写真:井伊 たびを
地図を見るJR・山手線「目黒駅」の西口を出て、駅前の三井住友銀行を、左手へ回り込むように進み行けば、思わず見下ろしてしまうほど、急勾配の坂道を見つける。ほんの一瞬だが、進むのを逡巡する人がいるかもしれない坂道。それが「行人坂(ぎょうにんざか)」だ。
ちなみに、「行人坂」の由来は寛永年間、このあたりに巣食う不良の輩を、追い払うために、徳川家は高僧“大海法師”を勧請して開山。その後、不良の輩は一掃された功績で、「大圓寺」の号が与えられた。当時その寺には「行人」(修行僧)が多く住んでいたので、いつとはなしに江戸市中に通じるこの坂道は、「行人坂」と呼ばれるようになった。
写真:井伊 たびを
地図を見る行人坂を下って行くと、坂の中ほどにある「大圓寺」。ここは江戸時代、江戸城の裏鬼門守護のため「大黒天」が祀られたことから“江戸の三大黒天”として崇拝されているお寺だ。
「大黒天」は、七福神のひとつ。狩衣に似た服を着て大黒頭巾をかぶり,左肩に大袋を背負い,右手に打ち出の小槌(こづち)を持ち,米俵の上に座る神様。ご利益には、五穀豊穣・子孫愛育・出世開運・商売繁盛がある。
写真:井伊 たびを
地図を見る行人坂から一歩入りこめば、老樹や古木のしげる「大圓寺」の境内が迎えてくれる。天台宗・松林山・大圓寺には、その山号にふさわしい、季節を感じる自然と、古い歴史が醸し出す聖域が現存しています。
写真:井伊 たびを
地図を見る本堂へ進み行こうとした参詣者は、本堂の左手にある“夥しい石仏”に目を奪われる。都指定有形文化財の「大円寺石仏群(だいえんじせきぶつぐん)」である。これはすべて「明和大火」の避難者を供養するため、天明年間(1781〜1788年)に造られたものである。
ちなみに、「明和大火」とは、明和9年(1772年)2月、この大円寺から火が出た。その火の勢いは激しく、江戸市中の三分の一を灰にし、一万四千人もの焼死者を出した。江戸の三大火のひとつ「目黒行人坂の火事」である。
写真:井伊 たびを
地図を見るこれが有名な“五百羅漢”である。その数はあわせて520体にもなる。風化もかなり進んで、表情も細かいところまで、わからなくなっている。そんな中、聖母マリアのような慈悲深い女性の羅漢像が、赤ん坊を抱いていたりする。
写真:井伊 たびを
地図を見る「五百羅漢」の前に祀られている“とろけ地蔵尊”は、「人々の悩みを溶かせてくれる」と信じられ、多くの参詣者が手をあわせるという。“地蔵尊”といっても、ほとんど顔や姿は判別不能である。
この地蔵尊は、言い伝えによると、江戸時代に品川沖で漁師の網にかかったのが最初で、その時にはすでにかなり痛んでいたそうだ。再び「目黒行人坂の火事」の高熱で焼かれ、今の姿になった。
このように、過酷な状況の中でもしっかりと立ち続け、見守ってくれているお地蔵さま。そんなことから庶民の間からごく自然に、このお地蔵さまは「人々の悩みを溶かせてくれる」と信じられるようになったのだろう。
写真:井伊 たびを
地図を見る本堂の右奥にある「阿弥陀堂」。その本尊の前に身体を、左へ少し傾けた地蔵菩薩像がある。これが「お七地蔵」だといい伝えられている。そして、その地蔵の先、本尊の右手には西運の木彫が祀られている。「八百屋お七と吉三」の悲恋物語に惹かれて、恋に悩む女子が多く訪れて来るという。
その“悲恋物語”とは、八百屋の娘お七が、恋い焦がれた寺小姓吉三に逢いたさ自宅に放火し、鈴ヶ森で火刑にされた。吉三はお七の火刑後僧侶となり、名を西運と改めお七を手厚く葬ったと伝えられている。
写真:井伊 たびを
地図を見る「阿弥陀堂」の前には「摩尼車(まにぐるま)」がある。摩尼車とはお経が書かれた車輪のようなもので、これを一回まわすとお経を一回唱えたことと同じ功徳があるとされている。台座に「良縁成就」と書いてある通り、あなたの“恋の願い”もきっと叶うはずだ。
写真:井伊 たびを
地図を見る隣接する「ホテル雅叙園東京」のエントランスには、“お七の井戸”が現存している。
西運と名を改めた吉三は“明王院”に入り、目黒不動と浅草観音の間、往復十里の道を念仏を唱えつつ隔夜一万日の行を成し遂げたという。
その“明王院”という寺院は、現在の「ホテル雅叙園東京」のエントランス付近から庭園にかけて、明治13年(1880年)ごろまであった。そこの境内にあった井戸で、西運が念仏行に出かける前に、お七の菩提を念じながら、水垢離(みずごり)をとったことから「お七の井戸」といい伝えられている。
当山には“生身の釈迦如来”といわれている木造「清涼寺式釈迦如来立像」(国指定重要文化財)、木造「十一面観音立像」(区指定文化財)、徳川家の繁栄と江戸発展守護のための「三面大黒天像」(山手七福神のひとつ)などが安置されている。
また、この界隈には「目黒不動尊」や「海福寺」など、あわせて訪れてみたい寺院仏閣が多い。若いお二人のデートコースにもお勧めである。
<大圓寺の基本情報>
住所:東京都目黒区下目黒1-8-5
電話番号:03-3491-2793
アクセス:JR山手線、東急目黒線、都営三田線、地下鉄南北線、各線の「目黒駅」から徒歩5分
2018年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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