人間国宝の器でお茶も「FAN美術館」草間彌生から備前焼作家・藤原啓まで

人間国宝の器でお茶も「FAN美術館」草間彌生から備前焼作家・藤原啓まで

更新日:2018/02/02 10:48

磯本 歌見のプロフィール写真 磯本 歌見 フリーライター、ご朱印ガール、仏像マニア
岡山県備前市にある「FAN美術館」は、2017年6月に生まれ変わった新しいタイプの美術館です。親子二代で人間国宝の備前焼作家・藤原啓の代表作品などが収められた「藤原啓記念館」の「F」、2年に1回開かれる国際公募展「アートオリンピア」の「A」、神奈川県湯河原にある、人間国宝制作の美術品を集めた「人間国宝美術館」の「N」の頭文字をとっています。それらの要素が融合し館内にちりばめられています。

人間国宝の作品がズラリと並ぶ「藤原啓記念館」

人間国宝の作品がズラリと並ぶ「藤原啓記念館」

写真:磯本 歌見

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それでは館内を巡ってみましょう。
館内には5つの主な建物がありますが、まずは「藤原啓記念館」から。藤原啓は、その息子、雄とともに二代で人間国宝という稀な人物で、この記念館には啓の代表的な作品と、金重陶陽など備前焼の第一人者の作品が並んでいます。

人間国宝の作品がズラリと並ぶ「藤原啓記念館」

写真:磯本 歌見

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こちらで興味深いのは、もとは物書きだったという啓の自筆の書画や、金重陶陽らとの合作が並んでいること。

こちらの2つの茶碗、備前焼ではなく唐津焼。左側は啓が成形し、金重が字を描いて焼いたもの、右側はその逆で金重が成形し、啓が字を描いたもの。二人は年が近く、酒飲み友達だったといいますから、お酒を酌み交わしながら、そんな話になったのかもしれませんね。

人間国宝の作品がズラリと並ぶ「藤原啓記念館」

写真:磯本 歌見

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続いて、「藤原啓記念館」の奥の「東館」へ。

こちらにも、原清や十三代今泉今右衛門ら人間国宝の作品がズラリ。絵画、陶芸、ブロンズ彫刻、大きな屏風などもこの部屋に並べられています。

草間彌生や横尾忠則の立体作品がこんなところに…

草間彌生や横尾忠則の立体作品がこんなところに…

写真:磯本 歌見

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それでは、現代アートを中心とした作品展示がされている「L館」へ移動しましょう。

「L館」に入ってびっくり〜。
なんと車がど〜〜んと展示されているではあ〜りませんか。この車「スマート」という車種でベンツ社の車。横尾忠則さんの作品です。横尾さんは、グラフィックデザイナーから画家へと転向した、現代日本を代表するアーティスト。彼がこれまで使ってきた様々なパレット=紙皿がデザインされています。そのアート紙皿を一枚ずつ写真に撮って、フィルムにプリントしフルラッピングされた車なのです。

ナンバープレートが付いていることからもわかるように、ちゃんとエンジンもかかる一般車。こちらでは、作品の写真を撮ることはもちろん、車に至っては運転席に乗ることもできるという大らかさがたまりません。

草間彌生や横尾忠則の立体作品がこんなところに…

写真:磯本 歌見

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L館には「草間彌生の部屋」もありますよ。

「前衛の⼥王」の異名を持つ草間彌⽣。2016 年に⽂化勲章を受章したことも影響し、作品の人気は高まる一方です。特にキャンバス一杯に水玉(ドット)や網(ネット)などのモチーフを繰り返して埋め尽くした作品や、「かぼちゃ」の図柄は、どの展覧会でも人気が高い作品です。

こちらでは、色鮮やかな小ぶりのかぼちゃたちとともに、ブロンズのかぼちゃが置かれ、立体的な作品だけでなく平面作品も並んでいます。

草間彌生や横尾忠則の立体作品がこんなところに…

写真:磯本 歌見

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こちら、世界的アーティストの村上隆の作品。どこかで見たことがある人も多いのでは? 映画監督でもある村上が初監督した『めめめのくらげ』と、UHA味覚糖の「e-maのど飴」がコラボした作品です。

L館はもちろん、館内どこでもカメラやビデオカメラでの撮影はOK。むしろ撮影してSNSなどで発信してほしいというのだから、本当に大らかです。

本館・北館にもピカソ、ルノアール他お宝がいっぱい!

本館・北館にもピカソ、ルノアール他お宝がいっぱい!

写真:磯本 歌見

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順路に沿って本館へ。本館は、藤原雄さんの自宅だったところだそうです。

本館の2階は、人間国宝美術館の展示作品である、陶芸・漆芸、金工、絵画などの作品を中心に展示しています。
こちらがとにかくすごい!部屋にはテーマがあるそうですが、こちらには鍋島焼と藤田嗣治の作品が上下に並べられているという超豪華版。

シルクロードの部屋には、平山郁夫作品とともに、イランの器などが並べられています。

本館・北館にもピカソ、ルノアール他お宝がいっぱい!

写真:磯本 歌見

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こちらの部屋には、ピカソ、ルノアール、ジョルジュ・ルオーの作品がズラリ。何の部屋と呼べばいいのか。「巨匠の部屋」とでも呼ばせてもらいましょうか。充実のラインナップです。

こららはすべて常設で企画展の予定はなし。不定期で年に3〜4回の展示作品替えをするそうです。

本館・北館にもピカソ、ルノアール他お宝がいっぱい!

写真:磯本 歌見

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本館2階の北側は「北館」として、美術館の1つの核である「アートオリンピア」の受賞作品を多数展示しています。「アートオリンピア」は、2年に1回開く、世界各国の才能あるアーティストを発掘し、その活動を支援することを目的とした国際公募展です。「アートオリンピア」は、過去2回の開催で、合計8,000点以上の作品応募があり、世界の美術著名人が審査を行いました。

人間国宝の器で抹茶が飲めるなんて〜

人間国宝の器で抹茶が飲めるなんて〜

写真:磯本 歌見

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本館1階に戻ってきたら「昭和の間」に。こちらは、昭和天皇がご来臨された部屋です。額縁のように切り取られた大きな窓からは片上湾が一望できます。窓際に置かれた椅子もほんまもん。近代建築の巨匠 「ル・コルビュジエ」の椅子です。座り心地抜群のコルビュジエの椅子に座ったら、気持ち良すぎてうとうとしてしまいそうです。

人間国宝の器で抹茶が飲めるなんて〜

写真:磯本 歌見

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「昭和の間」では、藤原啓の茶碗で抹茶を飲むことができます。人間国宝の器に実際にふれることってなかなかできない体験。このお茶碗、少し前までは「藤原啓記念館」のウィンドウのなかに並べられていたものというから、価値は高い作品です。手触り、口触りなどを体験することができるのも醍醐味ですよね。

人間国宝の器で抹茶が飲めるなんて〜

写真:磯本 歌見

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ミュージアムショップもありますよ。このショップでは、グッドデザイン賞受賞作品や洗練された商品など、スタッフが全国からセレクトした上質な商品が置かれています。

カフェだけの利用もOK

カフェだけの利用もOK

写真:磯本 歌見

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カフェからの眺望も最高です。「昭和の間」とは少し違った片上湾の表情が楽しめます。気候がいい時期には、テラス席もおすすめ。人気は外向きのカウンター席で、カップルにもぴったり。超一流品ばかりをセレクトしているので、カフェの椅子も座り心地抜群。ついつい長居をしてしまいそうです。

カフェだけの利用もOK

写真:磯本 歌見

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カフェの奥の壁に貼り付けられたオブジェは、藤原啓と雄の作品です。穴やヒビが入っているとか、ぶくができているなど、世の中に出なかったものを貼り付けて作っています。こちらは自由に触れるので、作品の質感を確認することができます。

カフェだけの利用もOK

写真:磯本 歌見

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カフェメニューにも、こだわりはいっぱい。

お茶やスイーツを備前焼の器で楽しめるのはもちろんですが、大分県日田津江村産の柚子茶、高梁紅茶、新生姜自家製ジンジャーエールなど、スタッフが全国からセレクトしたものを提供しています。

予約制のアフタヌーンティもあって、ケーキや焼き菓子のほか、ままかりと地元野菜のトルティーヤ、虫明産牡蠣のアヒージョのカナッペなど、時期により内容は異なりますが、3段の備前焼プレートで提供しています。

その他、藤原啓が実際に使用していた工房での備前焼の作陶やサンドブラスト(ガラス)体験、茶室での抹茶体験など、多種多様な体験メニューがあります。時間に余裕があれば、こちらも楽しみたいですね。

FAN美術館の基本情報

住所:岡山県備前市穂浪3868
電話:0869-67-0638
開館時間:9:30〜17:00(入館〜16:00)
休館日:火曜(祝日は翌日)
入館料:1,800円(抹茶付き・カフェのみ利用の場合は無料)

※2018年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。関連情報をMEMO欄に入れておきます。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/01/24 訪問

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