写真:安藤 美紀
地図を見る歴史が古く、昭和レトロという言葉がぴったりな岳南電車(がくなんでんしゃ)。静岡県富士市東部の片道9.2km、吉原駅〜岳南江尾駅のわずか10駅を結ぶこの電車には、他にはない魅力で溢れています。
もともと岳南電車は、戦後第1号の工事認可を受けた鉄道会社。2018年で70周年を迎えた今でも、富士市の貴重なローカル線として活躍しています。車両は、1両編成から最大でも2両編成。小さな電車がホームに滑り込む姿はかわいくて、思わず頬が緩んでしまいます。
写真:安藤 美紀
地図を見る時代はIC化に向かっていますが、岳南電車は昔のまま。切符は珍しい厚紙の硬券です。
切符を買うなら、往復するだけで元がとれる「全線1日フリー乗車券」がオススメ。料金は大人700円、子ども300円。この切符があれば、気になる!と思った駅でぶらっと下車してもOK。夜景電車の出発時間まで、時間を有効活用しましょう。
また、岳南電車には全駅から富士山を見られるビュースポットを示す「足型」があります。昼間は駅のホームで富士山を見たり、沿線の街歩きを楽しんだり、昼も夜も岳南電車を楽しんでくださいね。※「全線1日フリー乗車券」を購入できるのは、常に駅員さんがいる吉原駅のみ。
写真:安藤 美紀
地図を見る終点「岳南江尾(がくなんえのお)駅」の駅名看板には、かわいらしい星のデザインが!これは、岳南電車を支援している人たちが「将来、えのお駅から先は宇宙へ行けたらいいね」という、銀河鉄道のような願いを込めて作ったものです。行き先は銀河…なんて、夢が溢れていますよね。
写真:安藤 美紀
地図を見る車内の闇を楽しむ夜景電車。2014年には、日本の鉄道業界で初めて「日本夜景遺産」に認定。さらに、2017年には、岳南電車から見る月が美しいことから「日本百名月」にも選ばれました。
ではなぜ、この企画が生まれたのでしょう?夜景電車の発案者である、ベテラン運転士 本多功典さんに話を伺いました。
夜景の本場・長崎市出身の本多さんは、プライベートで日本全国の夜行列車に乗り、暗闇に浮かぶ懐かしい街の灯りに魅力を感じていたそうです。
「岳南電車は、灯りの光量は少ないけれど、周囲には工場、港、街、家々などのほのぼのした明かりが見られます。だったら、夜行列車のように車内を暗くしてみよう!ポツンとした灯りが幻想的に見えるのでは…と思いつきました」
こうこうと明るい電車に慣れている私たちにとって、真っ暗な車内は衝撃的な光景。しかし、岳南電車の夜景は優しくてあたたかい。そこかしこに、平成と昭和を交差する不思議な魅力が感じられます。
写真:安藤 美紀
地図を見るそれでは、実際に夜景電車がどんな様子なのかご紹介しましょう。
開催日は月2回、本数は1日2便。レトロな2両編成の8000系が夜景電車として利用されます。ただし、照明が落とされるのは後ろの車両。間違えて前に乗らないようにしてくださいね。
1便目の18時41分、吉原駅を出発すると、夜景鑑賞士の資格をもつ乗務員さんと、街歩きのボランティア団体「フジパク」の方が夜景の見どころを解説してくれます。初めて岳南電車に乗る人は、なるほど…の連続!
※日程は変動するため、その都度ホームページで確認するようにしましょう。
写真:安藤 美紀
地図を見る夜景電車は、走行中、上部の窓が開きます。走行し始めたら、座席に膝をつき、クルクル変わる夜景を楽しみましょう。まるで花やしきのジェットコースターのように、住宅や木のすぐ近くを通ることも…。車窓からの景色は、非日常感たっぷりでスリリングです!
写真:安藤 美紀
地図を見る「一旦目を閉じてください…それでは、ゆっくり目を開けてみましょう」
乗務員さんの合図に合わせて目を開くと、後方車両が真っ暗に。オレンジ色の非常灯だけがうっすら点灯しています。
「すごい!」と驚いていると、すぐ工場群が目の前に。
工場夜景といえば、川崎や四日市や北九州などきらびやかな工場夜景を思い浮かべる人が多いのでは?
富士市といえば、日本のトイレットペーパー50%を生産する「紙のまち」。岳南電車の周囲には製紙工場が集まっているため、ナトリウム灯といってオレンジ色の明かりが多くみられます。富士市の工場夜景は、派手さはないけれど、窓を流れるオレンジ色の灯りが幻想的。ここでは、しみじみした味わいを楽しみましょう。
写真:安藤 美紀
地図を見るしばらく走行すると、煙突が何本もみえてきます。煙突からモクモク白い煙のようなものが出ていますが、煙ではありません。実はこれ、お湯を沸かした水蒸気!富士市は公害を出さないクリーンな工場が多いのも特徴です。
写真:安藤 美紀
地図を見る岳南電車は、車両だけでなく踏切等の設備もレトロ。電子音ではなく、昔懐かしい「カンカンカン…」という踏切音も聞こえてきます。また、UCCの工場付近では焙煎されるコーヒー豆の香りも!五感で楽しめるのが夜景電車の大きな魅力です。
写真:安藤 美紀
地図を見る乗客のボルテージが最高潮になるのは、岳南富士岡駅〜比奈駅間。この間、すべて日本製紙富士工場の敷地内を通っていくため、工場のパイプラインがトンネルのように行き交います。
むき出しの配管が迫りくる瞬間は大迫力!特別に減速してくれますので、ダイナミックな景観をじっくり楽しみましょう。
写真:安藤 美紀
地図を見る帰り(岳南江尾駅→吉原駅)の車内では、富士市の紙を使ったランタンに灯りがともります。幻想的なランタンに囲まれて、闇と揺れを全身で味わうことができる夜景電車は、デートにもぴったり!
動画:安藤 美紀
地図を見るそれでは最後に、日本夜景遺産に認定された夜景電車の動画をお楽しみください。岳南電車は小さな小さなローカル線ですが、アイデア一つでこんなにも美しい世界が見られることを知っていただけると嬉しいです。
住所:静岡県富士市 岳南電車「吉原駅」から「岳南江尾駅」間
電話番号:0545ー33-0510(吉原駅)
期間:毎月2回開催(ホームページをご確認ください)
入場料:通常運賃 片道360円(1日フリー乗車券あり)
2018年07月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
安藤 美紀
1975年愛知県生まれ。東京や埼玉に移り住み、エンジニアと二足のわらじで「新しいトキメキと癒し」を求めて飛び回っていました。現在は、フリーライターとして独立。まったりした静岡に移住しています。非日常感…
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