金沢市内を流れる用水の中でも、特に注目してほしい3つの用水。それは「辰巳用水」「鞍月用水」「大野庄用水」で、どれも金沢の歴史と深く関わっています。「辰巳用水」は、江戸玉川浄水や箱根用水、赤穂用水と並び、日本四大用水のひとつと位置づけられているのをご存知でしょうか。
金沢城や兼六園と切り離すことのできない辰巳用」は、金沢城の水不足を補うために造られました。お濠の水を高台の金沢城の中に取り入れるという、緻密に計算された仕組み。全国初の「逆サイフォン」の原理を利用した画期的な方法だったことは、今も有名です。
辰巳用水の完成により、金沢城の空堀は水濠になり、防衛上にも多大な役割を果たし、同時に城内の飲料水の供給という大きな役目も担うという、まさに、金沢城を護るための用水だったんです!
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る兼六園の小立野口を出ると、小立野通りがあります。この通りは、かつては金沢城に石を運んだ「石曳きの道」です。
通りの傍らを流れる辰巳用水に沿って、加賀藩家老八家のひとつ「奥村家上屋敷跡」の長い土塀があります。金沢らしさを感じられる、美観スポットのひとつ。奥村家は、アニメ「花の慶次」にも登場しているので、アニメがお好きな方も必見ですよ。
周辺には、「成巽閣」や「金沢くらしの博物館」、上流には珠姫の寺「天徳院」など、金沢の歴史に関わる主要観光スポットもあるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。
<奥村家屋敷跡の基本情報>
住所:石川県金沢市下石引1-1
※国立金沢病院前 出羽町バス停すぐ
兼六園のシンボルで、有名な「徽軫(ことじ)灯籠」。その燈籠が架かる「霞ヶ池」や、園内で最も古い時代に作庭されたといわれる「瓢(ひさご)池」などは、兼六園には無くてはならない美観スポットです。
実は、兼六園内のこれらの池を満たしているのは当時の金沢城の用水で、現在は本流から分水された辰巳用水です!用水を利用した、「兼六園」という大きな空間とその歴史をぜひ感じてくださいね。
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る金沢城で使用された当初の木管は、その後石管に取り替えられました。歴史的な石管は、金沢城や尾山神社、金沢神社敷地内などに展示されています。
石川県立歴史博物館の玄関に展示されている石管は、掘り出された石管を再生し、毎日定時になると、実際に放水が行われています。石管から流れ出るその様子は、当時を彷彿させる圧巻の勢いです。
石管の周囲の縁石や瓦も、赤煉瓦棟創設時の物。城内の様子に思いを馳せて眺めてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、兼六園から流れ出た辰巳用水は、市内に分水され、金沢駅の「もてなしドーム」で合流しています!金沢駅の鼓門口に流れる水は辰巳用水のせせらぎです。お見逃しなく!
<石川県立歴史博物館の基本情報>
住所:石川県金沢市出羽町3-1
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る石川県立美術館のある本多の森周辺でも、辰巳用水を眺めることができます。本多の森界隈は「本多の森の蝉時雨」ともいわれ、日本の音風景100選にも選定されている場所。石川県立美術館の裏手の「美術の小径」は、観光スポットの「中村記念美術館」や「21世紀美術館」へ通じる近道で、緑の小径を経て「鈴木大拙記念館」の方へと繋がっています。
街中とは思えない、緑豊かな森の中を流れ下る用水からは、歴史と自然が調和した、趣ある風情を感じることができることでしょう。
この道はわりと観光客が少なく、地元の人々が本多通りへの近道に利用する小径。金沢人のように、歩き慣れた道を行くような気持で歩いてみては?
<美術の小径の基本情報>
住所:石川県金沢市本多町3丁目2-6
※石川県立美術館の裏
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る小立野台地の上部の土清水には「辰巳用水遊歩道」があります。遊歩道の傍には、「土清水塩硝蔵跡」などもあり、静かな歴史散策を好む方にはぴったりの遊歩道です。
市内中心部からは少し離れ、あまり観光客も見受けられませんが、遊歩道脇には美味しい「金沢梨」の農家が育む梨畑などがあります。春には白い梨の花を、秋には梨の実を眺めて、歩いてみるのもオススメです。
<土清水塩硝蔵跡の基本情報>
住所:石川県金沢市涌波1-12
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る金沢観光で外せない観光スポットのひとつ「長町武家屋敷跡」は、かつての加賀藩の武士たちの武家屋敷跡です。長い木羽板葺き屋根の土塀や、武者窓のある門構えなどが続く界隈を歩くと、まさにタイムスリップしたような感覚になりますね。この土塀の傍らを流れる「大野庄用水」は、金沢で最も古く、長い歴史がある用水です。
犀川から金石港へと流れるこの用水は、金沢城の地上改修工事の時、港で水揚げされた木材を運搬する水路として使用された、まさにお城の築城に大きな役割を果たした用水です!
小路が多く積雪のある金沢では、防火や消雪、排水など、城下町の生活においても重要な役割を果たしてきました。
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る長町武家屋敷跡を流れる「大野庄用水」には、犀川に近い方から「一の橋」「二の橋」といったように番号が付けられています。実は橋は「八の橋」まであるんですよ。
旅行ガイドブックによく掲載されている、土塀が続く武家屋敷跡の風情ある街並みは、「二の橋」から入るのがおススメ!SNSに載せたいビュースポットにきっと出会えるでしょう。そぞろ歩きを楽しみながら、順番に橋を数えて歩くのも楽しいですよ。
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る武家屋敷内には、庭園に取り入れられた曲水(小川)への取り入れ口などが見られます。長町にある「旧加賀藩士高田家跡」や「野村家」では、長屋門と庭園などが一般公開されています。当時の武士の、屋敷内の様子を垣間見ることができますので、ぜひ立ち寄りましょう。
<武家屋敷跡・野村家の基本情報>
石川県金沢市1丁目3-32
<武家屋敷跡・高田家の基本情報>
石川県金沢市長町2-6-1
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る「鞍月用水」は、21世紀美術館と金沢市役所の横を流れ、片町・香林坊から金沢駅近くにかけて、百万石通りに沿って裏通りを流れています。用水沿いには歩道が設けられ、せせらぎの音を聞きながら楽しく歩くことができる、まさに金沢市民に馴染み深い用水です。
しかし当初は、金沢城防衛のための惣構え堀をめぐらす目的で造られたものでした。
市内中心部の鞍月用水沿いには、加賀藩家老職・加賀八家のひとつ、村井家の屋敷跡があります。屋敷は、もとは金沢城内にあり、城郭拡張の際に長町に移転したものです。
赤煉瓦が目印の「玉川図書館」から、長町武家屋敷に向かう途中にある屋敷跡地は、現在、小学校や公園、図書館などに広く利用されていますが、実はこのあたりが、西外惣構え掘りの遺構です。
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る鞍月用水の傍にある「屋漏堂(おくどうろう)」の石碑には、加賀藩士の武士道を伝える謂れが書かれています。その意味は、「ひとの見ていないところでも恥ずべき行為はしない(屋漏恥じず)」とのこと。雨漏りがしても家の中で傘をさして忍び、土蔵には武具類や軍用金を蓄えたという藩士の武士道を、村井家の当主が称えたものです。
少しマイナーなスポットかもしれませんが、加賀藩の歴史の一片を担った、武士の生きざまを象徴する石碑ですので、ぜひご覧ください。
惣構遺構や加賀八家の歴史などを辿り、長町武家屋敷跡へ…。「鞍月用水」は、城史跡、遺構マニアの方には、特にオススメの散策路ですよ!
<加賀八家村井家屋敷跡の基本情報>
住所:石川県金沢市長町1丁目10-35(金沢市立中央小学校)
写真:きんぎょ 美歩
地図を見る「屋漏堂」から歩いて数分にあるのは、写真の海棠林檎(カイドウリンゴ)です。カイドウリンゴは、藩政時代から金沢で植栽された林檎で、明治時代には、生活用水の流れる武家屋敷跡に栽培された時期もあったとか。
現存するものが珍しいことから、「金沢のパワースポット」のひとつにもあげられています!りんごの実の熟す秋に金沢旅を計画中の方は、こちらもぜひお見逃しなく!
金沢市内を流れるいくつもの「用水」。用水のあるところに金沢の歴史あり、といっても過言ではありません。
代表的な観光スポットや、市内散策にプラスして、「惣構え跡」をたどったり、「加賀八家屋敷跡」をめぐったりなど、歴史を感じて、ちょっとだけ金沢を深堀りする旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
2018年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/10/14更新)
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