゴバルド族の王によってその基礎が築かれました。修道院で残っている一番古い部分は地下礼拝堂で、36本が連立する柱とその装飾は、今もその当時のまま残っています。現在のロマネスク様式の姿になったのは1036年、当時はトスカーナ南部の重要な修道院の1つとなり、北からローマへ向かう巡礼者もこの修道院に立ち寄ったそうです。

クリスマス・シーズンの幕開けと共に、積み上げられるフィアッコレ

クリスマス・シーズンの幕開けと共に、積み上げられるフィアッコレ

写真:中山 久美子

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イタリアのクリスマス・シーズンの正式な幕開けは、12月8日の 聖母無原罪の御宿りの日から。ここアッバディアでも、フィアッコレの設置が始まります。フィアッコレの高さは最大10mにも及び、それぞれの地区の男性たちは、何か月も前からフィアッコレに合う薪を集めているのだそう。上に向かって細く、そして安定するように計算されて積まれてゆく様子は、一つの芸術作品を作り上げているかのようです。

クリスマス・シーズンの幕開けと共に、積み上げられるフィアッコレ

写真:中山 久美子

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イブに火を灯す大きなフィアッコレ以外にも、1m前後の小さな可愛いフィアッコレがあちこちに。旧市街に入る門の前、教会の入り口、家の軒先などに設置され、松ぼっくりや赤い実が飾り付けられた小さなフィアッコレも、アッバディアのクリスマスムードを盛り上げる愛らしいオブジェとなっています。

クリスマス・シーズンの幕開けと共に、積み上げられるフィアッコレ

写真:中山 久美子

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12月8日は、クリスマス・イルミネーション点灯の日でもあります。日本の都市のような派手なイルミネーションはないですが、石造りのアッバディアのような古い町では、それがとても自然でしっくりと町に溶け込んでいます。

このイルミネーションの点灯やフィアッコレが積み上げられるにつれて、アッバディアはイブの一大イベントに向け、日に日に町全体が湧きたつような空気に包まれてゆくのです。

祝福を受けた炎による点火セレモニーは、イブの18時

祝福を受けた炎による点火セレモニーは、イブの18時

提供元:Pro loco Abbadia San Salvatore

http://www.cittadellefiaccole.it/地図を見る

こうして迎えた12月24日。旧市街脇のメインストリートにある市役所前は、そのオープニングセレモニーを見ようと何百人もの人で埋め尽くされます。18時になるとクリスマス・ソングが演奏される中、祝福を受けた「聖なる火」からフィアッコレに火が灯されると、大きな歓声が沸き上がります。

祝福を受けた炎による点火セレモニーは、イブの18時

写真:中山 久美子

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市役所前のフィアッコレから火をもらった松明は、それ以外のフィアッコレに火をつけるために旧市街を中心に周ります。写真は、旧市街南側の入り口すぐのメルカート広場。ここでは例年屋台が出て、ホットワインなどの販売が行われます。

祝福を受けた炎による点火セレモニーは、イブの18時

写真:中山 久美子

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こちらはメルカート広場からほど近い、サンタ・クローチェ教会。この広場では例年、教会のファサードにキリストをテーマにした映像が映写されます。

フィアッコレの燃え方は、点灯時間やフィアッコレのサイズなどによってバラつきがあります。私は毎年21時くらいに行くのですが、まだ人もまばらでフィアッコレもほとんどが形が残っています。おそらく大半の人は、フィアッコレの点灯式を見てから夕飯のために家に帰ったりレストランに行き、22時以降に戻ってくるのでしょう。それからミサの始まる23時半までが、一番の人出となります。

童話の世界にいるみたい!独特のムードに包まれる旧市街

童話の世界にいるみたい!独特のムードに包まれる旧市街

写真:中山 久美子

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具体的にフィアッコレで何をするのか?と聞かれれば、特に何をするわけでもありません。炎と活気、そしてイルミネーションとクリスマスオーナメントに彩られた旧市街をそぞろ歩き、すれ違う友人とクリスマスの挨拶を交わしたり、家族や友達とおしゃべりしながらその雰囲気を満喫します。

童話の世界にいるみたい!独特のムードに包まれる旧市街

写真:中山 久美子

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普段でさえ童話の世界に紛れ込んだような旧市街ですが、素朴なイルミネーションとオーナメントがそれをいっそう引き立てます。毎年行っていても、何枚写真を撮っていたとしても、ついついシャッターを押してしまう素敵なシーンにあちこちで遭遇してしまうのです。

童話の世界にいるみたい!独特のムードに包まれる旧市街

写真:中山 久美子

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それぞれの地区ではミニ屋台を出して、ホットワインやこの地方のお菓子を販売しています。標高の高い町なので夜はとても冷え込みますが、フィアッコレの炎で暖をとり、ホットワインを飲みながら人々の笑顔を見ているだけで、心身ともにホッコリとしてきますよ。

一般家屋に隠れたプレゼーペ鑑賞もお忘れなく

一般家屋に隠れたプレゼーペ鑑賞もお忘れなく

写真:中山 久美子

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旧市街を歩いていると、所々で建物の中にカメラを向けた人に出会います。イタリアではクリスマス・シーズンになると、教会はもちろん、一般家庭でも飾られるあるモノがアッバディアの旧市街あちこちでも見られるんですよ。

一般家屋に隠れたプレゼーペ鑑賞もお忘れなく

写真:中山 久美子

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それはプレゼーぺという、キリストの誕生を再現したジオラマ。マリアさまやロバや羊、当時の人々の様子を小さい人形で再現されたものです。凝ったものは電気仕掛けで動いたり、川が流れていたり・・・そんな趣向を凝らしたプレゼーペが、窓や入口のガラス戸に飾られているんです。

一般家屋に隠れたプレゼーペ鑑賞もお忘れなく

写真:中山 久美子

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プレゼーペにはリアルなものから抽象的なもの、木製のものや鉄製のモノ、またカラフルなものから、写真のようにカラーを絞ってシンプルに仕上げたものなど、本当に個性豊かです。

イブの時点では、まだどこもキリストは置かれていません。0時を過ぎたころか、クリスマスの朝に置かれるのが一般的になっています。

田舎町で伝統行事に参加して、いつもと違うクリスマスを

カトリックの総本家であるイタリアでは、クリスマスはやはり特別なイベント。町には大きなツリーが飾られ、美しいイルミネーションにも包まれ、大都市には海外からもたくさんの人が訪れます。そんな観光地で過ごすクリスマスも良いですが、喧騒を離れ、このフィアッコレのような田舎町の伝統行事に参加してみるのはいかがですか?1000年前から脈々と続くその地の歴史を感じながら、独特のムードに包まれて迎えるクリスマス。日本とはもちろん違う、またイタリアの観光地でのクリスマスとも違う、格別な思い出になることでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/12/24 訪問

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