極楽浄土へ!多くの仏が往来する奈良県「當麻寺練供養会式」

極楽浄土へ!多くの仏が往来する奈良県「當麻寺練供養会式」

更新日:2024/03/18 12:34

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
臨終の際、誰もが極楽浄土に導かれたいと思うことでしょう。実は、奈良県にはそのような極楽浄土への道行を実際に再現する法会が伝わっています。その主人公となるのは、古来、説話で親しまれて来た中将姫!今回は中将姫伝説をモチーフにした奈良県葛城市・當麻寺の奇祭「練供養会式」をご紹介しましょう。

中将姫ゆかりの當麻寺

中将姫ゆかりの當麻寺

写真:乾口 達司

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「當麻寺(当麻寺/たいまでら)」は奈良県葛城市にある古刹。古代の豪族・葛城氏の流れをくむ當麻氏の氏寺として、飛鳥時代に創建されたと考えられています。

その當麻寺でとりおこなわれるのが「練供養会式(ねりくようえしき)」と呼ばれている法会。各地に残されている練供養会式の本家本元です。練供養は幼い頃に母親を亡くした中将姫が継母に殺されそうになりながらも當麻寺で出家を遂げ、「當麻曼荼羅」を織りあげた後に極楽浄土へと旅立ったという伝説をモチーフにしており、実際のその道行を再現する形でとりおこなわれます。

練供養の開始時間は午後4時。そのスタート地点となるのが、写真の本堂です。

中将姫ゆかりの當麻寺

写真:乾口 達司

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本堂は寄棟造・本瓦葺。現在、国宝に指定されています。内陣には、曼荼羅厨子と呼ばれている高さ5メートルの巨大な厨子が置かれ、そのなかには中将姫が編んだとされる當麻曼荼羅が安置されています。

練供養の当日は、曼荼羅厨子の裏扉が開扉され、普段は非公開の裏板曼荼羅を拝観することが出来ます(午前9時〜午後2時)。ただし、法会のはじまる1時間ほど前には入堂を禁じられてしまうため、堂内の拝観を希望する方は、早めに訪れましょう。

中将姫ゆかりの當麻寺

写真:乾口 達司

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写真は本堂からのびる来迎橋。来迎橋は本堂と境内の東の端に建つ娑婆堂とをつなぐ仮設の板橋。娑婆堂が現世、本堂が極楽浄土に見立てられています。練供養はこの来迎橋の上を仏たちが往来する形でとりおこなわれます。

当日は大勢の参拝者で境内がごった返すため、練供養を間近でご覧になりたいと思う方は、開始の1時間前には来迎橋の脇で陣取っておきましょう。

まずは現世へ!娑婆堂へ向かう中将姫の坐像

まずは現世へ!娑婆堂へ向かう中将姫の坐像

写真:乾口 達司

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練供養の見所は、仏に仮装したたくさんの方々が来迎橋の上を往来するという点にあります。

練供養はまず中将姫が現世としての娑婆堂へと向かうところからはじまります。かつがれている御輿のなかには女性の坐像が置かれていますが、この女性こそ中将姫です。

まずは現世へ!娑婆堂へ向かう中将姫の坐像

写真:乾口 達司

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来迎橋を渡った中将姫の坐像は写真の娑婆堂に安置され、極楽浄土からの迎えを待つことになります。

中将姫を迎えにいく仏たち

中将姫を迎えにいく仏たち

写真:乾口 達司

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中将姫の坐像が娑婆堂に安置されると、本堂からは僧侶や稚児の行列が出発。それに続いて菩薩面をかぶり、仏に仮装した一行が来迎橋を通って娑婆堂へと向かいます。中将姫を極楽浄土へと導くため、仏の一行が現世へとわたっていくのです。

中将姫を迎えにいく仏たち

写真:乾口 達司

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写真は菩薩の一人をその背面から撮影したものですが、菩薩役の方は菩薩面をかぶるだけでなく、仏のありようにふさわしく、背面に円光(光背)も取り付けています。細かな演出だと思いませんか?

一行は西から東へと向かうため、円光に夕陽が当たって輝くのは、往路のみ。太陽の角度によっては、光輝く仏たちの姿を目にすることができますよ。まずはその荘厳さをご堪能ください。

中将姫をともなって極楽浄土へと戻っていく一行

中将姫をともなって極楽浄土へと戻っていく一行

写真:乾口 達司

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娑婆堂に到着した一行は、法要を済ませ、今度は逆に極楽浄土の象徴である本堂へと戻って来ます。写真はその様子を撮影したものですが、菩薩面をかぶった一行にちょうど夕陽が当たり、見たことのない幻想的な光景が現出します。

中将姫をともなって極楽浄土へと戻っていく一行

写真:乾口 達司

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往路とは異なり、一行の先頭に立つ菩薩が何やら手にしていることにお気付きになる方もいらっしゃるでしょう。間近で良く見ると、その菩薩が手にしているのは、小さな仏さま。これをいただくことにより、仏の一行が中将姫を極楽浄土へ導いていることを表しているのです。

このシーンが練供養のハイライトであるといえるでしょう。

仏たちの様子

仏たちの様子

写真:乾口 達司

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一行が来迎橋を往還する際は、菩薩面をかぶったひとりひとりをよくご覧ください。菩薩は25人いますが、それぞれ手にしているものが違っています。

菩薩の多くが手にしているのは、さまざまな楽器。実際にそれを奏でるわけではありませんが、現世と極楽浄土との往還に荘厳な雅楽の音色を奏で、中将姫を極楽浄土へと導いていくという演出が凝らされているわけです。

仏たちの様子

写真:乾口 達司

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こちらの菩薩が手にしているのは太鼓です。彼らの持ち物もじっくり観察しましょう。

仏たちの様子

写真:乾口 達司

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実際に雅楽を奏でているのは、一行に加わっているご覧の楽人たち。雅楽の音色が中将姫の往生をよりいっそう神秘的なものにしています。

一行が本堂へと戻ると、一連の法会はすべて終了となります。

當麻寺の「練供養」を拝観しよう!

當麻寺の練供養会式がいかに独特な法会であるか、おわかりいただけたでしょうか。当日は臨時駐車場も設置されますが、法会のはじまる1時間前にはすでに満車状態となるため、できるだけ早い時間に来場するか、電車などの公共の交通機関を利用することをおすすめします。練供養会式を拝観し、幻想的な来迎の光景をご堪能ください。

2024年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/05/14 訪問

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