写真:たぐち ひろみ
地図を見るMRT市政府駅から徒歩8分。静かな裏通りに面した「三径就荒」(サンジンジュウフアン、英語名Hermit’s Hut)」は、茶芸館というよりカフェと呼ぶのがふさわしいモダンな店構えのお店です。付近には最近話題のリノベスポット「松山文創園区」や、センスのよいショップ、カフェが顔を揃え、お茶を静かに学ぶにふさわしい文化地区といえるでしょう。
重厚感ある木の扉を押して中に入れば、そこは白い壁や天然木が印象的なナチュラル空間。古典的な茶芸館とは全く違う新しいスタイルの店内は、半分が和の文化を取り入れた畳敷きに。茶道レッスンが行われるのもこのスペースです。
写真:たぐち ひろみ
地図を見るオーナー夫妻はまだ30代という若さ。以前よりネットで茶葉や茶器を販売していましたが、若い世代にもっと気軽にお茶を楽しんでほしいとの思いから、2017年8月にこの店舗をオープンしました。もともと茶葉に詳しいオーナーのこと、扱うお茶にもかなりのこだわりがあり、珍しい茶葉を各種取り揃えています。その数は軽く30を超えるとか。
お店では来店客に台湾茶を提供したり、茶葉・茶器を販売するかたわら、定期的に茶芸レッスンも開催。プライベートレッスンも提供していて、2種類のお茶、2種類のスイーツを2時間かけて堪能する充実コースが受けられます。
レッスン自体は英語または中国語ですが、実演形式なので言葉がわからなくてもさほど困りません。出される茶葉の特徴、適温、蒸らし方などを詳しく説明するカードがもらえ、後でじっくり復習することもできます。
写真:たぐち ひろみ
地図を見るさて、レッスンのご紹介です。畳敷きでのレッスンには、先生の手元を斜め上からじっくり観察できる利点があります。優美な手の動きに、まずはご注目!
写真の茶葉は「凍頂烏龍」で、品種は「武夷種」。台湾を代表する烏龍茶の1つです。お茶を入れる準備として、最初に茶葉を炭火で炒るのが「三径就荒」流。これは茶葉に含まれる水分を飛ばし、お湯を注いだとき茶葉が開きやすいようにするためです。併せて雑味も飛ばしてくれます。
茶葉はあらかじめ先生がセレクトしたものを使用しますが、好みの茶葉を指定することも可能です。
写真:たぐち ひろみ
地図を見るお茶を炒り終わったら、予めやかんで沸騰させておいたお湯を「茶壺(ちゃこ、急須のこと)」に注ぎます。
写真は、「紫砂」という土で作られた伝統的な素焼きの茶壺。茶葉の渋みやあくを除き、まろやかにするというこの茶壺、芸術的価値も高く、最近ではとても貴重な品だとか。つやのある赤い肌がなんとも麗しい逸品です。
写真:たぐち ひろみ
地図を見る茶壺が温まったらお湯を空け、今度は「茶杯(ちゃはい、湯呑み茶碗のこと)」を温めつつ、茶葉を茶壺に移します。凍頂烏龍の場合、分量は茶壺の1/3が埋まる程度。お茶100mlに対し茶葉1gが目安です。
今回使用している茶杯は通常よりやや大きめ、ちょうど日本酒のおちょこ大。茶壺と茶杯を載せる「茶盤」も一般的な竹製のそれではなく、重厚感ある陶器であったりと、茶器ひとつひとつにオーナーのこだわりが感じられます。
写真:たぐち ひろみ
地図を見る茶壺の中に広がる凍頂烏龍の香りを楽しんだ後は、98〜99度の熱いお湯を一挙に注ぎます。あえて高い位置からお湯を注ぐのは、水圧で茶葉を開きやすくするため。また、この茶葉の風味を十分に引き出すには熱湯が最適だそうです。
写真:たぐち ひろみ
地図を見る1分蒸らしたら、さっそく茶杯に注いで味わいます。長い発酵と深煎りを経たこの茶葉の出すお茶は濃〜いオレンジ色。ナッツや熟したフルーツの香りと烏龍独特のパワフルな味が特徴で、台湾でも特に人気のある茶種です。
凍頂烏龍は、19世紀半ばに中国本土から運ばれ、南投県鹿谷郷の凍頂山で栽培されたのが始まり。あまりの人気のため、現在では栽培地も全国各地に広がっています。
写真:たぐち ひろみ
地図を見る1杯目を飲み切ったら、再び茶壺にお湯をさして2杯目を楽しみます。今度の待ち時間はおよそ40秒、1杯目よりやや短めです。
複雑な工程を経て製造され、しっかりした味を持つ凍頂烏龍の場合、10杯くらいまで味わい続けることができます。しかも、お湯を注ぐ回数ごとに風味が微妙に変化。そうした味の違いをお互いに語りあうのが、台湾でのお茶の楽しみ方だそうです。
写真:たぐち ひろみ
地図を見るお茶のお供は、もちろんスイーツです。写真は伝統菓子の名店「合興壹玖肆チー」からのお取り寄せ、ごま風味の米粉ケーキ「鬆ガオ(ソンガオ)」。苦味のない台湾茶に合わせるスイーツは、どれもが甘さ抑えめで優しい味わいです。
写真:たぐち ひろみ
地図を見る「三径就荒」の茶芸レッスンでは、もう1種類タイプの違う茶葉を味わえます。写真は「坪林包種」という名前のお茶で、品種は中でも最良といわれる「清心烏龍」。台湾独自の烏龍茶「文山包種」に、生産地坪林郷の名前がそのまま付けられたものです。発酵度が15%と低く、包揉(茶葉を丸める作業)も1回しか行わないため、見た目も味も日本の緑茶によく似ています。大きな違いは、何杯つぎ足しても渋みが出ないこと! 最低5杯は楽しめるまろやかな烏龍「坪林包種」、日本人にも超おすすめです。
お供は最近台北で人気の「涼食帖」より、緑豆餡を透明な餡でくるんだ「涼菓」。名前の通り、涼やかな風味のお菓子です。
茶葉の特性に応じて最適な茶器を選び、最もふさわしい入れ方で味わうのがこの茶芸館の流儀。96度とややぬるめのお湯が最適な包種茶は、「蓋椀(がいわん、蓋付きつき茶碗)」と「茶海(ちゃかい、ピッチャーのこと)を使い、湯温を調整しながらいただきます。使用する茶海も、通常のものに比べてかなり大ぶりでユニークな形状。オーナーの好みがここにも表れていますね。
「三徑就荒」という店名は、中国の詩人、陶淵明の詩の一節をとったもの。「庭の小道は荒れ果てているが、松と菊はまだ残っている(物事は本質こそ大切である)」−お茶の持つ本来の魅力を見極めたい、そうしたオーナーの願いが込められた名前です。
さあ、あなたも奥深い台湾茶の世界へ、一歩足を踏み入れてみませんか?
住所:台北市信義区忠孝東路四段553巷46弄15号1樓
電話番号:+886-2-2746-6929
営業時間:月〜金 13:00〜20:00、土日祝 11:00〜20:00
定休日:火曜日
アクセス:MRT市政府駅より徒歩8分
2020年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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