砂漠に「船の墓場」!ウズベキスタンで見る20世紀最大の環境破壊

砂漠に「船の墓場」!ウズベキスタンで見る20世紀最大の環境破壊

更新日:2018/09/26 17:01

Mayumi Kawaiのプロフィール写真 Mayumi Kawai 絶景ハンター、トラベルライター、自称ミステリーハンター
カザフスタンとウズベキスタンにまたがる、かつて世界第4位だった湖・アラル海。旧ソ連の無謀な灌漑政策により湖は干上がり砂漠化が進行して、わずか半世紀で10分の1にまで縮小してしまった「20世紀最大の環境破壊」といわれた悲劇の湖です。

ウズベキスタンにあるかつての漁村・ムイナクにはその犠牲の証となった「船の墓場」が取り残されています。哀しくも美しいその姿をご紹介します。

「20世紀最大の環境破壊」といわれたアラル海の今

「20世紀最大の環境破壊」といわれたアラル海の今

写真:Mayumi Kawai

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中央アジア、カザフスタンとウズベキスタンの国境にまたがる巨大な湖・アラル海。かつて世界第4位の面積を誇り、その規模は日本の東北地方に匹敵するほど。大海原のようだった湖は、1960年代を境に現在10分の1にまで縮小、干上がった湖底は急速に砂漠化が進み、残された湖水も塩分濃度の上昇を受け魚が棲めない状態となりました。漁業や水産加工産業で栄えた湖畔の村々は壊滅的なダメージを受け、一部は砂漠に孤立し、一部は移住を余儀なくされています。

この要因は、旧ソ連が無計画に行った大規模な灌漑政策。アラル海に注ぎ込む2本の大河から綿花や水稲用の農業用水を強引に引いたことでアラル海の水量を激減させ、結果干上がらせてしまったのです。これは国際的な非難を受け、「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれています。

鉄さびだらけの廃船が集う砂漠の中の「船の墓場」

鉄さびだらけの廃船が集う砂漠の中の「船の墓場」

写真:Mayumi Kawai

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ウズベキスタン北西部にあるカラカルパクスタン共和国、そこにはこの「20世紀最大の環境破壊」の犠牲となった漁村の一つ、ムイナク(Muynak)があります。かつてムイナクに面していたアラル海の湖岸は77kmも後退し、漁業や水産加工業で栄えていた漁村は今、砂漠に取り残されたかたちになっています。

村のはずれには、湖の急速な後退に対応できず取り残されたかつての漁船が鉄さびだらけになって横たわっています。吹き荒れる風の中、広大な砂漠の中にポツンと遺された船たちの姿はかなり異様で、また環境破壊の残酷さを物語っています。

鉄さびだらけの廃船が集う砂漠の中の「船の墓場」

写真:Mayumi Kawai

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「船の墓場」と呼ばれるその場所には、11艘の大小の廃船が置き去りにされています。船の一部は朽ち果て崩れているものの、多くが当時の姿のままで今でも船出を待っているかのように虚しく砂漠に横たわっています。地面には貝殻のかけらなども転がっています。

鉄さびだらけの廃船が集う砂漠の中の「船の墓場」

写真:Mayumi Kawai

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ここは地元の子どもたちにとっては格好の遊び場で、かくれんぼをしたり、落書きも多く見られます。しかし、立地の不便さから訪れる観光客の数はそう多くなく、ウズベキスタン人の間でも知る人ぞ知るスポットとなっています。

アラル海の現状を訴える船の墓場のモニュメント

アラル海の現状を訴える船の墓場のモニュメント

写真:Mayumi Kawai

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船の墓場の前には、かつてのアラル海と今を伝える解説ボードとモニュメントが設置されています。三角の巨大なモニュメントの片側には1960年代当時のアラル海が描かれています。

アラル海の現状を訴える船の墓場のモニュメント

写真:Mayumi Kawai

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反対側には現在のアラル海の大きさや形が描かれています。これは毎年更新され、描き直されています。

アラル海の現状を訴える船の墓場のモニュメント

写真:Mayumi Kawai

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モニュメントの隣には「かつてのアラル海」と題された、当時のムイナクの様子を伝えるパネルが展示されています。砂に埋れたこの場所に、こんな潤沢な湖と港が栄えていたとは想像がつきません。まさに失われし歴史です。

ムイナクにある唯一の歴史資料館

ムイナクにある唯一の歴史資料館

写真:Mayumi Kawai

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村の中心には砂漠の村にしては珍しい近代的な建物が立っています。これは村唯一のムイナク歴史資料館でありアラル海環境博物館でもあります。1階には漁業や水産加工業で栄えたこの村の歴史やアラル海関連の資料が展示され、2階には当時の生活を伝える絵画が展示されています。入場料は、外国人は8,000スム(約115円)、写真撮影料が10,000スム(約140円)です。

ムイナクにある唯一の歴史資料館

写真:Mayumi Kawai

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当時漁で使用された器具やカラカルパク族の服装、水産加工の缶詰類、当時の生活を伝える多くの写真が展示されています。またアラル海を取り巻く生態系として魚の標本や野生動物らの剥製も展示されています。見応えはあるのですが、残念なことに英語表記がなく、保存状態もいいとは言えないようです。

ムイナクにある唯一の歴史資料館

写真:Mayumi Kawai

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2階は絵画ギャラリーとなっています。かつて漁で栄えたムイナクの何気ない風景が美しく切り取られ、いっそう哀愁を感じます。

ムイナク「船の墓場」へのアクセス

ムイナク「船の墓場」へのアクセス

写真:Mayumi Kawai

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カラカルパクスタン共和国の玄関は首都ヌクス(Nukus)。ヌクスからムイナクまでは北へおよそ200km、車では約3時間の距離にあります。バザール横のターミナルからローカルバスが出ていますが1日数便のため、もし複数名でシェアできるならばタクシーチャーターか日帰りツアーに参加するのが便利です。道は舗装されていてもガタガタ道が多く、運転は粗いので要注意。宿泊施設によっては提携するタクシーや旅行代理店を紹介してくれるので一度相談してみることをおすすめします。

ウズベキスタンはまだまだ日本人にとってはなじみの薄い国ですが、シルクロードやモスクだけではないこんな一面も持っています。「20世紀最大の環境破壊」と言われるアラル海の今をぜひその目で確かめに訪れてみませんか?

ムイナク「船の墓場」の基本情報

住所:Muynak, the Republic of Karakalpakstan, Uzbekistan
アクセス:カラカルパクスタン共和国の首都ヌクスまで行き、そこからローカルバスに乗り継いで約4時間かタクシーチャーターで約3時間、もしくは現地発の日帰りツアーなどに参加するのが一般的

2018年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/08/29 訪問

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