命ふたたび春を寿ぐ・静岡袋井「可睡齋ひなまつり」2021

命ふたたび春を寿ぐ・静岡袋井「可睡齋ひなまつり」2021

更新日:2021/01/07 10:54

麻生 のりこのプロフィール写真 麻生 のりこ 元観光バスガイド、ご当地マンホーラー
飾らなくなった人形を供養したことはありますか? 静岡県袋井市にある古刹の可睡齋では、供養した雛人形およそ2,000体以上による「ひなまつり」を元日から3月31日まで開催。
なかでも大広間に飾られた32段1,200体の雛人形は日本最大級! 感染症の早期終息を祈るアマビエ雛や、華やかな「宝づくしの傘福」も必見です。同時開催の室内ぼたん庭園では、ひと足早く牡丹の鑑賞もできます。

館内中がおひな様!

館内中がおひな様!

写真:麻生 のりこ

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女児の健やかな成長を願い、年に一度飾られる雛人形。役目を終えた人形たちの多くは、寺院等で供養されます。

静岡県袋井市にある古刹の萬松山(ばんしょうざん)可睡齋では、それらの雛人形たちに新たに命を吹き込み、「命の尊さを考えるきっかけになれば」との考えにより、平成27年(2015年)から「可睡齋ひなまつり」を開催。2018年には「2018ふじのくにしずおか観光大賞」を受賞しました。

会場となるのは山門をくぐると右側にある総受付「萬松閣」と、その隣に建つ「瑞龍閣」。メインは大広間に飾られた”32段1,200体のおひな様”で、会場内ではそこかしこで雛飾りを楽しめます。

館内中がおひな様!

写真:麻生 のりこ

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毎年、異なる趣向で拝観者を喜ばせている可睡齋のひなまつり。
2021年も受付を済ませ中に入ると等身大のおひな様が出迎えてくれます。制作期間はなんと4年10ヶ月! この貴重なおひな様は1月31日(日)まで展示予定です。

館内中がおひな様!

写真:麻生 のりこ

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大書院のある萬松閣1階長廊下にはズラリとおひな様が! 廊下の長さは30メートルほど。ここだけで圧倒されてしまうかも!?

大書院の北側廊下は懐かしさでいっぱい!

大書院の北側廊下は懐かしさでいっぱい!

写真:麻生 のりこ

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大書院の北側廊下には、今では珍しい御殿雛飾りも。段飾り雛は江戸を中心に発展し、上方(京阪地方)では御殿雛飾りが人気でした。御殿は京都御所内の紫宸殿を表し、建物の中に内裏雛と三人官女を飾ります。
遠州地方では昭和40年代初頭まで作られていたため、年配の方には懐かしく若い世代には新鮮さを覚えるおひな様と云えましょう。

大書院の北側廊下は懐かしさでいっぱい!

写真:麻生 のりこ

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ふっくらした顔立ちに温和な表情のおひな様は1940年代のもの。この年代と云えば物資が乏しい戦中〜戦後にかけて。危険な時代に子どもの成長を願う、愛情あふれるおひな様です。
このおひな様の周囲には、静御前と源義経や乙姫さまと浦島太郎などの立ち雛も並んでいますよ。

大書院の北側廊下は懐かしさでいっぱい!

写真:麻生 のりこ

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「風鈴まつり」の時に赤富士のオブジェが飾られる大庭園に面した廊下にも、おひな様がずらりと並んでいます。暖かな日差しを浴びた姿は、なんだか嬉しそう。

壮観!32段1,200体の雛飾り

壮観!32段1,200体の雛飾り

写真:麻生 のりこ

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メイン会場となる瑞龍閣2階の大広間の奥の部屋には、天井まで届くかのようにおひな様が!

この瑞龍閣は可睡齋の迎賓施設として昭和12年(1937年)に完成した、国指定の登録有形文化財です。襖絵は丸山応挙の流れを汲む日本画家の山口玲熈(やまぐち・れいき)画伯の手によるもの。
2階大広間の襖には牡丹と菊の花が描かれています。華やかな格天井と和風シャンデリアも一見の価値あり!

壮観!32段1,200体の雛飾り

写真:麻生 のりこ

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整然と並べられた雛人形は32段1,200体。壮観ですね。この段飾りは大人が5〜6人乗っても大丈夫なんです。

1番上と中央には一体一体の顔がきちんと見えるように、男雛女雛が交互に飾られています。2番目からは三人官女→五人囃子→右左大臣→仕丁の順。煌びやかで雅やかなおひな様たちを、ぜひご覧ください!

壮観!32段1,200体の雛飾り

写真:麻生 のりこ

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2021年は大広間の手前の部屋で、感染症の早期終息を祈るアマビエ雛が展示されています。まぶたを閉じて祈る姿が印象的ですね。

また昨年に続き、書家・万代香華(ばんだい こうか)氏による「桃」の揮毫を見ることができます。和紙の大きさは縦横2.3メートル。可睡齋のひなまつりをイメージする文字として、2019年1月に鈴鹿墨を使用し表現したものです。

室内ぼたん庭園で春気分

室内ぼたん庭園で春気分

写真:麻生 のりこ

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瑞龍閣1階ではおひな様に加え、連鶴や押し花、さるぼぼ、傘福、そして室内ぼたん園などの特別展示が楽しめます。

最初の部屋では1月には遊鶴の会メンバーの連鶴折り紙展とともに、2020年に万代氏により書かれた「一期一会」の揮毫が。2月は押し花サロン希琳による押し花アート展、3月にはお雛様と布花物語に変わります。

室内ぼたん庭園で春気分

写真:麻生 のりこ

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赤や紫色の傘の下に吊るされたさるぼぼは、下から見上げると色のシャワーのよう。安産や子宝を意味し、「可睡齋ひなまつり」に欠かせない存在となっています。

室内ぼたん庭園で春気分

写真:麻生 のりこ

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南向きの部屋では、外の寒さを しばし忘れさせてくれる室内ぼたん庭園が楽しめます。
温かな室内で咲き誇るのは、見頃を迎えた約15品種50鉢の牡丹の花。白やピンクに赤…。色とりどりで華やか、気品高い雰囲気の花は「富貴」という花言葉にぴったり。各室内の襖絵や欄間も見事です。

玲和の庭室内展示もお見逃しなく!

玲和の庭室内展示もお見逃しなく!

写真:麻生 のりこ

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豪華な金襴生地の傘福は、山形県酒田市の「傘福くらぶ」のメンバー12人が半年かけて製作しました。傘福は「日本三大つるし飾り」の1つに数えられていて、本来、門外不出です。

「軍配」は戦勝祈願、「亀」は長寿の象徴。財運に恵まれる「蔵の鍵」や、金運や財運にあやかれる「打出の小槌」。大願を成す「茄子」など、それぞれのモチーフには意味が込められています。女性たちの切なる願いが感じられるでしょう。
高さ3.5メートル、重さ50キロ。様々な願いを形に込め、1つひとつ丁寧に作られた飾りの数は999個。吉祥柄のモチーフは、見ているだけで心が豊かになりそう。

玲和の庭室内展示もお見逃しなく!

写真:麻生 のりこ

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玲和の庭室内展示ではアマビエ雛の展示のほか、雛飾りがジオラマ風に並んでいます。
舟遊びに興じたり、それを見守ったり。桜の下で遊ぶ童子の姿や、お花見を楽しむお雛様なども。あちらこちらに飾られた桜の花は、本物の桜の枝に桜の造花をつけたものなんですよ。

土・日・祝日にはメイン会場や各ポイントでボランティアガイドによる案内を受けることもできます。思い出に残る「可睡齋ひなまつり」をご堪能くださいね。

玲和の庭室内展示もお見逃しなく!

写真:麻生 のりこ

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ひなまつり期間中の2月21・22日と27・28日および3月3日には、山門前の外階段がひな壇になります(※雨天中止)。青空に映えるおひな様を、ぜひその目で確かめてみて!

なお、可睡齋では毎年4月中旬から5月上旬にかけて屋外のぼたん苑もオープン。敷地面積3,000坪の苑内で約60種類・2,000株の「百花の王」牡丹を鑑賞できます。

袋井市内ではこのイベントと同じ期間中、JR袋井駅北口付近を中心とした「まちじゅうひなまつりプロジェクト」も開催中。バスで可睡齋へ向かう方は、待ち時間にどうぞ。

可睡齋ひなまつりの基本情報

住所:静岡県袋井市久能2915-1
電話番号:0538-42-2121(代)
アクセス:JR袋井駅から秋葉バスサービス・秋葉線または秋葉中遠線乗車→「可睡齋入口」バス停下車、徒歩約5分 / 東名高速道路「袋井」I.Cから約5分

※可睡齋は「可睡斎」と表記されることもあります。
なお、2021年は混雑回避のため規模を縮小(大書院での展示はありません)。また、館内は一方通行となります。

2021年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/01/06−2021/01/02 訪問

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