大きな山門をくぐり、人の姿もまばらな参道を行くと自然の中にひっそりたたずむ興国寺があります。1227年に、もとは真言宗の「西方寺」として建立された寺で、古くは「紀に興国寺あり」とも言われた名刹です。寺をおこした藤原願性（景倫）がそののちに寺に招き入れた覚心（法燈国師）は、当時の宋にわたり、修行ののち禅の印可をもらって帰国。願性から請われて西方寺住職となり、寺は臨済宗法燈派の本山として栄えました。のちに後村上天皇から「興国寺」の名を賜りました。
・・・と、歴史をひもといたあとはさっそく大天狗に会いに行ってみましょう。釈迦如来がご本尊の本堂にお参りしたあと、「天狗堂」の案内に沿って階段を上っていくと…
天狗堂に入ると、どーんと正面に魔よけの大天狗の顔。すごい眼力です。その前に置かれてある、亀の甲羅！？と思ったら、それが不思議なパワーに満ちた天狗命根石。
書かれてある説明文によると、地球創世記の頃に地殻の噴出による火山岩からできた世界最大の貴石で、内部には数億年前の水をたくわえているとか。さわると冷たくつるつるしています。この石をなでながら天狗様にお願い事を唱えると、必ず叶えてくれるのだとか。
寺には、秀吉の紀州攻めや度重なる火災で復興に困っていると、上州赤城山の天狗があらわれて一夜でお堂を再建したという言い伝えがあります。たしかに一帯は神秘的な空気に満ちています。
先ほど、寺のなりたちについての話に登場したお坊さんの覚心ですが、その人が宋から持ち帰ったのが金（怪）山寺味噌。大豆と大麦の麹に塩を加え、細かく刻んだ茄子、瓜などを入れ、密閉して熟成させたものです。興福寺は日本で最初に金山寺味噌を作った寺で、その製造課程でできた上澄み液が今の「たまりしょうゆ」になったといわれています。今では日本料理に欠かせない味噌や醤油のルーツのここは、いわば日本料理のふるさととも言えるかも。
また覚心は帰国の時に、虚無僧4人を伴い、日本各地に普化尺八を伝えたことから、現在でも普化尺八を継ぐ者は興国寺で授戒することになっている、虚無僧の聖地です。
その歴史にちなみ、寺の売店には天狗のお守りなどのほか、地元の醤油蔵で伝統技法で作られる金山寺味噌や醤油も販売されています。
興国寺を出て、うねうねとカーブが続く海岸線を走っていくと現れる白い石灰岩の岩山の連なり。思わず「え！？エーゲ海！？」と見まがうほどの白が印象的な海岸の風景に出くわします。
ここは道の駅にもなっている岬の先端の自然公園「白崎海洋公園」です。ダイビングスポットでもある周辺の透明度の高い青い海と、真っ白な岩のコントラストに目を奪われるはず。
ウミネコの大群が飛来する夏、水仙が群生する冬、と豊かな自然に囲まれた公園ではログハウスやオートキャンプ場もあるので、太陽の光で刻々と表情を変える白い景色を眺めながら、ゆっくり滞在するのもおすすめです。
青い海と白の風景も美しいのですが、ここは「日本の夕陽百選」に選ばれた絶景夕陽スポット。
公園内にある、白い岩の間を抜けて進んでいく階段を上がると、展望スポットがあり、水平線に沈みゆく夕陽が白い岩々を真っ赤に染めていく風景に出会えます。幻想的な様子に思わず言葉を忘れて見入ってしまいます。
興国寺から白崎海岸にかけては、好漁場でもあるため釣り旅館も多く、ダイビングスポットや県内唯一の鍾乳洞、漁師の船で海からめぐる白崎海岸クルーズなど、自然を満喫できる観光ポイントがいっぱい。車で通りすぎるだけではもったいない、滞在したい穴場リゾートです。
観光情報は「道の駅」でも得られます。
【白崎海洋公園 道の駅】
和歌山県日高郡由良町大引960-1
TEL 0738-65-0125
24時間開設 産品販売所と観光案内所は9:00～18:00(10月～3月は17時）
無休
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(2024/4/19更新)
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