瀬戸内海に浮かぶ「犬島」 島のシンボルはまるで堅牢な要塞

瀬戸内海に浮かぶ「犬島」 島のシンボルはまるで堅牢な要塞

更新日:2018/01/29 00:57

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人
瀬戸内海に浮かぶ12の島とふたつの港は、現在、「瀬戸内国際芸術祭」の舞台になっています。そのなかでも早くからアートの舞台として整備されて来たのが「犬島」。近代化産業の遺産が島のアートのシンボルとなり佇んでいます。それ以外にも島の風景や暮らしと一体となるようにと試みられたアートや建築が点在。訪れた人々を島独自の世界につつみ込んでくれます。そんな「犬島」のアートスポットをご案内いたします。



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島のシンボル「犬島精錬所美術館」

島のシンボル「犬島精錬所美術館」

写真:今村 裕紀

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明治時代後期、煙害対策や原料輸送の利便性から、銅の精錬所「犬島精練所」が建設。やがて、第一次世界大戦の終息につれて銅価格が大暴落し、この工場は、わずか10年で操業を終え、写真のようにそのまま放置されました。

その遺構が、「犬島精練所美術館」として甦ったのは、それから100年近く経った2008年のこと。福武書店(現ベネッセコーポレーション)の2代目社長である福武總一郎氏が、ベネッセの企業メセナ(企業が直接関係のない芸術を支援、開催すること)として、1990年代に瀬戸内海の「直島」を手始めに、現代美術による文化村構想の基盤作りを開始。この島の用地を買い取り、2008年に精錬所を美術館として生まれ変わらせました。その後「直島」「犬島」に続き「豊島」のアートの基盤が整い、2010年の第1回「瀬戸内国際芸術祭」の開催へと繋がっていくのです。

この建物は、2007年に「地域と様々な関わりを持ちながら我が国の銅生産を支えた瀬戸内の銅山の歩みを物語る近代化産業遺産群」として、経済産業省の「近代化産業遺産」にも選ばれています。

島のシンボル「犬島精錬所美術館」

写真:今村 裕紀

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精錬所跡地には、この施設を象徴する数本の煙突と銅の精錬過程で発生した「かす」で出来ているカラミ煉瓦の工場の遺構が残されています。この建物を自然エネルギーの活用により甦らせたのが、建築家の三分一博志。電気を使わず、煙突から取り入れる外気や太陽光、地熱などを利用し、夏は空気を冷やし、冬は暖めるという構造。

明治の遺構が、現代の技術をもって環境に適したかたちで甦ったのです。その姿は、洋上から見ると、まさに聳え立つ錆び色の煙突を擁した堅牢な要塞の観を呈しています。

島のシンボル「犬島精錬所美術館」

写真:今村 裕紀

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さらに、この建物を美術館として再生させたのが、柳幸典。この美術館には6つの作品が「ヒーロー乾電池」と総称されてスペース展示されています。そのテーマは三島由紀夫。

それは、戦後の日本を憂いていた三島由紀夫と近代化の過程で置き去りにされ、廃虚と化した「犬島製錬所」との融合の模索でもあります。そのイントロダクションは、入口から始まる「イカロス・セル」というインスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる芸術作品)。前方が一直線に続く黒い壁の道に見えるので進んで行くと、曲がり角に鏡が置いてあり、次の曲がり角の鏡の光が届いている。さらに次の曲がり角にも壁一面の鏡があって、というように、一本の長い通路と思えた道が直線ではなく、何度も折れ曲がった道になっていて、最後に外部の光を取り入れる窓に突き当たるのです。

そこを抜けて始まるのが三島由紀夫の世界。「ソーラ・ロック」の部屋には、中央の天井から、三島が一時期住んでいた渋谷区松濤の家の扉や三畳間などが、解体されて吊り下げられており、「イカロス・タワー」のスペースには、実際に使用されていた便器が―それらは三島由紀夫の犬島での転生の試みでもあります。

そうして「ミラー・ノート」と呼ばれるスペースでは、三島作品「英霊の聲」の文字が血のように真っ赤な映像として流れ出し、「ソーラー・ノート」では、同じく、三島の「檄文」が金メッキの鉄の切り文字になってぶら下げられて掲示されています。遠く離れた地から、まさに三島由紀夫の魂がここに宿り、氏が今なお語りかけたい思いが感じられる世界を体験出来る空間なのです。

集落に溶け込む野外展示

集落に溶け込む野外展示

写真:今村 裕紀

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「犬島精錬所美術館」の見学を終えたら、島内のアート散策に出かけましょう。徒歩2時間ほどで島内に点在するアートを見て廻ることが出来ます。作品は野外展示と「家プロジェクト」と呼ばれる集落内に設けられたギャラリーで構成。

写真は、野外展示の浅井裕介作:「職人の家跡/太古の声を聴くように、昨日の声を聴く」。題名の通り、ここは、かつて犬島の石切職人の親方が弟子たちを住まわせた家の跡です。

今では、ゴム素材を地面に焼き付ける手法で動物や植物、船などが描かれています。ここに描かれてあるものも、集落の過去の記憶のなかで、人とともにあったものなのかもしれません。

集落に溶け込む野外展示

写真:今村 裕紀

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中の谷の入江の小道に展開されている同じく、浅井裕介作:「sprouting 01」。

道にはこれ以外にも、葉っぱや小動物などが描かれていて、今にも地面から飛び出して来そうな作品たちばかり。道が語りかけて来るのです。

「家プロジェクト」 島の風景や暮らしと一体となるギャラリー

「家プロジェクト」 島の風景や暮らしと一体となるギャラリー

写真:今村 裕紀

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犬島「家プロジェクト」は、アートと建築が島の風景や暮らしと一体となって展開することを目的としたプロジェクト。5つのギャラリーと休憩所が集落内に点在します。

写真は、荒神明香作:「S邸/コンタクトレンズ」
透明なアクリルの壁が湾曲して連なるギャラリーに、大きさや焦点が異なる無数の円形レンズで構成された作品。コンタクトレンズさながら、これらのレンズを通して、周囲の風景が歪んで映し出され、見る人に目に見える世界の多様性を提示しています。

「家プロジェクト」 島の風景や暮らしと一体となるギャラリー

写真:今村 裕紀

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荒神明香作:「A邸/リフレクトゥ」
「S邸」同様、アクリル素材を用いた円形のギャラリー。花びらを上下対象に貼り付けた作品を展示。なかからも作品が眺められ、それぞれに異なった背景を通しての作品の鑑賞が出来ます。

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「家プロジェクト」 古い建物を改修したギャラリー

「家プロジェクト」 古い建物を改修したギャラリー

写真:今村 裕紀

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下平千夏作:「C邸/エーテル」
築200年の建物を改修したギャラリーのC邸は、見えない空間を仮に見えるように、建築工事などの際に水平線を示す目的で用いられている水糸を縦横無尽に張り巡らせて、光の束として空間を表現した作品です。

「家プロジェクト」には、その他にも、3つの鏡によって風景と鑑賞者を結びつける「I邸」、さまざまな形態のオブジェが展示されている「F邸」、それに休憩所である「中の谷東屋」があります。

アートに触れたあとはランチを

アートに触れたあとはランチを

写真:今村 裕紀

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島のアートを鑑賞し終えたら、写真のチケットセンター内の「チケットセンターカフェ」に。この建物もかつては民宿であったものをリノベーションしたもの。瀬戸内海の漁師めしがルーツと言われる「たこめしセット」はおすすめです。畳座敷の窓から瀬戸内海を眺めながらの昼食は格別です。また、施設内のミュージアムショップでは、トートバッグをはじめとした島のオリジナル商品が揃っています。

最後に

日本で最初に国立公園に指定された瀬戸内の海で、たとえば、この犬島に精錬所が長らく放置されていたり、豊島が産業廃棄物の投棄の地になっていたように、瀬戸内海の島々には、過去の負の歴史を払拭して、いま再びアートによって輝きを増すことの祈りが込められているのです。事実、瀬戸内海の島々は今、アートとそこに暮らす人々とその自然とが協調し合い、島全体がひとつの宝石箱のような美術館となっているのです。ぜひ、犬島を訪れて、アートスポットを巡りながら、島の風を感じ、島の自然にたっぷりと抱きしめられてみて下さい。


基本情報

<各施設共通>
住所:岡山県岡山市東区犬島327-4
電話番号:086-947-1112(犬島チケットセンター)
開館時間:
10:00 〜 16:30(最終入館16:00)
チケットセンター 10:00 〜 17:00
休館日:
火曜日(3月1日〜11月30日)
火曜日から木曜日(12月1日〜2月末日)
※ただし祝日の場合は開館、翌日休館
※ただし月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館
鑑賞料金:2,060円
※「犬島精錬所美術館」犬島「家プロジェクト」と共通
※15歳以下無料
アクセス:犬島への直行フェリーが発着する岡山県岡山市の宝伝港までは、JR岡山駅から電車
     とバスで約1時間10分。宝伝港からは高速船で10分。
     香川県直島からは、豊島経由、高速船で55分。


2017年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2017/11/04 訪問

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