写真:沢木 慎太郎
地図を見るベトナム中部にある王宮都市「フエ」。1993年にベトナム初の世界文化遺産に登録されたフエの建造物群があります。このうち最大の観光スポットが、ベトナム最後の王朝が築かれた「グエン朝(阮朝)の王宮跡(Dai Noi)」。栄華を極めた宮廷文化を今に伝え、重々しい歴史が感じられます。
写真は、鳳凰をかたどった楼閣を設けた「午門」。王宮の南側に位置し、観光旅行者は正門となる「午門」から入ります。正午になると、太陽が真上に昇る南門を正面とするのは、中国の習慣によるもの。実はグエン朝王は、中国・北京の“紫禁城”をモデルに造られました。
「グエン朝王宮」は北京の王城をモデルに造られ、大きさは紫禁城を4分の3に縮小したサイズ。高さ約7メートル、周囲約2.5キロメートルの城壁が取り囲み、その姿は函館市の五稜郭と同じフランス式の星型城郭。王宮内には、中国様式の宮殿や庭園が整然と並び、さらにヨーロッパのバロック様式やベトナムの伝統的なデザインが重なりあい、独自の美しさが見られます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る午門をくぐり、正面に見えるのが「太和殿」。皇帝の即位式などに使われた建物です。大広間には皇帝が座る金箔の王座が置かれていますが、撮影は禁止。柱や壁には、皇帝を象徴する龍の装飾が見られます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る太和殿を抜けると、「右廡」「左廡」といった左右対称の建物が見えてきます。かつて高級官吏たちが過ごしたところ。これらの建物を過ぎた場所に、「紫禁城」と呼ばれる広大なエリアが広がっています。
紫禁城エリアの大きさは、京都御所の半部ほど。皇帝が政務を行った建物などが並んでいましたが、そのほとんどは戦禍で失われました。しかし、建物を結んでいた赤く美しい回廊が残り、栄華を誇ったグエン朝王宮の華やかなざわめきが回廊の奥から聞こえてくるようです。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るグエン朝は1802年、初代皇帝のザーロン帝がフランスの援助を受け、内乱の続くベトナムを統一。フエを都に現在のベトナムにほぼ等しい領地を支配し、2代ミンマン帝の時代に王宮が完成しました。
王宮の中でも、政治の中心となるのが紫禁城エリア。こちらが紫禁城エリアを撮影したもので、写真は「八角亭」。八角形の東屋で、屋根には龍の彫刻が見られます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る写真は、紫禁城エリアの最深部となる場所。ここには「建中樓」と呼ばれるバロック建築スタイルの建物がありました。しかし、レンガ造りの美しい建物も戦禍によって喪失。草に埋もれた基壇だけが残り、黄金の龍がただ一人、廃墟となった紫禁城を見下ろしています。
龍が見つめている真正面には、「午門」や「太和殿」といった建物があり、王宮の主要な建物は南北方向に一直線に並んでいます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るさきほどの黄金の龍から見て左側のエリア(王宮東側)には、王宮舞踊音楽(ユネスコの世界無形遺産に登録)が見られる「閲是堂」(午前10時、午後3時に公演、別途入場料20万ドン)や、皇帝の書斎棟「太平楼」(写真)が建ち、運河に囲まれたグエン朝王宮の静かなたたずまいが感じられます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る王宮東側のエリアは朽ちかけた壁が連なり、廃墟感が漂います。無造作に生い茂る雑草の中、虫の音や鳥のさえずりが聞こえてきます。かつて栄華を誇った王宮は静寂に包まれ、そこはかとない寂しさや美しさが感じられます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る皇帝の書斎棟「太平楼」のまわりは美しい庭園に囲まれ、紫陽花などの花も見られます。京都や奈良の寺院で見られる庭園に通じる美しさがあり、ほっとした安らぎが感じられることでしょう。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る写真は王宮東側の入り口となる「東仁門」。ピンク色の壁や赤い花、夏空を思わせる深く青い空。グエン朝王宮は、廃墟の中にも明るく、力強い姿があります。南国のベトナムらしい城砦は歴史ロマンが秘められ、旅人を楽しませてくれます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る王宮の西側エリアには、皇太后の宮殿や歴代皇帝の位牌を祀る建物があり、その途中には廃墟のような風景が広がっています。左に見えるのは紫禁城エリアにある建物で、冒頭でご紹介した赤い回廊がのぞいています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る写真は、皇太后の宮殿「長寧宮」(長生宮)。この建物では、王族が身にまとっていた伝統衣装が展示され、当時を再現した宮廷茶を楽しむことができます。ベトナムの新鋭デザイナーが手がけた現代風のアオザイやアクセサリー、雑貨、工芸品などお土産が見つかります。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るこちらも王宮西側エリアにある建物で、グエン王朝の菩提寺としての役割を持ちます。「顕臨閣」と呼ばれる3階建ての建物で、これは歴代皇帝の供養塔。庭には、青銅の鼎(かなえ)が9つ置かれ、それぞれに皇帝の名前が刻まれています。美徳や輝きなど、皇帝のイメージを表した鼎が見られます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る顕臨閣の正面にある建物が写真の「世廟」。グエン王朝の歴代皇帝の位牌を祀っています。グエン王朝は、13代にわたって栄えましたが、このうち中央の祭壇には初代皇帝のザーロン帝、その左は2代ミンマン帝、右は3代ティエウチー帝が祀られています。皇帝が外出時に使った日傘などが祭壇わきに飾られています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る143年間にわたって栄えたグエン朝。しっとりした情緒だけでなく、バロック式建築独特の動的で劇的な視覚効果も秘められています。しかし、この栄華を誇った王朝はやがて、フランスの支配や第二次世界大戦に翻弄されます。日本が敗戦した1945年に革命が起こり、グエン朝は滅亡。日本に利用された中国のラストエンペラーが悲劇的な結末を迎えたように、フランスと敵対する日本軍に協力したグエン朝も、日本の敗戦とともに終えんを迎えました。
グエン朝滅亡後、ベトナム民主共和国が誕生し、後に現在のベトナム社会主義共和国へと移っていきます。しかし、その間にベトナム戦争が勃発。王宮に立てこもった北ベトナム軍に対し、アメリカ軍は激しい攻撃を行い、王宮内の建物はほとんど破壊されました。
今も修復作業が進められているフエ王宮。多くの戦禍をくぐり抜けてきたフエの遺跡は、そこはかとない寂しさや美しさが感じられます。王宮は広く、ぜんぶ巡るには3時間以上が必要。涼しい早朝に訪れ、神秘的な歴史ロマンに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
写真:沢木 慎太郎
地図を見る川や運河に囲まれたグエン朝王宮。夜になれば漆黒の闇が城砦をしっとり包み、王宮正門の「午門」がライトアップされます。初代皇帝のザーロン帝が建てた「フラッグ・タワー」(写真)もイルミネーションに包まれます。
王宮前広場はフエ屈指の夜景スポット。この付近では、地元のカップルたちのデートスポットになっています。ただ手をつないだり、ベンチに座っているだけのデートですが、とても楽しそう。旧市街は素朴なベトナム人の暮らしが見られ、どこかノスタルジック。子どものころに遊んだ影絵のように遠く、懐かしく、心の琴線にふれるものが感じられるでしょう。
世界遺産に登録されている「フエの建造物群」は全部で15カ所(16の建物)。王宮以外にも、「ミンマン帝陵」「カイディン帝陵」とった歴代皇帝の帝陵や寺院がフエ郊外にあり、フォン川を下りながら史跡を巡るボートトリップツアーも人気があります。
ベトナム中部には、4つの世界遺産(フォンニャケバン国立公園、フエの建造物群、ホイアンの街並み、ミーソン遺跡)があり、この中心地に位置するのがフエ。ダナンやホイアンから足を伸ばしての観光もおすすめです。
住所:Trung Tam Bao Ton Di Tich Co Do, Hue
アクセス:新市街からタクシーで約5分
開館時間:7時〜18時(年中無休)
料金:大人15万ドン(フエ王宮とフエ宮廷骨董博物館の入場料含む)
セット料金:「3カ所セット券」(王宮・ミンマン帝陵・カイディン帝陵)が大人28万ドンで、「4カ所セット券」(王宮・ミンマン帝陵・カイディン帝陵・トゥドック帝陵)が大人36万ドン(いずれも購入日から2日間有効)
2018年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
この記事の関連MEMO
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索