再開発のはざまにひっそり残る東京・JR飯田橋駅界隈の3つの幽霊坂

再開発のはざまにひっそり残る東京・JR飯田橋駅界隈の3つの幽霊坂

更新日:2018/07/02 11:02

雲本 らてのプロフィール写真 雲本 らて 散歩ブロガー、坂道探検家
近年、再開発が着々と進んでいる千代田区のJR飯田橋駅・東側エリア。そんな駅近の場所にも坂道がひっそりと存在します。中でも地域の再開発にあらがうように、はたまた、時間がとまったように存在する幽霊坂という変わった名前の坂道がこのあたりには密集しています。なぜそのような幽霊坂が駅前に存在しているのか?今回は、そんな謎についてもふれながら、界隈の史跡などについても紹介します。

訪れるたびに周辺の景色が変わる幽霊坂

訪れるたびに周辺の景色が変わる幽霊坂

写真:雲本 らて

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今回、紹介する幽霊坂は3つあります。その中でも、ここ数年、周辺の風景が訪れるたびに変わっている幽霊坂が写真の坂道です。JR飯田橋駅から一番近い坂道でもあります。以前は昼でも薄暗くうら寂しい感じがありましたが、界隈に角川関連のビルやしゃれた保育所などができ、特に坂下あたりは大規模再開発により坂道の雰囲気が一変しました。

訪れるたびに周辺の景色が変わる幽霊坂

写真:雲本 らて

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幽霊坂という名前については、諸説あります。このあたりでいえば、江戸時代、武家屋敷裏の寂しい坂であったためそう名付けられたと言われています。

ちなみに幽霊坂という名は、幽霊が目撃されたことに由来するわけではなく、偉い人が負のレッテル張りのために名付けたものでもなく、あくまで地域の住民が名付けた坂名です。一般的には、墓地のそばにある昼でも薄暗い場所であることから名付けられることが多いのです。

そういう意味では、幽霊坂と名付けられている場所は、地域とともに見えないなにか(それがたまたま幽霊だった)が存在してほしいと、かつての住人が思っていた証拠でもあると言えるでしょう。

訪れるたびに周辺の景色が変わる幽霊坂

写真:雲本 らて

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幽霊坂の坂下から北東に下る坂道も一緒にみると楽しいかもしれません。ここには坂名はありませんが、坂の両サイドには、角川の新しいビルや飯田橋サクラテラスが隣接しており、これらの再開発により、坂道風景も一変した場所です。

<基本情報>
幽霊坂(1)
所在地:東京都千代田区富士見2
アクセス:JR・飯田橋駅より徒歩4分

与謝野鉄幹晶子・居住跡もすぐ近く

与謝野鉄幹晶子・居住跡もすぐ近く

写真:雲本 らて

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1つ目の幽霊坂の坂下からなら徒歩1分もかからない場所に、歌人の与謝野鉄幹・晶子夫婦が大正4年から大正12年の関東大震災までの8年ほど暮らしていました。現地には、「与謝野鉄幹晶子居住跡」と書かれた石碑と案内板が緑地内に立っています。

与謝野鉄幹晶子・居住跡もすぐ近く

写真:雲本 らて

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また「与謝野鉄幹晶子居住跡」の石碑に隣接して、南東に上る坂道があります。坂名はありませんが、石碑が立っている緑地の樹々との兼ね合いや高低差具合が印象的な坂道です。

なお、この坂道については、近くの幽霊坂も同様ですが、江戸時代から存在した場所です。そのため、与謝野鉄幹・晶子夫婦も普段の生活で上り下りした坂道のはず。ぜひそんなことも想像しながら歩いてみてください。

日本赤十字社発祥の地と外濠

日本赤十字社発祥の地と外濠

写真:雲本 らて

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与謝野鉄幹晶子居住跡からも見えるすぐ近くの場所には「日本赤十字社発祥地」の案内板もひっそりとあります。現在の日本赤十字社は、明治10年(1877)西南戦争の際に傷病者救護活動等のため設立した博愛社を前身としているのですが、その本拠がこの地にあったためです。

日本赤十字社発祥の地と外濠

写真:雲本 らて

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日本赤十字社発祥の地のすぐ北西側は外濠になっているのですが、その間を走る道路も、飯田橋サクラテラスの再開発により気持ちのいい空間になっています。わかりにくいですが、実はここも坂道です。名前はついていませんが、隣接している外濠および飯田橋サクラテラスとの関係がおもしろい場所です。また隣接するビルにサクラテラスという名前が入っているとおり、春には桜の名所としても有名です。

高低差が印象的な幽霊坂

高低差が印象的な幽霊坂

写真:雲本 らて

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2つ目の幽霊坂は、1つ目の幽霊坂と坂上でつながっています。坂上と坂下には、特徴的な外観の角川本社ビルがあり、坂上からの景色も気持ちのいい坂道のため、ここが幽霊坂であるとは信じられない雰囲気になっています。

ちなみに、この幽霊坂も江戸時代から存在している古い坂道です。

<基本情報>
幽霊坂(2)
所在地:東京都千代田区富士見1と2の間
アクセス:JR・飯田橋駅より徒歩4分

一番新しい幽霊坂

一番新しい幽霊坂

写真:雲本 らて

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3つめの幽霊坂は、2つ目の幽霊坂の南東側を並行に走っており、徒歩でいえば1分くらいの場所にあります。坂下には日本歯科大学の校舎が隣接しています。今回の3つの幽霊坂の中では、時代的に一番新しく、明治時代に入ってからできた坂道です。

ただ、雰囲気という点でいえば、一番古めかしく、坂上あたりの古い石垣などはその最たる例かもしれません。そういう意味では、再開発の進むエリアにひっそりと残っている幽霊坂という言葉がしっくりくる坂道と言えるでしょう。

<基本情報>
幽霊坂(3)
所在地:東京都千代田区富士見1
アクセス:JR・飯田橋駅より徒歩6分

坂名とともに再開発エリアとのコントラストがおもしろい

今回は、JR飯田橋駅からもほど近い3つの幽霊坂を取り上げてみました。幽霊坂とはいっても、今回取り上げた場所の近くには墓地などなく、幽霊が目撃されそうな雰囲気や史実もない坂道であることはわかっていただけたと思います。

またこれらの幽霊坂は、駅前の再開発とのコントラストがおもしろい場所ともいえます。ぜひ、外濠や商業施設を訪れたときには、裏道散策気分で幽霊坂のことも思い出してもらえれば幸いです。

掲載内容は執筆時点のものです。

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