写真:津田 泰輔
地図を見る街並みを歩いていて感じるのは、まさに明治や大正の世界。
宿場町がそのまま残っているような景色に、懐かしさを感じるのは私だけではないだろう。
建物の外壁が赤い色をしているのは、ベンガラと言う着色剤を使用しているため。
ベンガラとは銅山から産出される硫化鉄鉱を原料とした赤色の着色料のことで、陶器や漆器の赤色を出すために使われてきた。
また、防虫防腐に防錆効果もあるために、こうして建物にも使用されているのである。
写真:津田 泰輔
地図を見る郵便局だって赤い色をしている。
いや、郵便局が赤いのは元々か。
それにしてもレトロで風情のある建物ではないだろうか。
吹屋の街並みは、その昔、宮大工の棟梁を招いて街づくりを行ったのを発祥としている。その時、それぞれの家が別々に造られたのではなく、町全体の統一感を持たせて造られたという。
当時から景観を意識して造られた町と言うのは、日本では珍しいのではないだろうか。
写真:津田 泰輔
地図を見るベンガラのその赤い色は日本古来のあらゆる物に使用されてきた。
磁器の絵付けや漆器、寺社仏閣の赤い色はすべてベンガラを使用している。
また高松塚古墳の壁画に描かれた赤い色もベンガラからできている。ベンガラの赤色は色あせることがないので、高松塚古墳の壁画は現在も我々に当時の色彩を見せてくれているのである。
様々な用途に使用されてきたベンガラの日本で唯一の生産地がこの吹屋であったらしい。
中国山地の山奥、標高500mにもなるこの秘境のような場所は、かつてベンガラの生産を独占して、かなりの栄華を誇っていたという。
写真:津田 泰輔
地図を見るそしてこの吹屋には、もう一つ重要な歴史的建造物がある。
それが、日本最古の木造校舎「吹屋小学校」だ。
文明開化の明治に建てられた建物らしく、レトロでモダンな雰囲気がある。
当時はまだベンガラで繁栄していた頃だろう。豊富な吹屋の財力をかけて造られたことがうかがい知れる。
写真:津田 泰輔
地図を見るこの地に吹屋小学校が建てられたのが西暦1900年。
そして2012年3月に過疎化が進んで最後の卒業式が行われ、その100年以上の歴史に終止符が打たれることになった。
その後、建物は歴史建造物として保存されることになる。
まるで歴史映画のロケ地のような小学校。
こんな小学校に通ってみたいと思う方は私だけではないはずだ。
吹屋は明治から時が止まったかのような場所だ。
かつての繁栄の歴史の匂いを残しながら、今はひっそりと時を刻んでいる。
トンネルを抜けると別世界と言うのはどこかの映画の話だが、ここも人里離れた山奥の町。
不安になるほどの山道を登りきると、過去の世界にたどり着いてしまった。
そんな感覚にさせる場所である。
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(2024/12/2更新)
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