写真:Mayumi Kawai
地図を見る台湾本島から北西へ約200km、中国大陸からわずか20kmの至近距離に浮かぶ馬祖(日本語読みは“ばそ”、台湾語読みは“Matsu”あるいは中国語読みでは“Mazu”)列島。
中国本土にて共産党が政権を掌握して以来、蒋介石率いる国民党は台湾本島へ逃れ、1950年以降台北に新政府を樹立して共産党と対立します。その最前線に立たされたのがこの馬祖列島。もともと中国との国交が盛んでのどかな漁村の島でしたが一変して軍事要塞化し、台湾本島からも隔絶され、一般の往来は厳しく制限されてきました。
時が流れ、台湾海峡における軍事的緊張が緩和されたことを受け、1994年にようやく入島制限が解除されます。以来、一般観光客も気軽に往来できるようになり、島の観光地化が進められています。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る今でも島の至る所に迷彩色に覆われたトーチカ(鉄筋コンクリートで固められた砲座)や砲台、海からの上陸を防ぐためのガラスの破片を埋め込んだ岩壁などの戦時遺構が生々しく残されています。
一見のどかな島の風景ですが、要塞の向こうにうっすら見えるのは中国本土。空気が澄んでいるとよりはっきり見えるそうです。当時を想像するとちょっとゾクッとしますね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る戦時遺構は今では当時を知る貴重な資料として一部が一般開放されています。あるいは観光資源化したり、島の特産である老酒やコウリャン酒などの酒蔵に再利用するなど有効活用されています。
未だに軍が駐屯し、軍事施設や軍隊が往来する物々しい空気が漂う一方、のどかな漁村の風景を取り戻して観光地化が進む馬祖には港にスターバックスやセブンイレブンもあります。台湾人にとっても気軽に訪れることができる週末旅行先になってきているんですよ。
そんな馬祖列島の観光の目玉がこの青の光の神秘のベール、通称「青の涙(Blue Tears)」で台湾語では「藍眼涙」で知られる夜光虫による発光現象です。日本をはじめ世界中でこの現象を目にすることはできますが、赤潮の発生など偶発的な自然条件に左右されることに対し、馬祖では毎年4〜8月末まで日常的に発生しています。
馬祖列島は主に5つの島(南竿島、北竿島、東引島、東莒島、西莒島)で構成されていますが、どの島でもこの「青の涙」を見ることができるんです。
青の涙を安定的に見られるシーズンは4月〜5月とも言われていますが、何よりも重要な条件は、新月前後の月明かり弱まるタイミングあるいは月が沈んだ夜明け直前であること、海から陸に向けて強めの風が吹くこと(夜光虫は岩壁に打ち付けられる衝撃で青く発光するため)と言われています。
ちなみに、この幻想的な「青の涙」を撮影するためには長時間露光が可能なカメラと風の強さに耐えられる三脚が必要です。残念ながらスマートフォンは難しいでしょう。どうしてもカメラに収めたい場合は事前にいいカメラを用意していきましょうね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るもし不運にも「青の涙」を海で見ることができなかったら、南竿島南部にある戦時遺構「北海坑道」で行われる「青の涙観賞ボートツアー」がおすすめ。かつて遊撃戦用の船舶を停泊させていた全長640mの地下トンネルは、現在一般公開されています。
引き潮の夕方頃までは坑道内の遊歩道を散策できますが(日によって干潮時間が異なるため注意)、潮が満ちる夕方以降は坑道内の水路をボートで移動し、ボートの上から「青の涙」を観賞することができます。
ボート乗り場のライトを消すと、そこは一寸先も見えない漆黒の闇。乗客はおもちゃのような小さなオールを手渡され、ボートの上から水面を叩くように促されます。すると水面を漂う夜光虫が驚いて青く発光するのです。青の光が飛び散るさまはまさに神秘的。写真撮影はできませんのでご注意ください。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るツアーはおおむね20分程度。料金は大人300元で、毎日18時から30分おきに1日3回程度実施されています。ただし、事前予約制のため、中国語に不安がある場合は宿の方にお願いすると良いでしょう。空きがあれば当日も可能です。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る馬祖列島の中心に当たる南竿島。台湾本島から空の便やフェリーも就航しています。「青の涙」を観賞できるスポットは島の多くに点在していますが、中でももっとも美しいと評判の島南岸部には、かつて島一番の大きな漁村として栄えた津沙(Jinsha)集落が存在します。少しジブリ感も漂う伝統集落の目の前には金砂のビーチの津沙湾が広がります。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るその津沙村の中でもひときわ見晴らしのいい高台に建てられた民宿「津沙客桟」は「青の涙」を観賞するのに最適な宿。築100年を越える石と木組みの伝統家屋は台湾人のツアー客も立ち寄るほど。
高台の1号店とビーチから目と鼻の先に立つホステルの2号店があり、いずれもビーチまで徒歩1分。宿のオーナーは英語も堪能でいろいろ相談に乗ってくれます。さらに美味しいコーヒーでもてなしてくれますよ。
<津沙客桟(Mazu Jinsha Inn)>
住所:台湾連江県南竿郷津沙村12号(1号館)/49号(2号館)
電話番号:+886-836-23020
写真:Mayumi Kawai
地図を見る「津沙客桟」からの眺め。湾が一望できます。昼はビーチで遊び、夜は「青の涙」の観賞も楽しめて一挙両得ですね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る馬祖の見どころは「青の涙」だけではありません。南竿島には全長約29mの「マ(女偏に馬)祖巨神像」が大陸の方角を向きながら航海の安全を見守っています。構想から完成まで約10年、現在も巨大な船を模した展望台が建設中です。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る「八八(Baba)坑道」もまた戦時遺構を有効活用した事例で、ひんやりした全長200mの坑道内には馬祖名物・老酒を熟成させた酒壺がズラッと並べられています。また坑道奥にはコウリャン酒用の製造機械も設置されています。坑道内はお酒の匂いで充満しているのでほろ酔い気分になるかもしれませんね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る老酒造りが盛んな馬祖では、酒造りで出た紅糟(ホン・ツァオ)を使ったメニューが豊富で、写真の「紅糟肉老酒麺線」はポピュラーな一品。素麺のような細い麺に青菜や目玉焼き、紅糟に漬け込まれた肉がトッピングされ、老酒風味の鶏ガラスープがなんとも言えない豊かな風味。アルコールがきついのでお酒が弱い人はご注意ください。また、牡蠣入オムレツがサンドされた継光餅(チーコンピン)、いわゆる馬祖ベーグルもおすすめですよ。
馬祖へのアクセスは決して便利とは言えません。飛行機は台北松山空港と台中空港から、フェリーは台湾北部の基隆港からは毎日1便(所要8〜10時間)就航しています。しかし近年までベールに包まれていた馬祖だからこそ、「青の涙」や戦時遺構も含めて、手付かずの自然やのどかな漁村の風景など数々の魅力が眠っています。
王道の台湾旅にちょっと飽きてきたら、今度は新たな発見を求めて是非馬祖を訪れてみてください。
※就航航空会社及びフェリー会社は関連メモのリンクをご参照ください。
2018年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/10/13更新)
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