写真:木村 岳人
地図を見る讃岐遍路道が始まるのは、愛媛県・徳島県・香川県の三県境に鎮座する第66番札所の雲辺寺から。その山の頂から観音寺市内へと降りる下山道が、古道として今に残されています。
雰囲気たっぷりな山道には一定間隔で距離を示す地蔵丁石が置かれており、この道が昔から使われてきた古道であることをハッキリと伝えています。これまで数多の遍路が歩き続けてきた足跡を辿れるなんて、実にロマン溢れることではありませんか。
写真:木村 岳人
地図を見る途中に立っている道標には「小松尾寺道」と刻まれているのですが、これは次なる第67番札所の大興寺へと続く道であることを示しています。大興寺は小松尾という集落にあることから地元では小松尾寺と呼ばれてきており、四国遍礼霊場記などの古書にも小松尾寺の名で記されているのです。
また道沿いには、この地で行き倒れた遍路を供養した「遍路墓」も存在します。四国遍路が身に着けている白衣は死に装束。いまでこそレジャー感覚で楽しめる四国遍路ですが、かつては死を覚悟した上で臨む、厳しい修行の旅でした。
<小松尾寺道の基本情報>
所在地:香川県観音寺市粟井町
アクセス:雲辺寺ロープウェイ「山頂駅」より徒歩約10分
写真:木村 岳人
地図を見るかつて空海が岩窟にて学問に励んだとされる第71番札所の弥谷寺。その山門からは第72番所の曼荼羅寺へと向かう古道が存在します。今にまで残る四国遍路の古道は開発の手が及びにくい山道であるのがほとんどですが、ここは比較的アップダウンの少ない、貴重な平地の遍路道です。
木々に囲まれた未舗装路は清々しく、しっかり踏み慣らされている平坦な道なのでウォーキングや森林浴にも適していると言えるでしょう。
写真:木村 岳人
地図を見るこの道もまた所々に石仏が祀られており、歴史の深さを感じさせられます。江戸時代に記された『四国遍礼名所図会』や、明治時代に作成された地形図と比較してもほとんど変わっておらず、昔の遍路道がそのまま維持されているのです。
途中からは森林が竹林へと変わり、差し込む日差しが独特の風情を醸しています。1kmに満たない短い区間ではありますが、進んでいくたびに目に飛び込んでくる景色がころころ変わる、まったく飽きのこない遍路道です。
<曼荼羅寺道の基本情報>
所在地:香川県三豊市三野町大見
アクセス:JR予讃線「みの駅」より車で約5分、徒歩約45分
写真:木村 岳人
地図を見る瀬戸内海に張り出した山々から成る五色台(ごしきだい)。その西部には第81番札所の白峯寺、東部には第82番札所の根香寺(ねごろじ)の境内が広がっており、その間を昔ながらの遍路道が繋いでいます。
白峯寺の山門から始まる道筋には石畳が敷かれ、また白峯寺の歴代住所の墓地や、元応4年(1321年)の銘がある摩尼輪塔(まにりんとう)が残っているなど、讃岐遍路道の中でも特に歴史の深い道だと言えます。
写真:木村 岳人
地図を見る50丁から始まる丁石地蔵を辿って歩いていくと、残り34丁の地点に弘法大師が白峯寺を開いた際に掘ったとされる「閼伽井(あかい)」が存在します。1m四方の浅い井戸には澄んだ水が湛えられており、かつては多くの遍路の喉を潤していたことでしょう。
残り19丁の地点では、五台山の南麓にある第81番札所の国分寺から上ってくる遍路道と合流します。そこは石垣で整地された広場となっており、発掘調査によってかつては小堂や休憩所が存在したことが分かっています。非常に立派な地蔵菩薩坐像を中心に、道標や遍路墓などの石造物も多く、かつては多くの人々で賑わっていたことが偲ばれます。
<根香寺道の基本情報>
所在地:香川県坂出市青海町、 高松市中山町
アクセス:JR予讃線「坂出駅」より車で約20分、琴参バス「王越・大屋富」行きで約20分「高屋」バス停から徒歩約1時間
写真:木村 岳人
地図を見る四国八十八箇所霊場最後の札所である第88番札所の大窪寺は、前山ダムから女体山を越えた山中に位置しています。現在、大窪寺までのルートは複数存在しますが、江戸時代からの旧遍路道を踏襲しているのは林道花折線です。
しかしながら、その途中には残土処分場があり、巨大なダンプトラックが行き来していて歩くのに適しているとは言えません。そこで林道を迂回するルートとして、近年地元の方々によって整備されたのが「花折山遍路道」です。
急斜面を尾根まで一気に上がる道のりは決して楽なものではありませんが、尾根沿いには不思議な形をした岩がゴロゴロと転がっており、神秘的な雰囲気を醸しています。まだ歴史の浅い道ではありますが、遍路の安全を願う地元の方々によって拓かれた、まさにお接待の精神を体現した遍路道といえます。
<花折山遍路道の基本情報>
所在地:香川県さぬき市前山
アクセス:JR高徳線「志度駅」より車で約30分
写真:木村 岳人
地図を見る四国遍路の最大の特徴は環状の巡礼路という点です。つまり道の終端が存在せず、継ぎ目なく周回が可能であるということ。第88番札所の大窪寺からは第1番札所の霊山寺へ至る遍路道が続いており、そのうち香川県と徳島県の境である大坂峠に昔ながらの道が残されているのです。
この大坂峠は讃岐国と阿波国を繋ぐ讃岐街道にあたり、遍路以外にも数多くの往来がある主要道路でした。現在遍路道として利用されているルートは、明治8年(1875年)に開通した旧道です。それ以前は歩行者しか通ることができない険しい山道でしたが、この道の開通によって牛馬による荷物の搬送が可能になりました。
<大坂峠の基本情報>
所在地:香川県東かがわ市坂元
アクセス:JR「讃岐相生駅」より徒歩約20分
今回は香川県の西端から東端まで、5箇所の讃岐遍路道をご紹介しました。いずれも風光明媚かつ個性豊かな道ばかりで、とても歩き甲斐があります。数多くの魅力的な道に出会うことができる、四国遍路に挑戦してみてはいかがでしょうか。第88番札所まで歩き通し、結願した時の達成感は他にたとえようがありませんよ。
2018年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/4/19更新)
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