東京「ファーレ立川」パブリックアートの街が楽しい!

東京「ファーレ立川」パブリックアートの街が楽しい!

更新日:2019/01/08 12:18

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人
ファーレ立川は、JR立川駅北側にひろがるパブリックアートエリアです。ホテル、デパート、映画館、図書館、オフィスビル等の11棟のビルの谷間に109点のアート作品が配置された街なか美術館。ファーレとはイタリア語で「創造する」の意で、もとは米軍基地跡地の再開発により、基地の街から文化の街への生まれ変わりを果たすべく誕生したエリアです。さあ、街なかに点在する、楽しい作品たちに会いに出かけましょう。

「世界を映す街」−酋長たちの勢ぞろい

「世界を映す街」−酋長たちの勢ぞろい

写真:今村 裕紀

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JR立川駅北口から伊勢丹を左手に見ながらペデストリアンデッキ(渡り廊下)を進み、タカシマヤが現れると、そこからファーレ立川のエリアが始まります。デッキを降りると、迎えてくれるのがこちらの作品です。

ナイジェリアのアーティスト、サンデー・ジャック・アクバン作:オブジェ<見知らぬ人>

「世界を映す街」−酋長たちの勢ぞろい

写真:今村 裕紀

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正装をしたカラフルなナイジェリアの14人の酋長たちが勢ぞろいします。これだけ揃うと壮観です。

ファーレ立川のアートは、3つのコンセプトに分けられます。そのひとつが「世界を映す街」。多様な人間のありかたを映し出すために、多様な地域のアーティストにより、多層な表現がなされていて、そのひとつがこの作品です。

確かに、私たちにとっては<見知らぬ人>であるばかりか、見知らぬ世界そのものです。

「世界を映す街」−酋長たちの勢ぞろい

写真:今村 裕紀

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タカシマヤを背に植栽のなかに「ナイジェリア」が強烈に表わされています。

人体がそのままアートになるというのも珍しいとは思いませんか?それもナイジェリアの一部の地域では、生前の晴れ姿を死後、彫刻作品として墓所に建立するという慣習から発想された作品だからなのです。

「世界を映す街」――オブジェ

「世界を映す街」――オブジェ

写真:今村 裕紀

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タカシマヤのオープンスペースに設置された、高さ12.5メートルの巨大な植木鉢。フランスのジャン=ピエール・レイノーによるオジェ。でも、その作品のタイトルは<オープンカフェテラス>。先の酋長たちの<見知らぬ人>のすぐ近くにあり、その作品とともにファーレ立川のランドマーク的な存在になっています。

庭に置かれた巨大な植木鉢。白いタイル。明解な赤と白のコントラスト。オープンスペースを占有するこのアートには、もの言わせぬ圧倒感があります。

「世界を映す街」――オブジェ

写真:今村 裕紀

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ドイツのマーティン・キッペンベルガーの作品<街灯>です。この作品は何者であり、何を手にし、何をして、何を表現しているのでしょうか?「これは悪い文明のなかで悪い子になった彼自身にサンタクロースが怒っている作品」と作者。つまり、これはサンタクロースなのですね。いずれにしても、愉快で可愛らしい街灯です。

「世界を映す街」――オブジェ

写真:今村 裕紀

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ファーレ・イーストビルの角地に設置された作品。アメリカ在住のクレス・オルデンバーグ作:オブジェ<リップスティック>。リップスティックの蓋が外れて、口紅が毒々しく流れ出ているような感です。

作者のメッセージによると、この作品は、1967年に開かれたマリリン・モンローの展覧会のために作られ、その後、ファーレ立川用に若干の手直しがなされたものです。色艶やかで、ちょっとドキッとさせられる作品です。

機能するアートーベンチ

機能するアートーベンチ

写真:今村 裕紀

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次のコンセプトは、「機能(ファンクション)を美術(フィクション)に!」です。

このエリア内で、機能あるものを美術作品にします。その対象は、換気口、ベンチ、壁、送水管、照明、サイン、配電盤、デッドスペース、車止めとさまざまです。そのなかで、最初の作品は、広場になくてはならない「ベンチ」です。

青いベンチに4匹の蛇が絡みます。ガウディの影響を受けた女流作家、フランス人、ニキ・ド・サンファルの作品、ベンチ<会話>です。この彩色で、少し幻想的ですから、とにかく目を引きます。題名は<会話>なのですが、並んで会話することは出来ません。背中合わせの会話ですね。先の赤い植木鉢の題名もそうですが、現代アートには、時に作者の意図を考えさせられる作品がありますね。

機能するアートーベンチ

写真:今村 裕紀

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チェコの立体作家、アレシュ・ヴェゼリーによるベンチ<ダブルベンチ>。ブランコのようなベンチです。石とステンレスでできているので、重量感と冷たさを感じさせますが、座面のスプリングが、妙な感覚の安定感で包み込んでくれます。あえて<ダブルベンチ>と名付けられていますから、恋人たちにぴったりですね。

機能するアートーベンチ

写真:今村 裕紀

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縦に輪切りにされた自動車。アメリカのヴィト・アコンチによるベンチ兼車止めの作品。歩道にあって、ベンチであり、車止めの機能も果たします。しかも、この自動車は、ご覧のように地面と自動車の縦の色が呼応していて、歩道が変身した姿として表現されています。いずれにしても、かなりインパクトのある楽しい作品です。

機能するアート―-換気口と車止め

機能するアート―-換気口と車止め

写真:今村 裕紀

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「機能(ファンクション)を美術(フィクション)に!」、ベンチに次いでの対象は、換気口と車止めです。

ビルの換気口が、繊維強化プラスティックとステンレスでつくられた4.5メートルの買物バッグで覆われています。シンガポールのタン・ダ・ウ作:換気口<最後の買い物>。街なかで設備がアートになってくれていると、ちょっと贅沢な感じがしませんか?

機能するアート―-換気口と車止め

写真:今村 裕紀

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伊藤誠作<換気口>。この作品も黒い換気口を鮮やかに装飾しています。しかも階段下の少し暗めのデッドスペースが、この作品によってかなり雰囲気が変わっています。

機能するアート―-換気口と車止め

写真:今村 裕紀

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この「ファーレ立川」には「車止め」の作品が数多くあります。そのなかで代表してご紹介したいのがこちら。

オーストラリア在住の芸術家ホセイン・ヴァラマネシュによる、車止め<きみはただここにすわっていて。ぼくが見張っていてあげるから>

椅子とスリッパ。卵型の石の上には本が。スリッパからは人影がのびています。日常生活が歩道の上に再現されて車止めとして機能しています。こうしたさりげないアートが、街に溶け込んでいる光景って素敵ですよね。

驚きと発見の街――俯瞰する街アート

驚きと発見の街――俯瞰する街アート

写真:今村 裕紀

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最後のコンセプトは、「驚きと発見の街」です。

街なかでの驚きと発見には、もちろん、個々の作品の魅力や配置などもありますが、ご覧のように街自体がアートによってデザインされています。この視界にいくつのアートが潜んでいることでしょうか?ここにアートによる街が出来上がっています。アートと調和した街があることの驚きと発見が、ここにあります。

驚きと発見の街――俯瞰する街アート

写真:今村 裕紀

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街を繋ぐペデストリアンデッキがアートで彩られています。ビルの合間への赤いゲート。欄干部分に取り付けられた金色のラッパ状のオブジェ。どこにでもある風景が、アートで装われて、ちょっと違った光景に創り変えられています。

驚きと発見の街――俯瞰する街アート

写真:今村 裕紀

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最後の風景は、初めにペデストリアンデッキを降りた場所からの俯瞰です。14人の酋長たちが見えます。赤い植木鉢が存在感を示し、その手前には、夜になるとネオンが点灯して鮮やかな駐輪場のサインとなる自転車のオブジェが控えます。

こうしてみると、作品が緻密に計算されて配置されているかのようです。このワンショットもファーレ立川の紛れもないアート風景の一部なのです。

ファーレ立川には109の作品が配置されています。今回、個別には10の作品をご紹介したに過ぎません。まだ、100近い作品があります。ぜひ、ファーレ立川に出かけて、ご自分の感性でひとつひとつの作品と向き合って下さい。そうして、このアートの街全体の素晴らしさを体感してみて下さい。

ファーレ立川の基本情報

電話番号:042-523-2111(ファーレ立川アート管理委員会事務局(立川市地域文化課)) 
アクセス:
JR立川駅北口、多摩モノレール立川北駅より歩行者デッキで直

徒歩でJR立川駅北口から3分、立川北駅から2分

2019年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認下さい。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2018/08/23 訪問

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