写真:やた 香歩里
地図を見るかつて、熊野詣がさかんであったころ、“西国第一の難所”と名高かったこの「八鬼山」。往時は道も今のようには整備されていませんし、狼などの野生動物も出没し、ヤマビルもいて、さらに山賊も横行していたことから、確かに命を落とす人も多い難所でした。その名残は、あちこちに今も残るたくさんの石仏や供養碑が物語っています。
とはいえ、現在は道も整備され、狼は絶滅しヤマビルも大きく減少、もちろん山賊が出ることもないので、往時のような“難所”ではありません。標高は627m、ほぼ単純に山頂まで登りが続き、ふもとまで下っていくルートで、途中にいくつもの峠を越えるようなこともないので、標高並みのレベルといえます。険しい登りもあるのである程度の脚力は必要ですが、普段から500m前後の山を自力でスムーズに上り下りできるなら、クリアできるでしょう。
写真:やた 香歩里
地図を見る八鬼山を尾鷲駅側から越える場合、JRの駅から出発するなら、特急の停まる尾鷲駅か、普通電車しか停まりませんが最寄りの大曽根浦駅から出発することになります。尾鷲駅から登り口までは、街なかを歩いて約1時間。大曽根浦駅からなら約30分です。
尾鷲駅から歩くと少し距離がありますが、途中で「やのはま道」という、昔の街道の雰囲気を残した道を通ります。ウォーミングアップを兼ねて、歴史を感じながら歩くのも楽しいですよ。
写真:やた 香歩里
地図を見る尾鷲駅から約4km、1時間ほどで八鬼山越えの登り口に到着します。登り口の前には、トイレと駐車場があります。山に入るとトイレはないので、ここですませておきましょう。地元の方が整備してくださっているトイレで、水洗でペーパーも完備されています。
準備を済ませたら、いざ、八鬼山越えへ!
写真:やた 香歩里
地図を見る伊勢路の峠道には、このような木の道標が100mごとに設置されています。上の写真の道標には「01/63」と書かれていますが、これは、63本の道標のうち1本目ということ。単に道を示すだけでなく、登山口からどれくらい歩いてきたのか、あとどれくらい歩けば峠を越えられるのかがわかり、心強いです。
写真:やた 香歩里
地図を見る難所といわれる峠道も、最初は緩やかな上りから始まります。シダが茂り、冬でも緑が美しい道です。石畳が続き、熊野古道らしさが感じられます。
八鬼山の石畳道がいつ頃作られたのか正確にはわかっていませんが、江戸時代初期の17世紀前半には敷設されていたものと考えられています。熊野古道伊勢路にこのような石畳の道が多いのは、雨の多い東紀州において、雨で土が流されて道が消滅しないようにするための先人の知恵の現れです。
写真:やた 香歩里
地図を見る登山口から1キロちょっと、時間にして30分ほど歩いたところに、「ゴットン石」という敷石があります。大きな敷石ですが、少し浮いているようで、上に乗ると「ゴットン」という音がします。
「石畳道」の案内板から少し登ったところです。案内板にも説明がありますし、道の右手にも小さな案内板が出ているので、見逃さないでくださいね。
写真:やた 香歩里
地図を見る八鬼山越えの中で最も厳しいといわれる「七曲がり」は、道標「20/63」のところから始まります。つづら折りの急斜面が続く、確かに厳しい登りですが、距離は280mと短いので、焦らずゆっくり登って行ってください。
写真:やた 香歩里
地図を見る「七曲がり」を越えたら道のりが楽になるかというとそれほどでもなく、険しい登り道が続きます。ですが、すでに登りは半分以上過ぎています。ほとんどが石畳の道で、迷うようなところもなく、道標で現在地を確認しながら歩くことができます。
熊野古道の峠道には、あちこちに大きな岩が見られますが、八鬼山越えでひときわ目立つ大岩は、蓮華石と烏帽子(えぼし)岩。奥の背の高い岩が烏帽子岩で、手前の横幅の広い岩が蓮華岩です。
鬱蒼と茂る山深い樹林の中は静かで、幽玄な雰囲気さえ漂います。「西国第一の難所」であった頃の名残を感じてみてください。
写真:やた 香歩里
地図を見るさらに登って山頂が近づくと、荒神堂と、荒神茶屋跡が現れます。ここには、西暦702年に創基された八鬼山日輪寺がありました。現在、寺院は残っていませんが、荒神堂には仏像が納められています(拝観はできません)。荒神堂の建物は今でも地元の方が定期的に管理されていて、大事に祀られています。
さあ、ここまできたら、山頂まではあと少し!
写真:やた 香歩里
地図を見る荒神茶屋跡を越え、さらに10分ほど歩くと、江戸道と明治道の分岐を表す道標があります。ここは必ず江戸道の方を通るようにしてください。明治道の方は現在整備されておらず、危険ですし、世界遺産に登録されていえるのは江戸道の方です。
写真:やた 香歩里
地図を見る江戸道を歩いたら、少し道を外れますが山頂にも立ち寄り、さらに「さくらの森広場」へ行ってみてください。山頂は眺望がありませんが、さくらの森広場では海側を広く見渡せます。峠越えの続く伊勢路は絶景スポットもたくさんありますが、この高さからの眺望は伊勢路随一。ここまで頑張ってきたご褒美のような眺めです。
天気が良ければ、北には志摩半島、南には那智の山々が広がる、大パノラマが見渡せます
写真:やた 香歩里
地図を見るさくらの森広場には東屋やベンチもあり、お弁当を広げるにもぴったり。ここからは下りが続きますが、長い下りは足に響きます。ここでしっかり体力を回復して、下りに備えましょう。
なお、登り口からこのさくらの森広場まで、所要時間の目安としては2時間〜2時間半です。
写真:やた 香歩里
地図を見る山頂からの下りは、かなり急になっています。山頂付近は道が落葉で覆われていることもあり、滑りやすいので要注意です。登山の事故は、登りより下りの方が多いもの。落ち着いてゆっくり降りてくださいね。
写真:やた 香歩里
地図を見る樹林の中を続く石畳の道は、まさに熊野古道。最後の最後まで、世界遺産の道を味わいながら歩いてください。道標「52/63」近くの十五郎茶屋跡には東屋があり、休憩もできます。
籠立場跡の案内板が見えたら、残りはもう少し。やがて峠の終わりを示す「63/63」の道標が見えてきます。さくらの森広場から「63/63」の道標までの目安時間は、1時間半〜2時間です。
写真:やた 香歩里
地図を見る「63/63」の道標を過ぎ、すっかり平坦になった道を10分ほど歩くと、名柄(ながら)一里塚跡があり、近くに休憩できる東屋とトイレがあります。もしこのトイレが故障などで使えない場合は、徒歩15分ほどの三木里海水浴場のトイレを使用しましょう。三木里駅にもトイレはあります。
名柄一里塚跡から三木里駅までは約2km、30分ほどです。
もし三木里駅に行かずにさらに熊野古道を進むと、三木峠(標高120m)、羽後峠(標高140m)を越えて、賀田駅まで歩くことになります。距離的には6kmほど、約3時間の道のり。八鬼山を4時間で越えられれば、さらに続けて歩けないこともないですが、この2つの峠はそれ自体の標高は低くても道中は細かいアップダウンの連続で、距離や標高以上に疲労します。脚力に自信がない場合は、無理をせず、三木里駅で終了するのが無難です。
八鬼山は、山登りに慣れていれば、距離、標高とも特別ハードなわけではありませんが、伊勢路の他の峠に比べると険しい道であることは間違いありません。登山靴などのしっかりした靴やリュック、急な天候の変化に対応できる雨具や防寒着など、基本的な登山装備は必要です。ストックや、万一の事態に備えてライトなども持参しておきましょう。十分な水分も必須です。山越えには4〜5時間かかるので、もし山で食事をとらない予定でも、軽食は持参しておくことをお勧めします。
また、尾鷲市では近年、熊(または熊らしきもの)の目撃情報が毎年出ています。複数人で行動する、熊鈴やラジオを持つなどの、基本的対策は怠らないようにしましょう。熊だけでなく、鹿や猿などの野生動物も生息していますから、熊鈴などでこちらの存在を知らせながら歩くのは大切です。
自力での峠越えが不安な方は、熊野古道語り部友の会にガイドを依頼することもできます(有料)。各所の見どころや歴史なども解説してもらえるので、安心して峠越えを楽しめます。詳細は下記「関連MEMO」のリンクをご参照ください。
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(2024/3/29更新)
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