海洋生物から学ぶ未来への遺産「リスボン水族館」

海洋生物から学ぶ未来への遺産「リスボン水族館」

更新日:2018/07/05 10:56

Lady Masalaのプロフィール写真 Lady Masala 知られざる名所案内人、蚤の市マニア
1998年に「海、未来への遺産」をテーマに開催された「リスボン万博」のためにつくられた「リスボン水族館」。そのスケールの大きさと海洋動物の種類の多さとで、ヨーロッパでは最大規模を誇ります。
水中で魚と一緒に泳いでいるような錯覚に陥るほどの迫力ある展示に驚き、間近で見られる動物たちのかわいらしい表情に思わずほっこり。飽きさせない仕掛けがあちこちに施され、1日中でも楽しめる水族館です。

「環境保全」に真剣に取り組む巨大水族館

「環境保全」に真剣に取り組む巨大水族館

写真:Lady Masala

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リスボン空港に程近い「Oriente(オリエンテ)」駅から徒歩で数分の距離にある「リスボン国際広場」は、1998年に開催された「リスボン万博」の会場として開発されたテージョ川沿いに広がる地域。

万博で使用されたパビリオンやモニュメントが残る広々とした空間は、散策するにはぴったり。お天気のよい日はベンチに腰掛けてのんびりと時間を過ごすのもよいでしょう。駅近くには「ヴァスコ・ダ・ガマ・ショッピングセンター」があり、お土産を買うのにも便利です。

「環境保全」に真剣に取り組む巨大水族館

写真:Lady Masala

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リスボンやポルトガル国内からだけではなく、世界中から毎年100万人が訪れるという「Oceanario de Lisboa(リスボン水族館)」は、もともと海と環境をテーマにした「リスボン万博」のために建てられました。

訪れる人々に、海洋やそこに生息する生き物について知ってもらうことはもちろん、近年ますます深刻化する環境破壊への理解を深めてもらうことを最大の目的としています。アクティビティーやワークショップを通じた啓蒙活動を積極的に行っていることでも有名です。

「環境保全」に真剣に取り組む巨大水族館

写真:Lady Masala

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館内の展示は、大西洋・太平洋・インド洋・南極に分かれており、それぞれの地域に生息する海洋生物が収容されています。魚をはじめとする水の生き物はもちろん、愛らしい鳥やラッコの姿も。また、熱帯雨林に関する展示では、色とりどりのカエルや毒を持つサンショウウオといった珍種の両生類も集められています。

かわいらしい「ラッコ」や「ペンギン」から学ぶこと

かわいらしい「ラッコ」や「ペンギン」から学ぶこと

写真:Lady Masala

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それぞれの展示は、海洋を含む環境破壊の実態とそれが招く影響を私たちに伝えています。例えば、ペンギンは南半球だけに17種生息しますが、そのなかの10種は個体数が減少しており、このままの状態が続けば絶滅の危機に瀕することになります。

漁業による乱獲や環境汚染、地球温暖化がその主な原因ですが、私たちはそのことを知り、改善してゆく責任を担っているということを教えられます。海や環境を守るために私たちにできることを考えるよいきっかけとなるのではないでしょうか。

かわいらしい「ラッコ」や「ペンギン」から学ぶこと

写真:Lady Masala

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多くの人々に海洋生物の生態と環境破壊について知ってもらうことがこの水族館設立の目的ですが、堅苦しく考える必要はありません。楽しみながら館内を一周するうちに、さまざまなことを学ぶことがきでます。

海鳥の生息地を模した岩場では、ペンギン、エトピリカをはじめとする鳥たちを間近に見ることができます。手を伸ばせば届きそうな距離で、羽の模様や表情までもがはっきりと確認できます。大西洋に生息するインカアジサシは、岩場を離れて来館者の頭上を縦横無尽に飛び回ります。思わず身構えてしまうくらいのスピードで、迫力満点。

かわいらしい「ラッコ」や「ペンギン」から学ぶこと

写真:Lady Masala

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館内での一番人気は、なんといっても愛くるしい2頭のラッコ。常に寄り添いながら水の中をゆらゆらと移動します。1日の大半を毛づくろいに費やすというラッコの緩慢な動きとユルい表情に癒されそうです。

毛皮のための乱獲で一時期絶滅の危機に瀕したラッコですが、現在ではその生息数は回復傾向にあるとのこと。こんなにもかわいらしい生き物がこの世から消えてしまわないように願わずにはいられません。

魚たちと一緒に泳いでいる気分になれる大迫力の「常設展示」

魚たちと一緒に泳いでいる気分になれる大迫力の「常設展示」

写真:Lady Masala

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常設展示の中央には、500万リットルもの海水が使用されているという巨大な水槽が据えられています。水中もまた、大西洋・太平洋・インド洋・南極の生態が再現されています。

身長を遥かに超える巨大水槽の前に立つと、まるで自分が水中にいるような錯覚に陥ります。サメが目前に迫ってきて思わずヒヤリということも。

魚たちと一緒に泳いでいる気分になれる大迫力の「常設展示」

写真:Lady Masala

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さまざまな魚たちが水槽内を縦横無尽に泳ぎ回ります。数種類のエイがいますが、豹のような奇抜な模様を持つものも。それぞれに異なる魚たちの色や形、模様までもがはっきりと見えるので、ずっと見ていても飽きることがありません。

魚たちと一緒に泳いでいる気分になれる大迫力の「常設展示」

写真:Lady Masala

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熱帯のインド洋を再現した水槽内では、カラフルな魚たちが群をなしてひらひらと泳ぎ回ります。異なる海洋にはそれぞれの生態系があり、雰囲気も違っています。海洋生物と同様に、人間も地域によって異なる文化を持っていることを考えると、興味深いものがあります。

日本人水景クリエーターによる「ネイチャーアクアリウム」

日本人水景クリエーターによる「ネイチャーアクアリウム」

写真:Lady Masala

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特別展として、2015年から「Florestas Submersas(英訳:Forests Underwater)」が開催されています。その展示内容は、「ネイチャーアクアリウム」という巨大な水槽に水草を植え、そこに生態系を創り出すというもの。

ネイチャーアクアリウムは、水草を美しく配置するというだけではなく「自然から学ぶ」というコンセプトに基づいて創られています。自然の美しい風景を切り取るように、水草によって水槽内にその景観を表現するのです。

水槽内には、水草・魚・微生物が小さな生態系をつくりだし、自然の縮図のような環境が出来上がります。だからこそ生き生きと泳ぐ自然本来の魚の姿が観察できるのです。

日本人水景クリエーターによる「ネイチャーアクアリウム」

写真:Lady Masala

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写真家で、水景クリエーターとして世界的に高い評価を受けた天野尚氏が総指揮をとり、この展示を完成させました。天野氏は、アマゾン、ボルネオなどの熱帯雨林の撮影に力を注いでいたことでも知られています。

自然と比べてしまえばほんの小さな水槽の中に、豊かで奥深いものが感じられる天野氏の創造には、わび・さびの要素を取り入れた「日本庭園」の趣すら感じられます。

世界を股にかけるクリエーターとして素晴らしい仕事を成し遂げた天野氏でしたが、この展示を完成させてから間もなくしてお亡くなりになりました。

日本人水景クリエーターによる「ネイチャーアクアリウム」

写真:Lady Masala

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天野氏の遺作となってしまった「Florestas Submersas」。そのオープニングセレモニーで天野氏は、「この作品には、一人でも多くの人に自然に感心を持ってもらいたいという私の思いがこめられています。この水景がかけがえのない地球環境の重要性をもう一度考え直すきっかけとなり、多くの人たちに自然を大切にする心を持っていただければ幸いです」とのスピーチをされました。

巨大な水槽内で悠々と泳ぎ回るたくさんの種類の魚たちと、ラッコやペンギンなどのかわいらしい海洋生物を間近に見られる「リスボン水族館」。楽しくてためになる展示を見学しながら、天野氏の遺したメッセージと、水族館のテーマである「環境保全」について少し考えてみてはいかがでしょうか。

※関連MEMOには、リスボンで訪れることのできるスポットとホテルを紹介した記事を掲載しています。よろしければそちらもご覧ください。

リスボン水族館の基本情報

住所:Esplanada Dom Carlos I s/no, 1990-005 Lisboa
電話番号:+351-218-917-000
開館時間:10時から20時(冬季は19時まで)
アクセス:地下鉄 Linha Vermelha(赤線)Oriente(オリエンテ)駅から徒歩12分

2018年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/04/24 訪問

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