鳥海山には多くの登山口がありますが、最もポピュラーなのが公共交通機関を使える、秋田県側の「鉾立(ほこだて)」から登るルート(頂上往復約9時間)です。
JR象潟(きさかた)駅から鳥海山登山のための乗合登山バス「鳥海ブルーライナー(※要事前予約)」が6〜10月の間に運行されています。これで登山口である鋒立までスムーズにアクセスできるうえ、日帰りも可能なバスの時間設定もあり、初めての鳥海山登山にはおススメのルートです。
もちろん鳥海山登山のためには早朝に象潟駅を出発しなければなりませんが、前泊は不要です。東京方面からは「ドリーム鳥海号」という夜行バスが運行されており、早朝に象潟駅に到着するからです。
まさに鳥海山登山のための交通機関の連携といえますね!
なお往復9時間の行程です。人気のルートなので道迷いは少ないですが、登山初心者など山歩きに慣れていない方は長時間歩行なので無理せず、山中または登山口周辺で宿泊施設(詳細は最終段落に記載)の利用を検討してくださいね。
鉾立にはビジターセンターやトイレ、レストハウスもあり施設は充実していますが、早朝は開いていませんので要注意。道中の小屋付近には雪解け水を利用できるところもありますが、基本的に飲料水(夏場なら3Lは欲しい!)はあらかじめ持って行きたいところ。
そのため、ここに来る前に前述の象潟駅付近の自動販売機やコンビニ(駅から徒歩15分ほど歩きますが、夜行バスから鳥海ブルーライナーの接続には時間的余裕があるので問題ありません)で必ず飲料や食料を手に入れておきましょう。飲料は道中の山小屋で買うと高いですし、何よりも夏場は汗をかきますから。
ちなみに登山届けは鉾立登山口のそばで提出できますので忘れずに記入してください。日帰りも可能とあって荷物は少なめの登山者が多いですが、道程は本格的な登山なので登山靴や雨具など基本装備も確認してから登りはじめましょう。
逆に鉾立から象潟駅方面に鳥海ブルーライナーで戻る際ですが、終点は象潟駅ではありません。東北地方最大級の道の駅である「ねむの丘」まで連れて行ってくれます。
「ねむの丘」には展望温泉や足湯に加え、名物岩ガキを食せる物産館、レストランもあり下山後の疲れた肉体を癒すには最高の場所です。6Fの無料の展望塔からは太平洋に沈む美しい夕日を眺めることができ、ぜひとも訪れて欲しいスポットです。
象潟駅には路線バスで戻れますし、徒歩でも20分程度しか離れていませんので、のんびりと堪能できますよ。
鉾立から登りはじめてまず驚くのが見晴らしの良さです。通常はかなり登らないと森林限界に到達せず、なかなか視界が開けないのですが、鳥海山は違います!
ご覧の通りの見晴らしで、道も整備されており道迷いの心配もありません。途中雪渓を横断しますが、夏場なら軽アイゼンも不要です。ただし身を隠す日陰が少ないので、日焼け対策は万全に!
歩き始めて約2時間で御浜小屋に到着です。小屋の北側には遮るもののない大展望。手前の高山植物から奥に見える稲倉岳、さらにその奥の水平線と絵に描いたような風景が待っています。
さらに御浜小屋の南側には雪解け水をたたえた鳥海湖が高山植物に囲まれて青く輝いています。山の風景は天候に左右されますが、帰路もここを通りますので、このフォトジェニックな風景を拝むチャンスは日帰り登山の場合でも二回あります。もちろん御浜小屋に宿泊すればそのチャンスはさらに広がります。
御浜小屋から50分前後で七五三掛(しめかけ)という開けた場所にでます。ここでは頂上に向かうルートを選べます。ひとつは雪渓沿いの谷を行く「千蛇谷ルート」。もうひとつが尾根伝いに歩く「外輪山ルート」。
行きと帰りで違うルートをとれますのでどちらを選んでもOKです。今回は早く頂上直下の御室小屋に着く千蛇谷ルートから登ってみましょう。夏でも涼しげな雪渓を通るルートです。雪深い東北の山らしい雪渓は鳥海山のトレードマークでもあります。
千蛇谷ルートでは雪渓の脇にある登山道を歩けますので、ここでも軽アイゼンなどは不要です。ただ季節によっては雪が多いケースも想定されますし、帰りのコースに利用する際に写真のように雪渓を下ることもできますのでアイゼンは自己判断になります。鳥海国定公園観光開発協議会のホームページなどで登山道の状況をあらかじめチェックしておくのも大切です。
七五三掛から千蛇谷を登ること約1.5時間で頂上直下の御室小屋もとい「鳥海山大物忌(おおものいみ)神社」に到着します。鳥海山は活火山であり、恐れをもって山岳信仰の対象となっていたわけです。
そしてその火山活動が生んだ鳥海山のピークが背後の「新山ドーム」です。1800年ごろに隆起した、鳥海山で最も高い場所にこの神社を基点にしてさらに登ります。ここがピークではありませんよ!
溶岩で盛り上がった新山は今までの鳥海山の風景とは異なる岩の世界。岩の切れ目(切り通し)を歩き、手も使いながら岩山をよじ登っていきます。切り通しから上を見上げると別世界に迷いこんだような錯覚に陥りますね。
岩山を登ること約20〜30分でついに新山の頂上に到着です。遮るもののない大展望と溶岩が固まった巨石が連なる風景が楽しめますが、頂上は意外に狭いので、結構混み合います。ぶつかって落ちないよう気をつけましょう。
新山からの帰りは行きに通った切り通しとは違う「胎内くぐり」という岩のトンネルを通って戻りましょう。行きと帰りで異なるルートを取ることで、新山の登り下りの流れがスムーズになります。神社(御室小屋)もこのルート(登りに切り通し、帰りに胎内くぐり)を推奨しています。
なお、新山へはリュックを基部の御室小屋に置いていったほうがラクに登れますのでおススメです。
帰りは行きとは異なる「外輪山ルート」を通って、御浜小屋方面へ戻りましょう。外輪山には標高2,229mの七高山があり、岩だらけの新山ドーム全体を眺めることができます。戻るルートから少し外れますが、せっかくなのでピークを踏んでおきたいところですね。
帰りの外輪山は気持ちの良い稜線上を歩きます。途中の伏拝岳に分岐があり、誤って「湯の台」方面に下りないよう気をつけましょう。
なお鳥海湖や御浜小屋付近では鉾立ではなく「吹浦(ふくら)口」へ降りる道標を見かけると思います。吹浦口は別名「太平口」と呼ばれ、前述の鳥海ブルーライナーの乗り降りが可能です。ただし、鉾立と異なり施設が何もないので、早くに下山しても炎天下の道路でただ待つだけになります。太平口を利用したい場合は登りに使用するのがベターでしょう。
また次々に変わる美しい風景に見とれて高山植物を見落とさないように注意が必要です。黄色いニッコウキスゲや青いハクサンシャジンに混じって紫の花が咲いていたら、それが鳥海山の固有種「チョウカイアザミ」です。しおれているかのように下向きに咲くので写真が撮りづらいですが、逆に分かりやすいとも言えますね。
なお、今回紹介した鉾立〜新山のルートは往復約9時間の行程です。コースタイムどおりに歩ける方なら早朝に鳥海ブルーライナーで来て、夕方に再びそれに乗って象潟駅方面に戻る日帰り登山が楽しめます。
登山初心者や歩行スピードに自信のない方は前述の御浜小屋や御室小屋(いずれも7月 〜 9月の期間限定営業)に宿泊するか、または太平口付近にある国民宿舎(太平山荘)や鉾立にある鉾立山荘を利用するのが良いでしょう。
それでは気をつけていってらっしゃいませ〜
住所:にかほ市象潟町小滝字鉾立(鉾立ビジターセンター)
電話番号:090-2021-0270(鉾立ビジターセンター)
アクセス:JR象潟駅から車または登山バスで約40分(鉾立登山口)
2008年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください
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(2024/4/19更新)
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