秋が狙い目!京都・海住山寺の2022年「文化財特別公開」

秋が狙い目!京都・海住山寺の2022年「文化財特別公開」

更新日:2022/10/05 15:26

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
秋ともなると、京都府下では神社仏閣の特別拝観がおこなわれ、普段、立ち入りを禁じられている堂塔や寺宝が一般に公開されます。木津川市の山中に位置する海住山寺も毎年10月下旬から11月にかけてが特別拝観の時期。普段、博物館でしか拝観出来ない仏像が里帰りしたり、国宝建造物への立ち入りが許されたりと、特別拝観の時期ならではの役得があります。今回は海住山寺の特別拝観についてご紹介しましょう。

奈良時代の創建と伝えられる海住山寺

奈良時代の創建と伝えられる海住山寺

写真:乾口 達司

地図を見る

「海住山寺(かいじゅうせんじ)」は京都府木津川市にある寺院。木津川を眼下におさめる三上山(海住山)の中腹に伽藍を構えています。

寺伝によると、その創建は奈良時代。保延3年(1137)に全山焼失し、承元2年(1208)、解脱上人とも称される貞慶によって再興され、このとき、海住山寺の名にあらためられました。

海住山寺の特別拝観の時期は毎年10月下旬から11月上旬にかけて。写真の本堂では、堂内に安置された本尊・十一面観音菩薩立像が開帳されるとともに、美仏として世に名高い別の十一面観音菩薩立像を拝観することが出来ます。こちらの十一面観音菩薩立像は、普段、奈良国立博物館に寄託されているため、海住山寺で拝観出来るのは特別拝観の期間中のみ。海住山寺へは特別拝観の時期に参詣することをお勧めします。

六重塔じゃないの!?珍しい構造を有する国宝・五重塔

六重塔じゃないの!?珍しい構造を有する国宝・五重塔

写真:乾口 達司

地図を見る

海住山寺の特別拝観でもっとも貴重なのは、国宝・五重塔の内部を拝観することが出来る点。五重塔は鎌倉時代前期の建保2年(1214)の作。高さは17.7メートルあり、国宝に指定されている屋外の木造五重塔としては、室生寺の五重塔に次いで小さいものです。

特別拝観の時期には、普段、閉じられている初層の扉が開かれ、内陣の様子を間近にうかがうことが出来ます。注目していただきたいのは、初層中央に据えられた仏壇に4本の柱があるものの、一般的な塔のような心柱がなく、心柱が初層の天井から上部に向かって伸びていること。4本の柱のあいだには扉が設けられており、厨子のような形にしつらえられています。こういった意匠は海住山寺ならではでのものです。

六重塔じゃないの!?珍しい構造を有する国宝・五重塔

写真:乾口 達司

地図を見る

ただ、写真をご覧になると、五重塔といいながら屋根の部分が6つあるではないか、六重塔ではないのか?と不審に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのように見える要因は一番下の庇の部分にあります。

写真はその部分をアップしたものですが、これは「裳階(もこし)」と呼ばれている庇で、いわば、スカートのような装飾的なもの。これがあるために六重に見えてしまっているわけです。このような裳階がついた塔としては法隆寺の五重塔などがありますが、非常に珍しいものなので、お見逃しなく。

六重塔じゃないの!?珍しい構造を有する国宝・五重塔

写真:乾口 達司

地図を見る

五重塔拝観の折、つい見落としてしまいがちなのは、扉の下部に取り付けられた閂にセミの彫刻がほどこされている点。閂にセミの造型が見られる寺院は全国各地にありますが、古来、セミには魔除けの意味があったため、セミの造型が施されたのでしょうか。それとも、セミはミンミンと鳴くので、防犯としての意味合いでしつらえられたのでしょうか。

色付きはじめた木々を愛でよう!本坊の庭園と五輪塔

色付きはじめた木々を愛でよう!本坊の庭園と五輪塔

写真:乾口 達司

地図を見る

特別拝観中は本坊も公開されます。写真は本坊東面の庭園を撮影したものですが、境内の木々がすでに色付きはじめ、秋の訪れを感じさせます。縁側に座って深まりつつある秋を実感しましょう。

色付きはじめた木々を愛でよう!本坊の庭園と五輪塔

写真:乾口 達司

地図を見る

こちらは本坊前に据えられた石造五輪塔。鎌倉時代の作とされています。石モノ好きにはぜひご覧いただきたい逸品です。

「なすのこしかけ」で良縁祈願!境内各所の風景

「なすのこしかけ」で良縁祈願!境内各所の風景

写真:乾口 達司

地図を見る

境内にはほかにも見所があります。こちらは海住山寺の中興の祖・貞慶とその弟子であった覚真(慈心上人)の墓所です。

「なすのこしかけ」で良縁祈願!境内各所の風景

写真:乾口 達司

地図を見る

ご覧のようななすびの形をしたオブジェも置かれています。これは「なすのこしかけ」と呼ばれているもの。「一富士二鷹三茄子」といわれるように、「成す」という言葉と掛け合わされたなすびは縁起物の代表格。海住山寺の「なすのこしかけ」は特に縁結びにご利益があるとされます。良縁成就を願う人はぜひ「なすのこしかけ」に腰掛けてみてください。

歴史の舞台を一望のもと!裏山の展望スポット

歴史の舞台を一望のもと!裏山の展望スポット

写真:乾口 達司

地図を見る

本堂の裏側にのびる道を少し登ると、ちょっとした広場に出ます。写真はそこからの眺めをおさめた一枚。

写真ではわかりにくいかと思いますが、鹿背山(かせやま)の手前を左から右に向けて木津川が流れています。木津川の手前の平地は「瓶原(みかのはら)」と呼ばれており、奈良時代、恭仁京(くにきょう)が置かれていた歴史的なところです。海住山寺がこのような歴史上の重要な地域に建立されていることを認識しながら、その眺めをご堪能ください。

海住山寺「文化財特別公開」(2022年)を拝観しよう

特別拝観期間中の海住山寺がいかに魅力的か、おわかりいただけたでしょうか。下界からだとかなりの急坂を登らなくてはなりませんが、車だと境内のすぐ下まで行くことが可能。特別拝観の時期でもそれほど混雑することがないため、海住山寺で特別拝観ならではの魅力を満喫してみてください。

2022年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/11/05 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -