長崎・五島 野崎島の旧野首教会へ、潜伏キリシタンらが去った世界遺産の島

長崎・五島 野崎島の旧野首教会へ、潜伏キリシタンらが去った世界遺産の島

更新日:2018/09/05 17:07

塚本 隆司のプロフィール写真 塚本 隆司 ぼっち旅ライター
「旧野首教会」が建つ「野崎島」。世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」のひとつ「野崎島の集落跡」だ。長崎・五島列島には大小140もの島々がある中、人が住む島は約30島ほど。野崎島は、ほぼ無人の島となっている。
島人らが暮らした家屋は朽ち果て、段々畑は開墾の形跡をとどめるばかり。今や自然に返ろうとしている祈りの島。潜伏キリシタン集落跡で、旧野首教会が旅人を待っている。

昨今の状況により、施設等の営業日や営業時間などに変更が生じている場合があります。各種報道機関の発表、施設や各自治体のホームページなどで最新情報をご確認ください。また、Go To トラベルキャンペーンについては全国で一時停止となっています。お出かけの際はしっかりと新型コロナウイルスの感染予防および拡大防止対策をして行動しましょう。(トラベルjp)

野崎島へ行くなら、7日前までに事前連絡を

五島列島の北部、小値賀(おぢか)島から東に2キロメートル、海を渡ると野崎島がある。南北に約6.5キロメートル、東西約2キロメートルの急峻な斜面に覆われた島だ。唯一といえる東側のなだらかな場所に、神道と仏教徒が暮らすが野崎集落あった。

19世紀に入り、九州本島から五島へと逃れてきたキリシタンらが急峻な地形を開墾し、野首と舟森の集落が生まれる。人口のピークは、1960(昭和35)年ごろ。680人ほどが暮らしていたが、今はほぼ無人だ。
写真は、渡船の窓越しに見た旧野首集落。

野崎島へ行くなら、7日前までに事前連絡を

写真:塚本 隆司

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渡船からでも急峻な地に開かれた石積みの段々畑跡の様子がわかる。一見のどかな島の風景も、キリシタンらが生き抜くために身につけた開拓の跡。想像を絶する苦労の末に生まれた姿だ。

野崎島へ行くなら、7日前までに事前連絡を

写真:塚本 隆司

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野崎島に渡る一般的なルートは、小値賀島を経由する。小値賀島へは、佐世保港から海上を西へフェリーで約3時間、高速船で1.5時間ほど。博多港や五島列島の福江島・中通り島などからのルートもあり、島旅の中継地ともいえる。

野崎島へは、小値賀島から1日往復2便の町営船「はまゆう」の利用が基本。日曜・祝際日や時期により増便される。

野崎島へは、安全管理上必ず7日前までに「おぢかアイランドツーリズム」に予約が必要だ。注意事項やアドバイス、天候の影響など渡航困難時対応もしてもらえるので心強い。

<おぢかアイランドツーリズム>
住所:長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷2791-13 小値賀港ターミナル内
連絡先:0959-56-2646
営業時間:9時〜18時、年末年始を除き無休

<町営船「はまゆう」>
料金:片道500円、小学生以下250円
便数:1日往復2便
※発着時間や運休日、増便情報など、詳しくはおぢかアイランドツーリズム公式ページを参照。

野崎島へ行くなら、7日前までに事前連絡を

写真:塚本 隆司

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野崎島を楽しむために知っておくべきこと

野崎島を楽しむために知っておくべきこと

写真:塚本 隆司

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島に渡れば「野崎島ビジターセンター」へ立ち寄り、『野崎島マナーガイドブック』(小値賀町発行A6版冊子、無料)を手に入れよう。島内でのルールやマナー、緊急時の連絡先などが書かれている。

野崎島を楽しむために知っておくべきこと

写真:塚本 隆司

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野崎島内での移動は徒歩のみ。旧野首教会までは約20分だ。アップダウンもあり歩きやすい服装で訪れよう。島内を巡るなら登山スタイルの方がよい。スマホも圏外となるエリアが大半。飲食施設やコンビニもないのでドリンクや食事は持参し、ゴミは持ち帰ること。

他にも旧野首教会内については、事前申請のない撮影は不可、内陣(一段高くなっている祭壇付近)に入らない、飲食禁止など、守るべきルールがいくつかある。

できることなら、ガイドツアー(有料、事前予約)をオススメしたい。潜伏キリシタン関連遺産は、見ただけでは分からないストーリーや心で感じる何かを求めるのが醍醐味(だいごみ)なのだ。

ほぼ無人の野崎島が見せる驚きの風景

ほぼ無人の野崎島が見せる驚きの風景

写真:塚本 隆司

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最初に目にするのは、野崎集落。島は太古から周辺地域の信仰を集めた沖ノ神嶋(おきのこうじま)神社の神官や氏子、仏教徒が暮らしていたが、木造家屋の大半が倒壊し異様な雰囲気が漂っている。

ほぼ無人の野崎島が見せる驚きの風景

写真:塚本 隆司

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高台に出ると、棚田と平野部に作られた野崎集落の跡が望める。かつての集落の姿に思いをはせたい。

ほぼ無人の野崎島が見せる驚きの風景

写真:塚本 隆司

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旧野首教会へと向かう坂、野崎島中央部のくびれ(野首)にあたる場所を越えれば、眼下に青く澄んだ海と白砂の浜の野首海岸が見える。その美しさに、思わず息をのむ。道の先に旧野首教会が見えてくる。

日本とは思えない、旧野首教会がある風景

日本とは思えない、旧野首教会がある風景

写真:塚本 隆司

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野首集落は、九州本島の外海(そとめ)地域(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産「外海の大野集落」「外海の出津集落」)から五島を経て逃れてきたキリシタンが表向きは仏教徒や神道の氏子として、急斜面を開拓して築いた集落だ。

今はポツリと建つ旧野首教会の姿が美しく、五島のなかでも注目度が高いスポットになっている。空と海と緑の丘陵のなかに、ヨーロッパの城郭を思わすような石積みの階段とレンガ造りの教会。この風景に会いたくて訪れる人がいるのも納得だ。

日本とは思えない、旧野首教会がある風景

写真:塚本 隆司

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潜伏時代の教会は民家の粗末な一室だったろう。明治になり信仰表明ができると、教会の建設に動いた。

野首の信徒らが望んだのは「壊れない教会」。多くの教会建築に携わった鐵川與助(鉄川与助)に設計・施工を依頼した。与助は仏教徒であったが、その技術と人柄はキリシタンからも尊敬されていたという。

海風の強いこの地で、信徒らの願いをかなえるにはレンガ造りしかなく莫大な費用を必要としたが、貧しいながらもキビナゴ漁などで得たわずかな収入を工面するからと頼まれた。信徒らが、ひとつひとつレンガを運び積み上げ、苦労の末に完成させた野首教会。与助にとっても初めてのレンガ造りの教会だった。

「教会」というのは、祈りをささげる場所や信徒たちの組織(講)の全てを含めた呼び名。建物のことではない。「壊れない教会」は、建物はもちろん信徒らの絆、子や孫の代まで残したい思いが詰まった願いそのものといえる。

日本とは思えない、旧野首教会がある風景

写真:塚本 隆司

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都市部の大きな教会に入ると圧倒されるほどの迫力があるが、ここは違う。温かくて、ほっとひと息つける空間といった方がよい。人に見せる物ではなく、祈りをささげ、やすらぎを得るために造られたと思えば当然かもしれない。

昭和40年代の高度成長期になると、産業もない不便なこの地では生活が困難になり、これまで守ってきた組織は壊れた。約150年の信仰の地を離れる決断をした時、父母・祖父母が苦労して造った教会を離れる時、どれほどつらく悲しかったことだろうか。
キリシタンでなくとも、そっと黙祷をささげたくなる。

※教会内の撮影は原則禁止(要事前許可)

宿泊もできる野崎島、旧野首教会以外の見どころ

宿泊もできる野崎島、旧野首教会以外の見どころ

写真:塚本 隆司

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旧野首教会の下に元・小中学校跡を利用した野崎島自然学塾村がある。炊事棟や浴室などがある宿泊施設だ。食事は食材持ち込みで自炊。日帰り利用も可能だ。

夏は野首海岸での海水浴と合わせて利用する人も。テントサイトもあるので、じっくり野崎島を楽しみたい人にオススメだ。島から見える朝日が美しい。
写真は野崎島自然学塾村から見た旧野崎教会。

<野崎島自然学塾村>
宿泊費:3,500円(税別)〜
日帰り利用:1,000円(税込)
予約:7日前までに予約
問い合わせ先:NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会

宿泊もできる野崎島、旧野首教会以外の見どころ

写真:塚本 隆司

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ガイドツアー(有料)に申し込めば、他のスポットも楽しめる。島の南端の舟森集落は、明日処刑されるという3人のキリシタンが回船業者に助けられ、かくまわれたことに由来する。
写真は高台から望む舟森集落跡。

宿泊もできる野崎島、旧野首教会以外の見どころ

提供元:(C)おぢかアイランドツーリズム

http://ojikajima.jp地図を見る

島の北端には沖ノ神嶋神社と「王位石(おえいし)」と呼ばれる巨石がある。野崎島の原点ともいえる場所だ。ガイドなしでも行けるのは、野崎島ビジターセンター裏の「沖ノ神嶋神社神官屋敷」。遥拝所もある。島内に400頭以上いる野生の鹿は、神の使いといわれている。

潜伏キリシタンが過ごした150年が詰まった「野崎島集落」

野崎島の風景は、まるで異国に来たようで確かに美しい。ただ、美しい風景を眺めるだけでは、本当のすごさを見逃してしまうのが「野崎島」なのだ。太古からの神を祭る島に逃れるように住み着いたキリシタンたち。こんな神秘的な島だからこそ、キリシタンが潜伏できたのかもしれない。
どんな苦難の物語があったのか。想像しながら訪れてほしい。

2018年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

取材協力:長崎県

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/07/20 訪問

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