写真:Mayumi Kawai
地図を見るフィリピン・ルソン島北部、標高1,500m以上の深い山間に位置するサガダ(Sagada)。この地に古くから住む少数山岳民族イゴロット族にとってはキリスト教文化がもたらされる2,000年以上もの前から自然崇拝(アニミズム)が信仰の対象でした。そのため、独特の葬送文化が培われたのです。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る今では住民約1万人のうち95%がクリスチャンというほどキリスト教文化が根付いたサガダ。村の中心には20世紀初頭に建てられた村のランドマーク的存在、セント・メアリー・ザ・バージン(聖マリア)教会があり、住民の憩いの場所となっています。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るハンギング・コフィンのあるエコーバレー(Echo Valley)の手前には教会の墓地があります。キリスト教化が進んだ今日では、ハンギング・コフィンの風習は廃り墓地への埋葬が主流となっています。
提供元:Andrewhaimer via Wikimedia
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hanging_Co…サガダでもっとも有名なハンギング・コフィン(懸棺)は、村から徒歩約30分ほど離れたエコーバレーという森の中の断崖に存在します。18体の木製の棺が吊るされた異様な光景は、近寄りがたい神聖さとともに畏敬と畏怖の念を感じるでしょう。
およそ2,000年来続いたこの風習、棺を吊るした主な理由は、より高い位置に遺体を埋葬することで祖先の霊に近づけようとしたこと、土葬による遺体の腐敗を嫌ったこと、野犬や古代の首狩り族による頭部持ち去りの被害を逃れるためと言われています。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るハンギング・コフィンとして埋葬されるのは自然死による大人のご遺体が対象、しかしそれにしては小さい棺が多いことにお気づきでしょうか。
イゴロット族の古い死生観では、人間は死ぬとき、生まれたとき(胎児)と同じかたちで生の世界から出ていくと考えられていました。つまり、遺体を胎児のように小さく小さく丸め込み、「サンガジル(sangadil)」=通称「死の椅子」と呼ばれる木製の椅子に藤の蔓を使って体を固定したあと毛布にくるみ、遺体の腐敗臭を隠すために煙でいぶしながら家の玄関前に数日間置くのです。そうしてようやく1mほどの小さな棺に埋葬します。
棺にぶら下がる椅子はその時のサンガジル。小さな棺に入り切らない大きなご遺体の場合は骨を折ったり切断したりして無理やり詰め込んだとか。やがてキリスト教文化が浸透してくるとそのやり方に不満が出て大き目サイズの棺でも埋葬するようになったそうです。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るエコーバレー以外にも村のあちこちの断崖にハンギング・コフィンが存在します。しかし、現在観光資源として一般客に開放しているのはエコーバレーのみ。それ以外は基本的には住民以外は神聖不可侵の領域、たとえ見つけても興味本位で無断に立ち入らないようにしましょうね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るサガダでは洞窟に棺を埋葬する風習も生まれました。ルミアン洞窟ではもっとも古いもので500年以上前の棺が100体以上も山積みにされています。棺は必ず太陽の光が届く洞窟入口に置かれ、魂が光に導かれ天国へ行けると考えたのです。また、山積みの意味は、やはりより高い位置に置くことで先祖の魂に近づけようとしたとされています。
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https://flic.kr/p/5wmmWp木製の棺には幸せと富、そして永遠の魂の象徴・ヤモリが彫られています。輪廻転生によって魂が永遠に生き続けると信じられたのかもしれません。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る何百年という時を経た木製の棺の中には全壊あるいは一部が壊れたものもあります。そうなると当然ドクロや骨も丸見え。ちょっとびっくりしますが、神聖な場所なので決して騒いだり触ったりしないようにしましょう。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るエコーバレーへ行くにはまずサガダの観光案内所にて滞在登録と環境税を支払い、そこでガイドを雇いましょう。詳しい内容は関連メモにある「気分はトレジャーハンター!フィリピン・サガダで本格サイバイバル洞窟探検」の記事をご参照ください。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るガイドの案内に従ってエコーバレーへ向かうと、入口受付で環境税を支払ったレシートの提示を求められます。次にゲートの前で入場料10ペソを支払います。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るゲートからハンギング・コフィンまでは所要20分ほど。墓地を過ぎるとよく整備されたトレイルがあり、ひたすら下っていきます。しかし、勾配がきつく、未舗装道や人ひとりがやっとの細い階段もあるため足元には気を付けて歩きましょうね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るハンギング・コフィンの風習は、2010年を最後に現在は行われていないそうです。もちろん今でも本人の遺志で選択できますが、キリスト教化が進んだ今では土葬を望む傾向が強いそうです。
とはいえ、この世界でも希少で奇怪な風習を見ることができ、さらに本格的な洞窟探検や山岳トレッキング、広大な棚田まで楽しめるサガダ。非日常の体験を満喫しに、是非一度サガダを訪れてはいかがでしょうか。
住所:Sagada Municipal Tourist Infomation Center, Sagada, Mountain Province 2619 Philippines
電話:+63-917-148-6327
営業時間:7:00〜18:00
環境税:40ペソを当案内所で支払うこと
アクセス:マニラからはクバオ(Cubao)バスターミナルなどからバナウェ経由で12時間(720ペソ)、バギオ(Baguio)からはダングワ(Dangwa)バスターミナルより約6時間(220ペソ)。バナウェからはバンなどでボントック(Bontoc)乗換え約3時間(190ペソ)
※2018年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2025/2/9更新)
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