写真:藤井 麻未
地図を見るコバルトブルーの海に白い砂浜、美しいカリブ海はまさに楽園そのものだ。カリブ海には最大の島キューバをはじめ、多数の島々が点在する。
中でもバハマはなんと700以上もの島々から成り立ち、驚くほどの透明度を誇る海や豊かな自然が残るカリブきってのバカンス地。首都ナッソーは主島であるニュープロビデンス島にあるが、楽園のようなこの場所も17〜18世紀には正真正銘「カリブの海賊」たちの本拠地としてあらゆる悪がはびこった。
写真:藤井 麻未
地図を見る海賊というと海のアウトロー的存在だというのが一般的なイメージだろう。しかし事実は少し異なる。16世紀大航海時代、南北アメリカを巡る富を独占していたスペイン、ポルトガルに対し、当時弱小国家だったイギリスやフランスが考えついたのが、なんと海賊による船の略奪だったのだ。
公式に略奪を許可する私掠状を発行し、海賊船を組織して文字通り力ずくでスペイン、ポルトガル船が積んだお宝を横取りし続けた。つまりこの時期の海賊たちは、いわば国に雇われた国家公務員のような存在だったのだ。海賊船の船長はイギリス人やフランス人であることが多いのはそのためだ。
写真:藤井 麻未
地図を見るしかし18世紀になりもはや海賊が不要となった途端、手のひらを返したかのように今度は彼らを取り締まる。行き場を失った海賊たちは、多くが本物の荒くれ者に成り下がった。バハマのナッソーは、そんな時代の荒くれ海賊たちの巣窟となった場所。「パイレーツオブナッソー」は、当時の海賊たちの様子や暮らしぶりをなかなかの凝った仕掛けで体験できる海賊ミュージアムである。
写真:藤井 麻未
地図を見るミュージアムに足を踏み入れると、そこは夜の帳が下りたナッソーの街。酒場は活気付き、酔いつぶれる海賊たちの姿もちらほら見える。海賊たちは航海の前にはこうしてナッソーの酒場で酒盛りをしたのだとか。ここでは当時のナッソーの様子がリアルに再現され、荒れ果てた街の喧騒に磯の香まで漂ってきそうだ。
写真:藤井 麻未
地図を見る続いてゲストは大きな海賊船に乗り込む。これはカリブ最恐と言われた通称「黒ひげ」ことエドワード・ティーチの船「リベンジ号(クイーン・アンズ・リベンジ)」。ちなみにティーチは、樽に剣を指して最後に首が飛び出す「黒ひげ危機一髪」というおもちゃゲームのモデルにもなり、数々の映画や物語で海賊のイメージともなっている海賊史上最も有名な人物だ。
写真:藤井 麻未
地図を見る船内では甲板を歩く海賊の足音が聞こえたり、船内での出来事を模したリアルな人形がディスプレイされていたり、なかなかスリリング。航海中の食卓を模したディスプレイなどもリアルだ。船内では主に寄港地の土地のもの、略奪した船にあった食料などを食べ、長期の場合は家畜を持ち込むこともあったのだとか。海賊料理としては「サルマガンディー」という、肉や野菜、魚、卵などを調理し大皿に盛ったものが一般的だったようだ。
リベンジ号をはじめ館内には、ところどころにクイズが散りばめられており、海賊にまつわる面白い豆知識を身につけることもできる。
写真:藤井 麻未
地図を見るリベンジ号を出ると、お次は当時の出来事を表したジオラマ展示が続く。1720年8月22日の午後7時30分、ナッソー港にいるのは2人の女海賊だ。彼女たちは史上最も有名な男装の女海賊アン・ボニーとメアリー・リードだ。メアリーは訳あって幼い頃から男として育てられた。軍での経験を積みオランダの帆船に乗っている時に、カリブを荒らしていた海賊ジョン・ラカムに捕獲される。男勝りなアンは、なんと男装して彼の仲間になる決断をした。
一方メアリーは船乗りの夫がいたが、ナッソーの酒場で出会った海賊船のイケメン船長ジョン・ラカムと恋に落ちて海賊になってしまう。男になった2人はラカムの船で、アンが美男子メアリーに恋をするという形で急接近。しかし、「実は俺も女なんだ…」と告白され、正体を明かして意気投合。以降男顔負けの女海賊として最恐コンビを組んで暴れ回ったという。
写真:藤井 麻未
地図を見る無人島にポツンとうなだれる海賊。この展示は、海賊界で最も恐れられた「島流しの刑」を表している。海賊船には様々な掟があり、それを破ると厳しい罰が待っていた。海賊だけあってサバイバルはできるかもしれないが、その後にやってくる長い孤独は死よりも恐ろしいものだった。島流しの際には恩情として一丁の拳銃が渡されるが、これは獲物を撃つためではない。孤独に耐えられなくなったその時に自らの命を断つためであった。
写真:藤井 麻未
地図を見るジオラマ展示を終えると、突如真っ暗な部屋に通される。突然大きな音とともに、海賊船に襲われる。そう、ここは1717年、アンティグアに向かう帆船の中だ。水平線に浮かんだ不気味なマストは「悪魔の化身」と恐れられたカリブ最恐の海賊エドワード・ティーチの船。ここではハラハラドキドキ、ティーチに襲われる帆船の疑似体験ができる。
写真:藤井 麻未
地図を見る続いては、当時その名をとどろかせた名海賊たちのプロフィールと海賊旗がズラリと並ぶコーナーへ。ワンピースなどのアニメやゲーム、ハリウッド映画などで目にする海賊たちは、実在した海賊をモチーフとしていることも多い。
まずは、海賊界きっての伊達男ジョン・ラカム。小型船を俊敏に操り相当稼いだと言われている。女海賊アン・ボニーを虜にした男としても有名だ。オシャレにも気を使い、当時最新ファッションだったインド産のキャラコ(白木綿)をサラリと着こなし「キャラコ・ジャック」とも呼ばれている。
また、交差したカトラスの上にドクロという海賊旗のデザインは秀逸で、今でも数々の海賊モチーフや作品に使われている。映画パイレーツオブカリビアンのブラックパール号の海賊旗も彼のデザインだ。
写真:藤井 麻未
地図を見る「ブラック・バート(黒い貴族)」と呼ばれたバーソロミュー・ロバーツは一風変わっている。真紅の宮廷服に羽飾りのついた帽子、黒いコートを羽織り、胸にダイヤの十字架を下げたその風貌はまるで貴族のようだったのだとか。
船での掟も一線を画す。賭博や暴行禁止、夜8時消灯、賛美歌奨励など、およそ荒くれ者の海賊のイメージとはかけ離れている。褐色の肌をした美男子と言われ、見た目だけでなくカリスマ性も備えたイケメン海賊だった。
写真:藤井 麻未
地図を見るミュージアムはこの他海賊討伐に使われた拷問の展示やギフトショップ、レストランも併設し、カリブの海賊を存分に味わうことができる。リゾートとして人気のバハマだが、カリブに来たならぜひ海賊についても知ってみて欲しい。時代に翻弄されたカリブの海賊たち、美しい大海原には未だ彼らの夢やロマンが漂っている。
住所:King and George St.Downtown, Nassau, Bahamas
電話番号:+242-356-3759
営業時間:月〜土8:30〜17:30/日9:00〜14:00
アクセス:ストローマーケットから徒歩すぐ
2018年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/10/9更新)
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