写真:竹内 あや
地図を見るブレーメンはドイツの北西部、約65q北上して北海へと流れ出るヴェーザー川沿いにあります。港町ではありますが、内陸にあるためか活気あるにぎやかな町というよりは、どこか落ち着いた雰囲気。住民たちは底抜けに明るく外向的というよりは、ゆったりとした微笑みで旅人たちを迎え入れてくれるといった印象です。
観光の中心となるのは、ドイツ鉄道中央駅から西南へ徒歩約10分ほどの旧市街。濠に囲まれたエリアで、橋を渡ると右手に風車、正面にブタ飼いの銅像が見えてきます。そしてそのすぐ先に広がっているのが旧市街の中心、マルクト広場です。
写真:竹内 あや
地図を見る広場の脇に立っているのは、世界遺産にも登録されている市庁舎とふたつの塔が空にそびえる姿が印象的な聖ペトリ大聖堂。さらに中心には、大聖堂を見据えるように高さ10m近くにも及ぶローラント像が立っています。この像は中世のハンザ都市の伝統を伝えるもので、教会に支配されない自由な町であることを象徴。こちらも世界遺産に登録されています。
写真:竹内 あや
地図を見るまずロバが窓の敷居に前足をかけ、その背中に犬が乗り、さらに犬の背中に猫が乗って、最後に雄鶏が猫に飛び乗りました。森の中で見つけた一軒家で、おいしそうにごちそうをほお張る泥棒たちを追い出すため、動物たちがとった行動です。
その光景を描いた銅像が、市庁舎の西壁脇にひっそりと立っています。ロバの足をなでながら願い事を言うとその願いが叶うとの言い伝えがあり、多くの人たちが試したのでしょう。今ではロバの足の部分だけが金色に光っています。
写真:竹内 あや
地図を見る4匹一体となって声を張り上げた動物たちに圧倒され、泥棒たちは一目散に逃げ出すのですが……。一体どんな声だったのか、聞いてみたくはありませんか?
実は、市庁舎に面したマルクト広場の一角に、その声を聞ける“スイッチ”があります。“スイッチ”と言っても一見、普通のマンホールに開いた穴なのですが……。その穴にコインを入れると、なんと音楽隊の一員の声が地面の奥底から聞こえてきます。ロバ? 犬? 猫? 雄鶏? だれの声かはそのときのお楽しみですが、4回試せば全員の鳴き声を聞くことができます。
写真:竹内 あや
地図を見る広場内だけでもマンホールはいくつもあり、なかなかどれが“その”マンホールなのかはわかりづらいのですが、ローラント像が見つめる先を15mほど進み、マルクト広場の南東へ。中央に四角い口を開けた、ほかとはやや表面のデザインが異なるものが“その”マンホールです。
コインは1セントでも10セントでもOK。ただし、ある程度重みのあるコインでないと、不発の可能性があるようです。知る人ぞ知る観光スポットで、なんと年間1万8000ユーロにもなっているのだとか……。ちなみに、集まったコインは市制に生かされているとのことです。
写真:竹内 あや
地図を見る市庁舎脇の有名な銅像のほかに、町内にはもうひとつブレーメンの音楽隊の像があります。こちらはさらにひっそりと立っていて、注意しないと見過ごしてしまいそうなのですが……。
マルクト広場から続くベットヒャー通りへと入ると、すぐ左手に噴水へと続く通路があります。この噴水の上に長い蛇口が架かっているのですが、よく見るとロバを先頭に4匹(厳密には雄鶏は足のみ。何度も盗難にあってしまい、現在は近くの美術館で保管されているとのことです)が一列に並んで歩いているのが見てとれます。
写真:竹内 あや
地図を見るさて、このベットヒャー通りですが、実は裕福だったコーヒー商人ルートヴィヒ・ロゼリウスが20世紀初頭、中世の町並みを再現しようとして造った通り。わずか107mの短い通りですが、ショップやカフェ、工房など、れんが造りの趣のある建物が軒を連ねています。
ちなみに噴水のすぐ横に建っている、美しいファサードが印象的な建物がロゼリウスの家。現在は博物館として公開されていて、趣のある調度品や絵画、彫刻のコレクションなどが展示されています。なお、隣の建物はドイツ表現主義を代表する女流画家パウラ・モーダーゾーン・ベッカー(1876〜1907年)の才能を見出したロゼリウスが、彼女のためにに建てた家。現在はパウラ・モーダーゾーン・ベッカー美術館になっていて、こちらも共通チケットで入場することができます。
写真:竹内 あや
地図を見るロゼリウスの家に立ち寄った際には、美術館とは反対側の隣り合わせに立つ建物にも注目を。屋根と屋根の間にマイセン製の陶器でできたグロッケンシュピールと呼ばれる鐘がいくつも備えられていて、毎日12:00〜18:00の間、毎正時(冬季は3時間ごと)になると約10分間にわたって音楽を奏でます。
写真:竹内 あや
地図を見るグリム童話によれば、ロバと犬、猫、雄鶏は、結局ブレーメンへはたどり着きませんでした。というのも、道中で居心地のいい家を見つけ、住み着いたからです。しかし、ブレーメンの町にこんなおもしろいものを見つけました。
「1991年7月16日、ここパウラ・モーダーゾーン・ベッカー家の改装工事を行っている最中、地下から老いたロバの足の骨が見つかった。これこそ、かつて犬、猫、雄鶏と一緒に音楽隊になろうとブレーメンを目指したロバである。これと一緒に、4匹が最終的にブレーメンにやって来たという証拠を示す文書も発見された」
こう書かれたプレートは、噴水のある中庭へと続くアーケードの奥、人通りもなくひっそりとした薄暗い壁に掲げられています。
写真:竹内 あや
地図を見る「ブレーメンへ行けば、なんとかなるさ――」
誰をもそんな気分にさせてくれる“ユートピア”へ。中世後期に北海・バルト海沿岸の貿易を牛耳るハンザ同盟の一員として、大いに栄えた港町ブレーメン。今も町の中心には自由の象徴であるローラント像が堂々とした姿で立ち、ストリートミュージシャンやパフォーマーたちが行き交う人々を楽しませています。
音楽隊が最終的にたどり着いたのか否かは別として、ここは今も人々を引き付ける何か――、メルヘンの世界が息づいています。
アクセス:日本からの直行便が就航しているフランクフルト国際空港から高速列車で約3時間30分
2018年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
竹内 あや
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