写真:やた 香歩里
地図を見るそもそも「日本三奇橋」とはなんでしょうか? 名前の通り、構造の奇異な橋という意味ですが、錦帯橋(山口県)、愛本橋(富山県)、そしてこの「甲斐の猿橋」をそう呼ぶことが多いです。こういった、「日本三〇〇」の常として、他の橋と入れ替えられることもありますが(長野の木曽の桟(かけはし)、徳島の祖谷のかずら橋など)、おおむねこの猿橋と錦帯橋は三奇橋に含まれています。
写真:やた 香歩里
地図を見る歴史と貫録を感じさせる、どっしりした美しい橋で、その渋い木材の色と、木が醸しだすしっとり感に、紅葉の艶やかな彩りが見事に映えます。和装の人が行きかおうものなら、タイムスリップしたかのような気分になるでしょう。
桂川の細い渓谷に架けられたこの猿橋、その起源は西暦600年頃との言い伝えが残り、江戸時代には浮世絵師の歌川広重が「甲陽猿橋之図」を描いています。
現在の猿橋は1984年に架け替えられたもの。一部に鉄鋼を使用しており、完全に昔のままの木橋ではありませんが、外観上は往時の美しい姿を残しつつ、今でも人が渡ることができる、「橋」としての役割を果たしています。
写真:やた 香歩里
地図を見る猿橋はそれ自体が名勝ではありますが、紅葉の時期にはさらにたくさんの人が訪れます。ちなみに橋の下にも橋のようなものが見えますが、これは橋ではなく水路。
手前に見えるのが、八ツ沢発電所一号水路橋です。上流の駒橋発電所で利用した水を下流の発電所に流すために作られた水路橋で、1914年の完成。こちらも国の重要文化財に指定されている、産業史上の重要な史跡です。
さらにその向こうの赤い橋は「新猿橋」と呼ばれる国道20号線が通る橋。現代において主要な交通路となっている橋です。
写真:やた 香歩里
地図を見る実は「新猿橋」は2つあります。国道20号線の通る「新猿橋」とは「猿橋」を挟んで反対の上流側に、かつては国道で今は県道505号線が通る、もう一つの「新猿橋」があります。先にできたのはこの県道505号線の新猿橋で、後に下流の赤い新猿橋ができました。狭いエリアに3つの「猿橋」と1つの水路が並び、これもまた面白い眺めです。
写真:やた 香歩里
地図を見る長さ30.9m、幅3.3mというスケールは、橋としては小ぶりなものですが、水面からの高さは30m以上もあります。橋を架けるには、通常は橋脚という橋を支える脚を川に建てるのですが、深く細い渓谷には橋脚を立てることができません。こういう場合よく見られるのは吊り橋ですが、猿橋は吊り橋でもなく、刎橋(はねばし)という特殊な構造となっています。
その構造は、橋の根本を見ればよくわかります。幾本もの棒が重なって橋を支える構造。刎橋は、まず崖面に穴をあけて、そこに刎木(はねぎ)を差し込みます。その上に、下の刎木を支えにして、下のものより少し長い刎木を設置します。さらにその上に少し長い刎木を…と重ねて、最後に、その重なり合った刎木を土台にして、橋げたを渡して橋にします。
写真:やた 香歩里
地図を見る猿橋では、四層の刎木が橋の土台となっています。なんとも個性的な構造ですね。何とかして細い渓谷の上に人が渡れる橋を作ろうと知恵を絞った結果、このような橋を渡すことに成功したのです。ちなみに、刎木や横棒に小さな屋根がついているのは装飾ではなく、雨による腐敗を防ぐためですが、これが独特の雰囲気づくりに一役買っています。
この橋が「猿橋」と名付けられたのは、猿が重なり合って渓谷を渡っていく姿から橋の構造の着想を得たことに由来すると言われています。猿がいなければこの橋はなかった、ひいては日本のいくつかの橋は、架けられないままに終わっていたのかも?
写真:やた 香歩里
地図を見るかつては甲州街道の重要な橋でしたが、すでに交通を担う役割は2つの新猿橋に譲っており、現在は史跡として、観光としての役割の大きい「猿橋」。今でも地元の人に大切にされてます。
写真:やた 香歩里
地図を見る橋の上に設置されている切り絵行灯は、地元の有志の方々や市内中学校の美術部の生徒が作成したもの。切り絵のシャープな絵柄が、猿橋の重厚な雰囲気によく合います。この行灯は、例年十五夜(旧暦の8月15日)からクリスマスまでの間設置され、16時〜21時に点灯されます。
写真:やた 香歩里
地図を見る橋のたもとには、猿王を祀る山王宮の小さな赤いお社があり、傍らの紅葉も美しく色づきます。この木は、猿橋周辺でも遅くまで色づきが楽しめます。
写真:やた 香歩里
地図を見るどっしりとした力強さで、風格漂う猿橋。四季を通して心惹かれる眺めですが、秋の美しさはまた格別です。猿橋付近の紅葉のピークは例年11月上旬〜下旬頃。気候により前後するので、大月市観光協会公式サイトの紅葉状況などを確認の上でお出かけください。
写真:やた 香歩里
地図を見る猿橋へは、車なら中央自動車道の大月ICから30分ほど。電車なら、JR中央本線猿橋駅から徒歩約20分です。また、中央自動車道の「猿橋」バス停からも徒歩10分程度なので、高速バスを利用したアクセスも可能です。首都圏からなら余裕で日帰り圏内。さらに足を延ばして、河口湖方面や、甲府の昇仙峡に向かうこともできます。
秋の一日、ゆったり甲州の紅葉巡りを楽しんでみませんか?
住所:山梨県大月町猿橋
電話番号:0554-22-2942(大月市観光協会)
アクセス:
〔車〕中央自動車道 大月ICから約20分
〔電車〕JR中央本線猿橋駅から徒歩約15分
2018年10月現在の情報です。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/3/19更新)
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