辻仁成「白仏」の舞台、福岡・大野島は人の骨で作られた仏のある島

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辻仁成「白仏」の舞台、福岡・大野島は人の骨で作られた仏のある島

辻仁成「白仏」の舞台、福岡・大野島は人の骨で作られた仏のある島

更新日:2014/03/31 10:40

しもちんのプロフィール写真 しもちん

「白仏」(はくぶつ)という小説をご存知でしょうか。芥川賞作家である辻仁成さんが1999年にフランスの権威ある文学賞であるフェミナ賞外国小説賞を受賞した作品です。
このタイトルにもなっている“白仏”が、物語の舞台になっている大野島に現存しています。それもそのはず、この小説は枝葉の部分は創作されていますが、辻さんの祖父の一生をモデルにした実話がベースになっているのです。

最寄り駅は水郷・柳川。

最寄り駅は水郷・柳川。

写真:しもちん

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白仏がある大野島は福岡県の南部にある大川市、有明海に注ぐ筑後川の河口にある中州の島です。この大野島、どこかで聞いたことがあるという方もいらっしゃるかも知れません。2000年代半ばに映画やテレビドラマ化もされた「嫌われ松子の一生」という作品で主人公の出身地として描かれていた島でもあるのです。

地図などで見ると筑後川の河口に比較的大きな島が見えるのですが、大野島と呼ばれるのは島の北部のみ。南半分は大詫間と呼ばれ佐賀市の市域になっています。同じ島なのに違う県に別れているという珍しい島になっています。
「白仏」も「嫌われ松子の一生」も、それぞれが一人の一生を描いている作品。こんな小さな島が2つの有名な作品の舞台になる理由、それは河口の島という閉ざされた土地であり、さらに島内に県境が存在するという特殊な地理的要因もあるため、人を引きつける何かがあるのかもしれません。

ちなみに大野島がある大川市には鉄道が走っていないため、最寄り駅は水郷としても有名な柳川市にある西鉄柳川駅。駅前から西鉄バス「早津江」行きを利用して30分程度で大野島に行くことが出来ます。
本数は1時間に1本程度と少ないですが、料金は全国の鉄道会社のICカードが使えるので便利です。バスに乗って柳川市域を抜け、大川市に入ると間もなく筑後川を超える新田大橋が登場。橋を渡れば大野島に到着です。中州の島ということもあり、とにかく平らな印象を受ける島です。

勝楽寺の納骨堂。

勝楽寺の納骨堂。

写真:しもちん

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大野島農協前でバスを降り、白仏がある勝楽寺というお寺を目指します。バス停からは徒歩3分程度。畑が点在する住宅街の中にある小さなお寺です。この納骨堂の中に白仏があります。

こちらは観光地化されたお寺と違い、本当に町中にある普通のお寺です。白仏にまつわる説明などは特にないので、事前に小説を読んでから訪れた方が良いと思われます。お寺の方に一声掛けて納骨堂内を拝見させていただきましょう。

白仏。

白仏。

写真:しもちん

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そしてこちらが白仏。島のあちこちに眠っていた千人以上の人々のお骨を使用して作られた仏さま。真っ白で凛とした表情をされています。

勝楽寺は浄土真宗のお寺ですが、白仏を作るにあたっては宗派の違いに関わらず、島に眠っていた人々の骨を集めて砕き作られています。島で生きてきた人たちを分け隔てなく、いつまでも忘れられることなく供養できるようにと。

白仏の全体像。

白仏の全体像。

写真:しもちん

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供えられているお花と比べると仏像の大きさもおわかりいただけるでしょうか。
はじめて白仏の小説を読んだ20代前半の頃は、読み切ったという満足感があった記憶しかなかったのですが、年齢を重ねてから再び読み返し、実際の白仏を拝ませていただくと、改めて色々と考えさせられます。今、自分達がこの場に居られるのは、先祖の方々がいたからこそですからね。

雄大なる筑後川。

雄大なる筑後川。

写真:しもちん

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白仏をお参りした後は、筑後川も近くで眺めてみましょう。
中州の島というだけあって大野島は東西の幅が狭い島です。勝楽寺は佐賀県側の早津江川の方に近いのですが、お寺から筑後川までも歩いてすぐの距離です。新田大橋の近くは運動公園として整備されており、川のすぐそばまで行けます。水量が多く荒々しい流れは、近くに大きな川がないエリアで育ってきた人間には驚きの光景です。

筑後川に架かるこの橋が出来、本土と島が橋で繋がったのは戦後のこと。それまでは渡し船で対岸まで行き来していた大野島の人々。小説の中では主人公の兄弟が舟から落ち、命を落とすシーンが描かれていますが、この川を見るとその光景が目に浮かぶようです。

最後に。

繰り返しになりますが、勝楽寺は観光用ではない町中の普通のお寺です。そして、白仏があるのもその納骨堂の中で、堂内には他の方々のお骨も納骨されています。訪れた際にはお寺の方に声をかけ拝ませていただきましょう。
なお、小説の「白仏」ですが、少し古い作品という事もあり、大手書店や出版社側でも在庫がない場合があります。ネット販売などを利用した方が早めに入手できるかも知れません。
小説を読んで感じる「何か」があったとしたら、ぜひ大野島を訪ねてみましょう。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/02/19 訪問

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