写真:澁澤 りべか
地図を見る東大寺別格本山・安倍文殊院(華厳宗)があるのは全国の「安倍さん」発祥の地。大化元年(645年)に安倍倉梯麻呂によって創建されました。遣唐使として中国に渡りその地で没した安倍仲麻呂(「天の原 ふりさけみれば春日なる 三笠の山に出し月かも」が有名)や、平安時代の陰陽師安倍晴明の出生地でもあるお寺です。
ご本尊の文殊菩薩は鎌倉時代の名仏師、あの快慶によって造立されました(撮影禁止)。菩薩様が乗っている象だけでも重さ1トン。高さは7メートルにもなる巨大なヒノキの木彫で、日本三大文殊菩薩のひとつ。左右に4体の脇侍を伴うため「渡海文殊菩薩群像」とも呼ばれ、5体すべてが国宝です。
文殊菩薩といえば知恵の神様。本堂の周りにはたくさんの絵馬が奉納されています。文殊の知恵や安倍晴明の力にあやかりたい受験生はぜひともお参りください。
写真:澁澤 りべか
地図を見る本堂の右には安倍仲麻呂を偲んで植えられた枝垂桜が、本堂の前には木瓜(ボケ)の植え込みがあります。木瓜は中国原産で、春には真っ赤な花を咲かせます。
安倍仲麻呂が唐で仕えた玄宗皇帝は絶世の美女楊貴妃を寵愛したことで知られますが、彼女はその美と健康を保つために「木瓜酒」を愛飲していたとされ、本殿に向かい合う客殿では清酒に木瓜の実を漬け込んだ「木瓜酒」を購入できます。
写真:澁澤 りべか
地図を見る客殿はまた参拝者の茶席として使われています。
境内を歩き疲れたら「智恵のお抹茶」と、吉野葛を使ったらくがんで一服してください。ここで出されるらくがんは、なんと晴明桔梗印(五芒星)が入ったもの。紅白二色あり買って帰れます。晴明ファンにぜひおすすめしたいお土産です。
もっとおなかを満たしたいときは、売店で販売している「亀ぱん」をどうぞ。ふわふわ生地でかぼちゃあんを包んだ菓子パンです。しっかり噛め(カメ)ば脳が活性化。智恵がつき、ボケ防止にもなるというわけです。
写真:澁澤 りべか
地図を見る本堂を出ると左に不動明王をまつる西古墳(特別史跡)、右手に文殊池が見えます。池の中央にある六角堂が、弁財天を本尊とする金閣浮御堂(うきみどう)です。この中に、安倍仲麻呂と安倍晴明の像がまつられており、よく目にする安倍晴明の肖像画が展示されています。これらは通年公開されています。
また十二天の掛け軸もあり、ゴールデンウィーク期間のみ公開されます。
秋は可憐なコスモスが池を縁取ります。コスモス越しの浮御堂、絵になりますよね。
写真:澁澤 りべか
地図を見る浮御堂の参拝にはルールがあります。それが七難(災厄)を払うための「七まいり」です。
拝観券を買うと、7枚つづりになった「厄除けおさめ札」と「肌守り」を渡されます。肌守りはそのまま持って帰ります。
そしておさめ札をもってお堂の周りを時計周りに7周するのです。一周ごとにおさめ札を一枚、切り離しておおさめします。そのさい、ご本尊の弁財天様に手を合わせ願掛けをします。「〜できますように、なりますように」ではなく、「〜ないように、なりませんように」とお願いするのが決まりです。
願い事は同じことを7回でも、そのつど違うことでもかまいません。
七まいりを終えたら堂内へ。
浮御堂は霊宝館を併設していて、寺伝来の秘宝、安倍氏ゆかりの品々が展示されています。江戸時代に作られた安倍晴明の姿の版木や、土御門家に伝わる鎮宅霊符(祈祷で使う呪符)、漫画家岡野玲子氏のイラストなどの展示があり、季節ごとに展示がえがあります。
写真:澁澤 りべか
地図を見る安倍文殊院が毎年秋に設置しているのが「コスモス迷路」。池の向こう側、不動堂の横にあります。
約5万本、30種ほどの花を使って作られています。20メートル×25メートルほどの規模なので、何時間も迷って出てこれない、というものではありません。
ひときわ目立つ黄色い花は「レモンブライト」。入口付近には、栽培が難しくほんのりチョコレートの香りがする、珍しい「チョコレートコスモス」も。
写真:澁澤 りべか
地図を見る迷路内には4か所のスタンプコーナーがあるので、コスモスの4つの花言葉を集めてください。写真が4つの花言葉をおしたシートです。
色とりどりの美しいコスモスに囲まれ、写真撮影に夢中になって奥へ奥へと進んでいくうちに、あれ?出られない。おや?〇番のスタンプにたどり着けない、なんてことに。子供だけでなく、大人も十分楽しめますよ!
コスモス迷路は9月〜10月末まで開園しています。
写真:澁澤 りべか
地図を見るコスモス迷路を楽しんだあとは、智恵の水が湧き出る閼伽井古墳、縁結びの白山堂をお参りして、坂道を上がります。すると安倍晴明が天文観測を行い吉凶を占った展望台にでます。ここに建てられている「晴明堂」は、2004年の「晴明公一千年回忌」に際して200年ぶりに建て替えられたものです。
堂の正面上部に晴明桔梗印が見えます。堂の前に据えられた、黒光りする如意宝珠の玉石をなでると、魔除け方除け、諸願成就のご利益が得られます。
最強の陰陽師、安倍晴明の絶大なパワーをここで授かってください。
写真:澁澤 りべか
地図を見るさぁ晴明も立ったその場所から、いにしえの奈良の都を眺めてみましょう。万葉集の世界が広がっています。右手奥に小高い山が見えます。これが大和三山のひとつ、耳成(みみなし)山です。
この写真の位置からは分かりにくいのですが、左手奥には畝傍(うねび)山が見えます。香久(かぐ)山は畝傍の手前にありますが、位置的に見えない上に、現在はほとんど崩れてしまっています。
さて展望台のすぐ下にはコスモス迷路が広がっています。
コスモスが終わると、紅葉の時期をはさんで、同じ場所に巨大な干支の動物が描かれます。約8000株ものパンジーを使ったこの「ジャンボ花絵」は、撮った写真を年賀状に採用する人もいるほど人気です
桜井まで行けない!という人は、安倍文殊院のホームページから画像を取り込めます。
「ジャンボ花絵」は毎年12月〜4月ごろまで楽しめます。
春以降は桜にツツジに木瓜、そしてコスモスにパンジー。境内はいつ行っても花にあふれていますよ。
住所:奈良県桜井市阿部645
電話番号:0744-43-0002
アクセス:
近鉄・JR桜井駅下車、徒歩約20分
または駅から桜井市コミュニティバス・南循環線で「安倍文殊院」下車、徒歩5分
2018年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
澁澤 りべか
歴史の舞台を旅しながら、日本で世界各国の歴史、文化、宗教、習慣などを教えています。これまで、のべ30カ国90件ほどの世界遺産を訪問しました。年に数回、歴史を五感で楽しんでもらうイベントを開催しています…
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