写真:沢木 慎太郎
地図を見るベトナム中部に位置するフエ。19世紀から20世紀にかけてベトナム最後の王朝(グエン朝)が築かれた王宮都市です。グエン朝は1945年に滅亡。しかし、「グエン朝(阮朝)の王宮」など15カ所(16の建物)が、“フエの建造物群”として、1993年にユネスコの世界文化遺産に登録され、宮廷文化を今に伝えています。
王宮以外にも、歴代皇帝が眠る7つの帝陵がフエ郊外にあり、これらも世界文化遺産に登録されています。このうち、グエン朝第2代のミンマン皇帝(在位1820年〜1841年)が眠る帝陵が「ミンマン帝陵」。デコラティブな中国文化が見られ、“フエ屈指の美しさ”と言われています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る「ミンマン帝陵」があるのは、フエ駅から約15キロメートル離れたカムケー(錦鶏)山。最も手軽な行き方・アクセスは、タクシーを利用すること。また、旅行代理店が行っているボートトリップツアーに参加するのもおすすめです。フォン川(写真)を下りながら「ミンマン帝陵」「トゥドゥック帝陵」「カイディン帝陵」といった帝陵や寺院を巡ることができます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るグエン朝は1802年、初代皇帝のザーロン帝がフエを都に現在のベトナムにほぼ等しい領地を支配。中国・北京の紫禁城をモデルにした「グエン朝王宮」が築かれ、第2代皇帝ミンマン帝が王宮を完成させました。
歴代皇帝が眠る帝陵も、中国の明・清朝時代の陵(天皇・皇后など皇族の墓所)を参考に造られています。川や池に囲まれながら、「拝庭」「碑亭」「段台状テラス」「寝殿(礼拝殿)」「石棺」という建物を配置。7つの帝陵には歴代皇帝のキャラクターがそれぞれに出ていて、さまざまなデザインを見ることができます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るミンマン帝陵は1840年から3年かけて建設。1750メートルの城壁が取り囲み、寝殿などの主要な建物が700メートルの真っ直ぐな参道に並び、中国式にデザインされた建物には数多くの詩文が美しく彫刻されています。グエン王朝の最盛期を感じさせる威風堂々とした姿。それがミンマン帝陵の見どころです。
チケットを購入し、お土産屋さんを通り、池のほとりに沿って歩き、最初に目にするのは兵士たちの石像。広場のまわりに立つ石像群は不気味で厳かながらも、どこか柔和な表情があり、ミンマン皇帝を慕い続ける静かなる意思が感じられます。まるで、生きているかのような姿です。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る兵士だけでなく、馬やゾウの石像も見られます。中国、秦の始皇帝が眠る帝陵から、数千体の兵士の像が発見されましたが、これは「兵馬俑」(へいばよう)と呼ばれるもの。古代中国で死者を埋葬する時に使われた副葬品です。
俑というのは、儀礼的な意味を持つ明器(めいき)の一種。これと同じように写真の兵士やゾウの石像は、ミンマン皇帝の霊魂を守り、皇帝の死後に必要な生活のために作られました。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る石像が並ぶ広場には、「大紅門」という門があり、ここが「ミンマン帝陵」の正門。門の扉は閉じられています。この扉が開いたのは、たった一度だけ。亡くなったミンマン皇帝の遺体が運び込まれた時です。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る正門の前にある「碑亭」。建物の中には、ミンマン帝の功績を記した碑石(聖徳神功碑)が祀られています。
正門があるのは東側。皇帝が眠る西側のお墓に向かって、各建物が東西方向に一直線に並んでいるのもミンマン帝陵の特徴です。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る碑亭を通り抜けたところにあるのが「顕徳門」。この門の後ろに寝殿(礼拝堂)があるのですが、寝殿の前門として建てられたのが「顕徳門」です。真ん中の一番大きな扉は、皇帝専用となっています。扉には中国様式のデコラティブな模様が描かれています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る写真が寝殿(礼拝堂)。「崇恩殿」と呼ばれる建物で、ミンマン皇帝と皇后の位牌が祀られています。礼拝堂の前には龍がデザインされた豪華なすだれが飾られ、静かなたたずまいがあります。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る寝殿の後ろには、石で作られたデコラティブな門があり、厳かな気配が感じられます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るさきほどの石門をくぐると、中国式の庭園が広がり、池(澄明湖)に架かる橋の向こうに楼閣(明楼)が建っています。ミンマン帝陵は、皇帝みずからがデザイン。中国文化を愛した皇帝の遊び心が見られます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るこちらは明楼の内部。朱色の柱や壁が鮮やか。壁には金色の装飾が散りばめられています。明楼には、ミンマン皇帝が使っていた寝台が置かれています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る明楼を抜けると、再び中国式の庭園が見られ、いよいよミンマン皇帝が眠る陵墓へ。写真の奥に見える墳丘がミンマン皇帝の陵墓。手前には、“新月池”と呼ばれる三日月形の蓮池があり、これは皇帝の崩御を表しています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る新月池に架かる橋を渡ると、ここがミンマン帝陵。150年間、13代にわたって続いたグエン朝の王宮を完成させ、フエ王朝の繁栄を築いたミンマン皇帝が眠っています。ベトナムのディープな穴場の観光スポットです。
初代皇帝のザーロン帝はフランスの援助を受け、内乱の続くベトナムを統一しました。しかし、第2代皇帝ミンマン帝は儒教的思想を持っていたため、西洋文化を廃止。中国式の文化や政治体制を取り入れ、官僚たちの採用には「科挙」を導入しました。コネではなく、試験に合格した人材を集めたミンマン皇帝は人望が厚く、歴代皇帝の中で最も人気があります。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るミンマン帝陵は蓮池が多く、静かな水辺の空間でのんびり過ごすのもおすすめ。ミンマン皇帝は政治家として優れた手腕を発揮する一方、私生活では40人以上の側室を持ち、毎晩5人の妻と交わり、140人以上の子どもを設けた伝説の皇帝です。
豪快な皇帝がみずから手がけた墓は、入り口から陵墓まで約1キロメートルの距離があり、高低差のある丘に中国式のデコラティブな建物や庭園、池、橋が点在し、遊び心がたっぷり。多くの女性を喜ばせた伝説の皇帝は200年が過ぎた今も、自分に会いに来た多くの観光旅行者を楽しませ続けています。
住所:Huong Tho Commuce, Huong Tra Prov., Thua Tien Hue City
参拝時間:7時〜17時30分(年中無休)
アクセス:フエ駅からタクシーで約20分
料金:大人10万ドン、子ども2万ドン
2018年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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