生誕100年「いわさきちひろ、絵描きです。」東京ステーションギャラリーでちひろと出逢う

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生誕100年「いわさきちひろ、絵描きです。」東京ステーションギャラリーでちひろと出逢う

生誕100年「いわさきちひろ、絵描きです。」東京ステーションギャラリーでちひろと出逢う

更新日:2018/07/24 09:11

フルリーナ YOCのプロフィール写真 フルリーナ YOC 絶景・感動探究家、旅する音楽講師

2018年、生誕100年を迎える画家いわさきちひろ。子どもたち・可憐な花々・小鳥たち…。ちいさないのちを真っ直ぐに見つめたちひろの眼差しは、作品を通して今も、人々の心に様々な思いを届けています。今回の展覧会「いわさきちひろ、絵描きです。」は、いわさきちひろという“絵描き”と、その作品の細部に迫る魅力ある構成。人として絵描きとしてのちひろの歩み、その作品の魅力に出逢いに出かけませんか。

いわさきちひろのイメージの刷新を試みる展覧会

いわさきちひろのイメージの刷新を試みる展覧会

写真:フルリーナ YOC

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画家・いわさきちひろが大切に思い、その作品に描いた小さないのち。子どもたち、可憐な花々や小鳥たちの、いきいきとした姿や、ささやかな暮らし・・・その「Life」。

いわさきちひろ美術館では、生誕100年にあたる2018年、さまざまな角度から、いわさきちひろと私たちの「Life」を考える展覧会やイベントを企画。(写真『あめのひのおるすばん』原画)

いわさきちひろのイメージの刷新を試みる展覧会

写真:フルリーナ YOC

そして、いわさきちひの生誕100年を記念した特別展が、東京駅丸の内駅舎内“東京ステーションギャラリー”にて2018年9月9日まで、開催されています。

「いわさきちひろ、絵描きです。」という展覧会のタイトルは、ちひろが後に夫となる松本善明氏との初対面の時に自己紹介したときの言葉。

いわさきちひろのイメージの刷新を試みる展覧会

写真:フルリーナ YOC

この展覧会では、ちひろの作品の「子ども、花、平和」などのモティーフ、「かわいい、やさしい、やわらかい」といった、ちひろを語る際に偏りがちな観点を超えて、いわさきちひろという“絵描き”と作品の細部に迫ります。

知弘が「いわさきちひろ」になるまで

知弘が「いわさきちひろ」になるまで

写真:フルリーナ YOC

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展覧会の各章のタイトルもちひろの言葉からとられています。第T章「わたしの娘時代はずっと戦争のなかでした」ではちひろの幼少期から敗戦の1945年まで、「絵描き」いわさきちひろになる以前の岩崎知弘にせまります。

1918年に生まれた岩崎知弘は、恵まれた家庭環境の中で少女時代を過ごしました。

知弘が「いわさきちひろ」になるまで

写真:フルリーナ YOC

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知弘は子供のころから絵本が大好きで、毎日絵を描いて遊び、子供のころから絵画の才能の片りんを見せていました。何をやらせても器用な知弘は、裁縫や書の腕前もプロはだし。若い頃に、映画の主人公が着ていたドレスに似せて作ったワンピースや、書家として生きようと決心したこともある腕前の和仮名なども展示。

また、知弘が「どうしてこの人は私の好きな色ばかりでこんなにやさしい絵を描くのだろう」とおどろいた、マリー・ローランサンの作品も展示。ちひろの絵との表現上の特徴の共通点も興味深いところです。

知弘が「いわさきちひろ」になるまで

写真:フルリーナ YOC

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岩崎知弘は、14歳で画家・岡田三郎助に師事し、デッサンと油絵を学びます。ちひろは女子美術専門学校への進学を希望するも両親の反対を受け断念。その後20歳で婿養子を迎え結婚し旧満州に渡りますが、22歳の時夫の死により帰国。その年の12月には太平洋戦争が開戦します。

ちひろは帰国の翌年、画家・中谷泰に師事し再び油絵を描き始めます。ちひろの戦前期の作品は戦火の中で、そのほとんどが失われていますが、この作品「なでしことあざみ」は中谷泰のアトリエにあったため被害を逃れました。

絵描き“いわさきちひろ”のスタート

絵描き“いわさきちひろ”のスタート

写真:フルリーナ YOC

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第II章は「働いている人たちに 共感してもらえる絵を描きたい」。戦後、27歳のちひろは「平和のために圧迫された人民のために斗う(日記より)」をことを決意し、日本共産党に入党。ポスターや挿絵を描くところから戦後の活動を開始しました。

ちひろはその活動の中で「原爆の図」の作者、丸木位里・赤松俊子(丸木俊)夫妻に出会い、丸木家で開かれていた早朝デッサン会で夫妻の手ほどきを受けています。この作品はこの会でちひろがモデルとなった丸木俊の原爆の図デッサン。この頃のちひろのスケッチの線には強く押し付けた鉛筆の線と陰影のつけ方など、俊の影響が色濃く現れています。

絵描き“いわさきちひろ”のスタート

写真:フルリーナ YOC

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その後ちひろは、“日本童画会”に入会。新聞のカットや挿絵など多くの作品を手がけ、後に童心社編集長となる稲庭桂子の依頼でアンデルセンの紙芝居『お母さんの話』を描きます。この作品はその2年後に出版され、文部大臣賞を受賞。

絵描き“いわさきちひろ”のスタート

写真:フルリーナ YOC

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その翌年ちひろは松本善明と出会い結婚、その翌年には長男・猛を出産。この絵は生後3か月の息子を描いたスケッチで、柔らかな線が初々しい赤ちゃんの肌を見事に表現しています。スケッチの下には「私の可愛い猛」という文字が記され、ちひろの愛息への思いが溢れ、胸に迫ります。

ちひろはその後、『ひかりのくに』『こどものせかい』など絵雑誌の仕事や、絵本も描き始めます。この頃の作品は輪郭線がはっきりと描かれた油彩。第二回ニッポン展に出品した『眼帯』で、ちひろは平仮名表記の「いわさきちひろ」として出品。岩崎知弘からイワサキチヒロを経て、童画家「いわさきちひろ」として歩んでいくこととなります。

ちひろの作品技法の変遷をたどる

ちひろの作品技法の変遷をたどる

写真:フルリーナ YOC

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展示の第III章「私は、豹変しながら いろいろとあくせくします」では、作品ごとに多様な描き方を試んだ、ちひろの作品を、ことに「線」に注目して技法の変遷を辿ります。

まず会場に再現されたちひろの仕事机に注目。はじめは椅子に座る形の机で描いていたちひろですが、やがて立っても座っても描ける高さの机を使うようになります。このことにより、ちひろの描く線は、より自由に、その可能性を広げていきました。

ちひろの作品技法の変遷をたどる

写真:フルリーナ YOC

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ちひろの絵は油彩から、鉛筆と水彩・パステルと水彩・鉛筆と墨・パステル・鉛筆と水彩など様々な技法を辿ってゆきます。

この写真は絵本『となりにきたこ』の習作。この作品は当初、鉛筆と墨によるモノクロームの作品として構想され、完成間近まで制作されていましたが、物足りなさを覚えたちひろは、パステルで作りなおしました。習作で試行錯誤を繰り返しながら“豹変”していく表現が興味深い展示となっています。

ちひろの作品技法の変遷をたどる

写真:フルリーナ YOC

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そしてついに滲みを利用した水彩において、ちひろは独自の表現の世界に到達。また、戦争と子供を主題にした絵本『わたしがちいさかったときに』『かあさんはおるす』『戦火の中の子どもたち(写真)』は、ラフに引いた鉛筆の線と、ときに紙が剥がれるほど擦り付けられた消しゴムの線で描かれ、戦時下の状況や子どもの内面に迫ります。

絵がすべてを物語るちひろの作品、そして高畑勲氏によるインスタレーション

絵がすべてを物語るちひろの作品、そして高畑勲氏によるインスタレーション

写真:フルリーナ YOC

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ちひろの作品は、初期の不透明水彩に代えて50年代中頃から透明水彩を用いるようになります。広げた画面にタップリ水を含ませ、ムラを生じさせ表現する手法は、後年になるしたがって水のたゆたいに似た自由で豊かな表現に到達。

ちひろは赤ちゃんを描く時、10カ月と1歳は違うと言います。画家としての鋭い観察眼と、母としての豊かな感性。視覚・触覚を含めちひろは子供を観察し、肌の温もりや内面まで描きます。

「童画の世界からは、さし絵という言葉をなくしてしまいたい。童画は、けして ただの文の説明であってはならない」と語るちひろ。絵がすべてを物語るというちひろの理想は、絵で展開する絵本『あめのひのおるすばん(写真)』や『ぽちのきたうみ』などで見事に結実してゆきます。

絵がすべてを物語るちひろの作品、そして高畑勲氏によるインスタレーション

写真:フルリーナ YOC

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ちひろの絵本の世界入り込んでいくような空間を創っている、このインスタレーションは、映画監督の高畑勲氏の監修。

高畑氏が創作のうえで深い洞察を得てきた画家のひとりが、いわさきちひろ。高畑氏は「ちひろさんは、子どもがしっかりと内面をもって懸命に生きている自立した存在であることを私たちに気づかせ、見事に子どもの「尊厳」をとらえた稀有な画家です。」と語っています。(高畑氏は残念ながら展覧会開催を待たずして、2018年4月5日に逝去されました。)

絵がすべてを物語るちひろの作品、そして高畑勲氏によるインスタレーション

写真:フルリーナ YOC

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会場には、絵を見渡しながらちひろの本を読めるスペースも。また東京ステーションギャラリーのショップの展覧会オリジナルグッズも魅力!様々なちひろの絵の文具や小物などが揃っていますのでお楽しみに。

本展覧会の会場・東京ステーションギャラリーは、重要文化財指定の東京駅丸の内駅舎内にあります。展覧会と共に丸の内駅舎もまた見どころの一つですので、併せてお楽しみくださいね。

生誕100年「いわさきちひろ、絵描きです。」の基本情報

住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
会場: 東京ステーションギャラリー
電話番号:03-3212-2485
アクセス:東京駅丸の内北口改札前
開催期間:2018年07月14(土) 〜 2018年09月09(日)
休館日:月曜日(7月16日、8月13日、9月3日は開館)、7月17日(火)は休館
開催時間:10時〜18時。金曜日は20:00まで開館。入館は閉館の30分前まで

2018年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/07/13 訪問

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