この神域侵すべからず!兵庫・越木岩神社「甑岩」の畏るべき伝説とは

この神域侵すべからず!兵庫・越木岩神社「甑岩」の畏るべき伝説とは

更新日:2021/06/19 10:06

小々石 曲允子のプロフィール写真 小々石 曲允子 昭和文化・レトロ旅愛好家、神秘の杜ナビゲーター
同じ関西の京都や奈良、和歌山あたりと比べ、ともすると霊地のイメージが湧きにくい兵庫県。しかし実は兵庫県は、国生みの地とされる淡路島、高砂市の生石神社をはじめ太古の巨石神話や磐座(いわくら)信仰の痕跡とも思われる神域が各所に残る地域で、今回ご紹介する西宮市の越木岩(こしきいわ)神社もそのひとつです。
不思議な言い伝えが残る霊岩「甑岩(こしきいわ)」のほか、周囲の磐座や末社も必見です。

越木岩神社は、古代磐座信仰のサンクチュアリ

越木岩神社は、古代磐座信仰のサンクチュアリ

写真:小々石 曲允子

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西宮市の越木岩神社は六甲山系に連なる北山の麓に位置する、自然豊かな叢林に覆われた古社。

その信仰の地としての歴史は、神社参拝という形が生まれる以前の遥か古代にまで遡ります。巨岩・磐座に神威を見い出し崇める原始的な磐座信仰に始まり、現在でもこれらの磐座は御神体として祀られています。

越木岩神社は、古代磐座信仰のサンクチュアリ

写真:小々石 曲允子

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神社創建は西暦600〜700年頃と推定され、この時代に起きた大地震を機に地鎮を目的として、大地を司る神・大地主大神(おおとこぬしのおおかみ)=大国主大神が祀られました。
そのような歴史もあって、平安時代の延喜式神名帳には、越木岩神社は「大国主西神社」という名で記されています。

なお現在、御本殿でお祀りされている御祭神は蛭子大神(ひるこおおかみ)、つまり戎(えびす)神で、福男選びの神事で有名な西宮神社から江戸時代に勧請されました。

神の意思が現れた!?甑岩の不思議な伝説

神の意思が現れた!?甑岩の不思議な伝説

写真:小々石 曲允子

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大昔よりこの地に存在する磐座の中でもシンボル的な御神体であり、神社名の由来ともなっているのが、周囲約40m・高さ10mの巨岩「甑岩」です。
本殿のある境内左手から延びる石段の参道を進んだ先に、甑岩は鎮座しています。

神の意思が現れた!?甑岩の不思議な伝説

写真:小々石 曲允子

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神社の説明書きには、甑岩についてこのような記述があります。
『この神の鎮まる霊岩を大阪城築城のために切り出そうと、村人達の制止の懇願にかかわらず、豊臣秀吉が石工達に命じて割らせていたところ、今にも割れんとする岩の間より鶏鳴し、真白な煙が立ち昇り、その霊気に石工達は、岩諸共転げ落ち倒れ臥し、如何にしても運び出せなかった(以下略)』

御神体や墓所を移動・撤去しようとして災いが起きたという話は各地にありますが、秀吉の時代にこの甑岩にも祟りとも思える不思議な現象が起きたということなのでしょう。

甑岩にはこの岩を切り出そうとしていた池田備中守長幸の家紋の刻印が今でも残されており、岩の中には肥前佐賀藩主・鍋島勝茂の刻印も残されているようです。

神の意思が現れた!?甑岩の不思議な伝説

写真:小々石 曲允子

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恐ろしい伝説が伝わる甑岩ですが、その形状から女性守護、安産や子授けの御神徳があるとされ、岩の手前に座す岩社には女神・市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)がお祀りされています。
御神体である岩の周りを一周すると、御利益が戴けるとされています。

参拝時に日が射すと願いが叶う!?「北座の磐座」

参拝時に日が射すと願いが叶う!?「北座の磐座」

写真:小々石 曲允子

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さて甑岩の他に、神社の敷地内にはもう一ヶ所、参拝しておきたいパワースポットがあります。それが、「北座の磐座」です。

現在の越木岩神社の敷地内には、北座、中座、南座(甑座)という3つの磐座群があります。
甑岩の右側の辺りから枝分かれした道があり、その道を2分ほど歩くと北座の磐座へ辿り着きます。

因みに、途中には古来より祈雨止雨に霊験のある貴船社もお祀りされており、その背後にあるのが「中座の磐座」です。

参拝時に日が射すと願いが叶う!?「北座の磐座」

写真:小々石 曲允子

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貴船社からやや先の小高い丘状の場所に、立石を支えるように数個の石が組まれた独特の形状をした磐座「北座の磐座」は鎮座しています。
この磐座でお祀りされているのは稚日女命(ワカヒルメノミコト)とされています。その形から「男神」と見る向きもあり、思金(オモイカネ)神がお祀りされているとの説もありますが定かではありません。

なお、こちらの磐座の前に進んだ際に陽が射すと願いが叶うと言われています!

古代よりの地鎮の聖地!?歴史と霊験を感じる末社へも

古代よりの地鎮の聖地!?歴史と霊験を感じる末社へも

写真:小々石 曲允子

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越木岩神社では、境内の末社にも磐座祭祀の形態が多く残ります。
例えば、甑岩までの石段途中に鎮座する末社「土社」。
祀られている大地主大神は、大国主大神(=出雲大社等で祀られる大国主命)、大穴牟遅(おおなむぢ)大神と同神とされる神様です。
一般的に建物を建てる前には地鎮祭が執り行われますが、それはこのような神々に工事の無事安全を祈願するものです。

「大国主西神社」という越木岩神社の古い名称はこの土社の御祭神の名に由来しており、そもそも神社の創建が大地震が起きたことによる地鎮が目的だったことを考えると、歴史が古くかつ非常に意味のある末社ということになります。

古代よりの地鎮の聖地!?歴史と霊験を感じる末社へも

写真:小々石 曲允子

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また、境内の西域には甑不動明王がお祀りされた一角があります。
神仏習合の名残とみられる甑不動明王の仏像はかなり古くからこの地でお祀りされていましたが、ある時上半身が切り取られ持ち去られるという出来事が起き、その少し後にあの阪神淡路大震災が起きたという経緯があります。

仏像が壊されたことと地震との間にはもちろん因果関係は認められませんが、甑岩の不思議な伝承や神社の地鎮の御神徳等を考えると、只ならぬ話のように思えてきます。
現在の不動像はその後新しく造られたもので、像の背後に切り取られた後の下半身のみの御姿が残されています。

古代よりの地鎮の聖地!?歴史と霊験を感じる末社へも

写真:小々石 曲允子

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越木岩神社をご紹介して参りましたがいかがでしたでしょうか?
歴史と共に畏れを感じる伝説・エピソードを有する神社、是非とも敬虔な気持ちでお参りして頂ければと思います。

最寄りの「越木岩神社北」バス停からの道路沿い、神社に隣接する敷地のフェンス越しに境内の他の磐座群も見えますので、こちらもご注目を。

越木岩神社の基本情報

住所:兵庫県西宮市甑岩町5-4
アクセス : 阪急電車「夙川」駅、あるいはJR「さくら夙川」駅から、阪急バスもしくはさくらやまなみバスに乗車、「越木岩神社北」下車。徒歩5〜6分
(正月三が日と泣き相撲行事がある日は、阪急夙川駅より無料バス運行)
阪急電車「苦楽園口」駅・「甲陽園」駅より徒歩約20分

2021年6月現在の情報です。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2018/11/29 訪問

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