本当の「あお」に出会う。生誕110年「東山魁夷展」京都国立近代美術館

| 京都府

| 旅の専門家がお届けする観光情報

本当の「あお」に出会う。生誕110年「東山魁夷展」京都国立近代美術館

本当の「あお」に出会う。生誕110年「東山魁夷展」京都国立近代美術館

更新日:2018/09/26 13:31

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

「国民的風景画家」と謳われ、作品に東山ブルーと呼ばれる独特の”あお”を多用した事で知られる東山魁夷。京都国立近代美術館では、平成30年10月8日(月祝)まで、その画業の全貌をたどる大回顧展「生誕110年 東山魁夷展」が開催中。代表作はもちろん、構想から完成まで10年を要した大作「奈良・唐招提寺御影堂 障壁画」の再現展示や京洛四季スケッチも。京都展を通して、魁夷にゆかりの深い関西を旅してみませんか?

圧巻の東山ブルーと京都展の見どころ

圧巻の東山ブルーと京都展の見どころ

写真:いずみ ゆか

地図を見る

国民的風景画家と謳われ、昭和を代表する日本画の巨匠・東山魁夷(ひがしやまかいい)。人気の白馬シリーズは、多くの方が一度は目にした事があるのではないでしょうか?生誕110年を記念した大回顧展が京都国立近代美術館(平成30年8月29日〜10月8日)と国立新美術館(平成30年10月24日〜12月3日)で行われます。

京都では実に30年ぶりの開催。その京都展のキャッチコピーは”本当の「あお」に出会う”。作品の多くに、青い絵の具が使われることから「青の画家」とも呼ばれた東山魁夷の”東山ブルー”を本展で存分に堪能することができます。

また、魁夷は横浜生まれの神戸育ち。小学校上級の頃から京都・奈良を独りで旅し、寺の障壁画や仏像を見に来ていたと言うほど、関西はゆかりの深い地です。作家の川端康成のすすめで京都の風景を描いた「京洛四季」は本展の見どころのひとつ。

もう一つの見どころ、東山芸術の集大成作品とも言える「奈良・唐招提寺御影堂 障壁画」は、襖絵と床の壁面全68面が再現展示。特に、東山ブルーの群青、緑青で描かれた『山雲』『濤声』は圧巻です。

●唐招提寺御影堂障壁画 『濤声』

「国民的風景画家」「青の画家」東山魁夷。音声ガイドで魁夷の肉声を

「国民的風景画家」「青の画家」東山魁夷。音声ガイドで魁夷の肉声を

写真:いずみ ゆか

地図を見る

東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業後、ドイツ留学を経験し、太平洋戦争へ召集された東山魁夷。戦中戦後、相次ぐ肉親の死や家を失い、失意の中にいた時、写生のため訪れた千葉県鹿野山山頂で、自然が織りなす光景と自分の心の動きが重なり合う充実感を味わいました。
その時の風景をもとに描いた作品『残照』は、官展(のちの日展)で特選を受け、のちに魁夷が「国民的風景画家」と呼ばれるようになった記念的作品。

本展では、戦後の作品から、『残照』『道』『緑響く』等の代表作を含め、絶筆『夕星』までの64件※を観る事ができ、画業全体を振り返ることができます。

※会期中一部展示替えあり
●写真は『残照』昭和22(1947)年 東京国立近代美術館蔵

「国民的風景画家」「青の画家」東山魁夷。音声ガイドで魁夷の肉声を

写真:いずみ ゆか

地図を見る

終戦から5年過ぎた頃、この頃は魁夷とって”道”を描くことに拘った時期でした。代表作の一つ『道』(昭和25(1950)年 東京国立近代美術館蔵)は、まっすぐに伸びたシンプルな構図の一本道が印象的な作品。「ひとすじの道が、私の心に在った」と言葉を残しているように、自らの進むべき方向を思い、描いた作品と言えます。

ここで、是非お勧めしたいのが音声ガイドの利用。スペシャルトラックとして、魁夷の肉声を『道』と『白い朝』の二つの作品ガイドで聴くことができます。BGMは魁夷が愛したモーツアルトやシューベルトといったクラッシクの名曲を使用。魁夷が著書で残した言葉が多用されており、作品制作への想いや背景が分かります。

「国民的風景画家」「青の画家」東山魁夷。音声ガイドで魁夷の肉声を

写真:いずみ ゆか

地図を見る

本展は、第1章〜第6章で構成されています。第2章の「北欧を描く」では、昭和37(1962)年に北欧を旅し、帰国後に発表された作品を展示。北欧の清澄な空気を感じさせる連作に青色が多用されたこともあり、東山魁夷に対し「青の画家」というイメージが生まれたと言われています。

京洛四季を観て、展示作品ゆかりの古都めぐりを

京洛四季を観て、展示作品ゆかりの古都めぐりを

写真:いずみ ゆか

地図を見る

第3章の「古都を描く・京都」は、東京展とは異なる京都展ならではの特徴があります。
本展覧会を担当した小倉実子主任研究員によると「昭和43(1968)年に京都で開催された「京洛四季(けいらくしき)展」用に東山画伯が描いた作品を展示しています。本画と習作※どちらも展示というのは、東山画伯の展覧会ではなかなか無いことで、「京洛四季スケッチ」は、デッサンでは無く、あくまで本画として通用するものです」とのこと。「京洛四季習作」35−1『曙』の本画は、京都展のみの出展です。

※本制作に対する練習制作のこと

京洛四季を観て、展示作品ゆかりの古都めぐりを

写真:いずみ ゆか

地図を見る

「京洛四季」の作品は、京都好きの方なら、どの場所を描いた作品かすぐ分かります。例えば、祇園円山公園の枝垂れ桜を描いた『花明り』や嵯峨野の竹林を描いた『月篁』など。京都国立近代美術館「生誕110年 東山魁夷展」公式ホームページには「京洛四季マップ」があり、展示作品に描かれた魁夷ゆかりの古都めぐりができますので、是非利用して、本展鑑賞後に京都散策を楽しんで下さい。

会期中は、「古都めぐりスタンプラリー」も開催されており、指定された市営地下鉄駅3ヶ所と京都国立近代美術館の計4ヶ所スタンプを集めると「東山魁夷オリジナルクリアファイル」が貰えます。

東山芸術の集大成!鑑真和上ゆかりの『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』全68面再現展示

東山芸術の集大成!鑑真和上ゆかりの『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』全68面再現展示

写真:いずみ ゆか

地図を見る

奈良時代、聖武天皇に戒律を授ける導師として招かれ、苦難の末に唐から日本へ渡来した鑑真和上開基の奈良の唐招提寺。

これまでに東宮御所や皇居新宮殿の壁画を手掛けてきた東山魁夷は、熟慮の末に開山の鑑真和上像(国宝)を安置する御影堂障壁画制作と御厨子内部装飾の依頼を受けます。

本展最大の見どころの一つが、構想から完成までに10年を要して制作し、奉納された大作「唐招提寺御影堂障壁画」全68面の再現展示。
毎年、鑑真和上の命日6月6日をはさんだ6月5日〜7日と9月の観月会の時に唐招提寺御影堂にて鑑真和上像(日本最古の肖像彫刻)と東山魁夷作の障壁画が特別公開されるのですが、平成27年から御影堂の平成大修理事業が始まり、約5年は拝観することができません。

そのため、今回の再現展示は大変貴重な機会と言えます。お寺での拝観と異なり、明るいライティングのもと間近で鑑賞できるのも本展の魅力です。

●唐招提寺御影堂障壁画 『楊州薫風』

東山芸術の集大成!鑑真和上ゆかりの『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』全68面再現展示

写真:いずみ ゆか

地図を見る

鑑真和上は、朝廷の要請を受けて5回の渡航に失敗し、次第に視力を失いながら6回目にしてようやく日本へたどり着きました。

魁夷は、昭和50年に第一期の仕事として、和上が見たかったであろう日本の風景『山雲』(山の代表)『濤声』(海の代表)を、昭和55年に第二期として和上の故郷、唐の風景『楊州薫風』『桂林月宵』『黄山暁雲』を、昭和56年に和上が初めて立った日本の地、鹿児島県の秋目浦を描いた『瑞光』を奉納しました。

この障壁画制作で、人生で初めて水墨画に挑戦し画域を広げています。

●唐招提寺障壁画『桂林月宵』『黄山暁雲』

東山芸術の集大成!鑑真和上ゆかりの『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』全68面再現展示

写真:いずみ ゆか

地図を見る

小倉研究員の話では、魁夷はドイツ留学からの帰国の際、「日本古来の”あお色”は群青と緑青」と思ったそう。視力を失った鑑真和上が見たかったであろう日本の風景が画かれた『山雲』『濤声』は、群青と緑青の東山ブルー。著書で「精神的な深さ、幽玄な感じを表わした」と記した『山雲』は、抑えた緑色が墨絵に近い渋い色調で描かれています。

”あお”について「青は精神と孤独、憧憬と郷愁の色。悲哀と沈静を表し、若い心の不安と動揺を伝える。また抑制の色であって、絶えず心の奥に秘められて、達することの出来ない願望の色である」※と述べた魁夷。鑑真和上の精神とつながる部分があるのかもしれません。

●唐招提寺障壁画『山雲』

※『唐招提寺への道』著:東山魁夷

『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』と白馬の関係、旅の画家・東山魁夷の心を写す風景画

『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』と白馬の関係、旅の画家・東山魁夷の心を写す風景画

写真:いずみ ゆか

地図を見る

東山作品と言えば、「白い馬の見える風景」シリーズを思い浮かべる方も多いはず。白馬を描き続けた画家のように思う方もいると思いますが、実は”白馬”は、昭和47年の1年間だけ描かれたものでした。唐招提寺御影堂障壁画制作の為、鑑真和上の生涯や唐招提寺についての研究、作品の構想を練っていた時に、ふと白い馬が風景の中に表われたと魁夷は著書に記しており、「心の平安を願う祈りであり、祈らねばならぬ心の状態であった」と残しています。

『奈良・唐招提寺御影堂障壁画』と白馬の関係、旅の画家・東山魁夷の心を写す風景画

写真:いずみ ゆか

地図を見る

数多くの取材旅行に赴いた事から「旅の画家」とも言われた魁夷。晩年は、新たに写生の旅に出ることが難しかったこともあり、今まで描いてきた無数のスケッチをもとに、心を写す風景画を描きました。

絶筆『夕星』(平成11(1999)年 長野県信濃美術館 東山魁夷館所蔵)は、パリ郊外にある公園の写生をもとに描かれていますが、その後、自身の夢の中でしか存在しない風景へと描き換えられています。

国民的風景画家、青の画家、旅の画家といわれた東山魁夷。本展で、作品から日本や京都の美しい風景を旅し、”本当のあお”の世界を旅し、画家の心の中を旅してみてはいかがでしょうか。そして、画家ゆかりの京都の地、更には足をのばして奈良・唐招提寺も訪れてみて下さい。

「生誕110年 東山魁夷展」基本情報

<生誕110年 東山魁夷展>京都国立近代美術館

会期:2018年8月29日(水)〜10月8日(祝・月)
※月曜休(9/17・24・10/8開館、9/18・25休館)
開館時間:9:30〜17:00(毎週金土は21:00まで)※入場は閉館30分前まで 
会場:京都国立近代美術館(岡崎公園内)
料金:一般1500円、大学生1100円、高校生600円 

<京都国立近代美術館 アクセス>
所在地:京都市左京区岡崎円勝寺町
電話:075-761-4111
電車・バス利用の場合
●地下鉄東西線「東山駅」より徒歩約10分
●JR・近鉄「京都駅」より市バス5番 岩倉行「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/08/28 訪問

- PR -

条件を指定して検索

LINEトラベルjpで一緒に働きませんか?

- PR -

旅行ナビゲーター(在宅ライター)募集中!
この記事に関するお問い合わせ

- PR -