ミシュラン・ガイド兵庫版に掲載されている老舗もある、兵庫県豊岡市の名物「出石皿そば」。「出石」は、「但馬(たじま)の小京都」とも呼ばれる兵庫県豊岡市出石町の城下町です。ここに、明治時代に建てられて以来、街のシンボルにもなっている芝居小屋「永楽館」があります。明治時代から残る芝居小屋としては近畿地方最古とされています。
写真:ゐさ よりこ
地図を見る十一代続く出石の豪商・小幡家の当主が、自らの家の敷地内に趣味で建ててしまったという、何とも豪快な芝居小屋。個人所有の建物でありながら、本格的な歌舞伎が上演できる設備を備え、開館してからは長らく、歌舞伎のほか、壮士芝居(明治時代に政治思想の啓蒙を狙って上演した現代演劇の一種)や寄席などが開催されて街の人を大いに楽しませてきました。
写真:ゐさ よりこ
地図を見る戦後は、テレビなどの娯楽におされ、芝居人気が下火に。昭和30年代に閉館してからは、外側も内側も手付かずのまま、放置されてきました。
そんな「永楽館」に再び光があてられたのは、昭和60年代。豊岡市で街並み保存運動の機運が高まり、永楽館の復元・再開を望む声が街の人から出てきました。朽ちた永楽館は、平成に入って市に譲渡されて県有形文化財の指定を受け、復元されることが決まります。
建材や内装など、使えるものはすべて使い、舞台装置もそのままに、永楽館は40年以上の眠りから覚め、明治時代に建てられた当時の姿で蘇りました。
出石の街の人がまちづくりへの想いを込めた施設である永楽館では、一年を通して発表会や舞台芸能イベントなどが開かれています。その永楽館が力を入れており、全国でも知名度の高いイベントが「永楽館歌舞伎」。
写真:ゐさ よりこ
地図を見る歌舞伎を上演する劇場であった永楽館の復活を記念するイベントとしてふさわしいものは、やはり歌舞伎であろう、という発想から企画された「永楽館歌舞伎」。上方歌舞伎(主に関西地方で上演される歌舞伎)を代表する役者を招いて、オリジナルの台本で上演する歌舞伎上演会は、毎回、日本全国から観客が訪れて満席になるほどの大好評を博しています。
劇場の規模も構造も、東京都内にある「歌舞伎座」とは全く違うために、役者との距離が近く、臨場感たっぷりに観劇できる「永楽館歌舞伎」。出石の名物をふんだんに採り入れたご当地芝居、口上(役者が観客に向かって舞台上から行う挨拶)に出石の名物を登場させるユニークな演出は、永楽館限定のものです。
個人の趣味で建てられた芝居小屋であるだけに、他の劇場と比べるととてもコンパクトな「永楽館」。収容人数は1階席と2階席を合わせて368名と、歌舞伎座(席数1,964席)の約1/5。そのため、「役者の汗まで見える」と言われるほどに客席と舞台の距離が近く、2階席からも舞台がよく見えます。二階枡席の一番前なら、役者の頭が眼前に迫るほどに近い!臨場感にあふれ、役者の熱気まで感じられる歌舞伎が目の前で繰り広げられます。
1階の「桟敷」と呼ばれる形式の客席も、当時の芝居小屋の特徴をそのまま残したもの。座布団の上に座って、幕間にお弁当やお菓子などを食べ、名場面でやんやの喝采を浴びせる、そんな昔ながらの芝居見物のスタイルまで再現しています。
閉館によって明治時代に建てられた姿そのまま保たれていたために、内装も当時のまま。二階席の上にずらり並ぶ、レトロな看板と落書きは、もちろん今ではここでしか見られないもの。席についているだけで明治時代へタイムスリップした感覚になります。
提供元:出石永楽館
http://eirakukan.com/歌舞伎の上演に欠かせない、廻り舞台やセリ、花道などの舞台装置も、永楽館では当時のままに残され、現役で使われています。歌舞伎などの上演期間中を除いて舞台装置は、中まで入って見学することも出来ますので、「永楽館歌舞伎」のチケットが取れなかったとしても、十分に永楽館を楽しむことが出来ます。
永楽館は、中だけでなく外にも楽しみがいっぱいあります。永楽館のある場所は、出石の城下町のほぼ中央部で、出石城跡や辰鼓楼など、出石の名所の大半が徒歩圏内にあるのです。
出石といえば外せない存在が、名物「出石皿そば」。挽きたて、打ちたて、茹がきたての「三たて」が伝統とされる「出石皿そば」の店は、多くが「永楽館」から「大手門前通り」の間に集まっています。行列が途切れないミシュラン・ガイド兵庫版に掲載されている有名店もこの中に。「永楽館歌舞伎」が上演される秋は、新そばの季節なので、いっそう人気が高まります。芝居の後に、名店で蕎麦を手繰れば、手形がもらえる20皿なんてすぐに達成してしまうかも!?
「出石皿そば」のほかにも、美味しい物がいろいろある出石城下町。そばの実をかけたソフトクリームなどのスイーツもあります。
「永楽館歌舞伎」の日に合わせて事前に予約すると、地元の老舗料亭が地元食材を使って作るお弁当を食べながら観劇することも出来ます。
座頭である歌舞伎役者の写真が入ったお米「コウノトリが育むお米」は、歌舞伎見物をした日の記念になること間違いなし。
「但馬の小京都」のシンボルとも言える存在、永楽館。毎秋に開催される「永楽館歌舞伎」は、人気の役者が間近で見られるとあって全国から観客が訪れるため、チケットが取りにくいほどの人気興行。ですが、現地の観劇ツアー等とセットで取れることもあるので、空いている席を見つけたらぜひいらしてみて下さい。
関西の主要駅から特急で数時間の城下町に息づく、近畿最古の芝居小屋と、歌舞伎の熱気の組み合わせを、明治時代にタイムスリップした気分で楽しみませんか。
住所:兵庫県豊岡市出石町柳17-2
電話番号:0796-52-5300
アクセス:
JR京都駅から「特急きのさき」号にて豊岡・江原・八鹿駅下車(約2時間)、全但バス出石行き終点下車(約30分)
JR大阪駅からJR福知山線「特急北近畿きのさき」「特急こうのとり」にて豊岡・江原・八鹿駅下車(約2時間)、全但バス出石行き終点下車(約30分)
※永楽館歌舞伎上演期間中はJR新大阪駅から出石までの直通バスを運行(事前予約制、約3時間)
2018年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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