写真:和山 光一
地図を見る伝教大師最澄が開創した比叡山延暦寺の東の玄関、日吉大社の門前町として栄えてきた美しい石積みが残る延暦寺の里坊の町が坂本です。京阪坂本駅から比叡山系の八王子山をあおぎつつ緩やかな坂を上って鎮守の森に抱かれた日吉大社の聖域へ向かいます。
「日吉馬場」と呼ばれるメインストリートである真直ぐの幅広い参道は、中央の車道の両側に緑地帯があり、比叡山から流れるせせらぎが心地よい音をたてるすぐ横の土の道沿いに、自然のままの石積みが続きます。
写真:和山 光一
地図を見る美しい石積みは、里坊すなわち延暦寺で永年の修行を終えた老僧たちの隠居坊を囲む石の垣根です。坂本には50余りの里坊があり、表通りだけでなく、横丁へはいった裏通りにも穴太衆積みに格調ある土塀をめぐらした里坊がびっしり並んで門前町のおもかげを残しています。
写真:和山 光一
地図を見る「穴太衆積み」とは、「穴太衆」と呼ばれる坂本の穴太地区に古来から住み、比叡山の土木営繕的な御用を勤めていた石積み職人集団の手によるものです。さまざまな形の大きな自然石の隙間にいくつもの小石が混ざり、「品」の字型に積み、石の奥行きが長いのがポイントです。
写真の旧白豪院(現芙蓉園本館)の庭先にある穴太積みの洞窟入口は、映画「プリンセス トヨトミ」の冒頭のシーンに登場した抜け穴です。
写真:和山 光一
地図を見る最澄の生誕地とされる生源寺の交差点を左折し、昔ながらの町屋が軒を並べる「作り道」を曲がると、穴太衆積みの美しい御殿馬場の道にでます。この突き当り正面にあるのが、坂本随一とされる石垣がある「滋賀院門跡」です。
元和元年(1615)慈眼大師・天海が後陽成天皇より京都北白川の法勝寺の高閣を賜り建立されたものです。江戸時代まで、延暦寺の最高位僧職である天台座主となった法親王代々の居所であっただけに、高い格式を誇り、穴太衆積みの石垣もひときわ高く、石垣の上に白壁をめぐらした御成門は優雅な構えです。
<滋賀院門跡の基本情報>
住所:滋賀県大津市坂本4-6-1
電話番号:077-578-0130
写真:和山 光一
地図を見る滋賀院門跡の境内をぐるりと回ると、道は自然と隣の「慈眼堂」へと続き、木々も深くなります。ここは江戸幕府に仕えた慈眼大師・天海を祀る廟所で境内には十三体石仏群や多数の石塔が並んでいます。これらの中には、桓武天皇、徳川家康、紫式部、清少納言、和泉式部などの供養塔が並んでいますよ。【境内見学自由】
写真:和山 光一
地図を見る苔むした石の供養塔や石仏の間を抜け、権現馬場を上ると「日吉東照宮」に通じます。この社殿は、寛永11年(1634)天海僧正によって日光東照宮の雛型として造られたもので、本殿と拝殿を石の間で繋ぐいわゆる「権現造り」の発祥はここ日吉東照宮といわれています。内外の装飾がきわめて華やかで美しく、関西の日光として広く知られています。
まさに江戸情緒たっぷりの建造物を堪能した後、300m程歩いて日吉大社に向かいます。
<日吉東照宮の基本情報>
住所:滋賀県大津市坂本4-2-12
写真:和山 光一
地図を見る「日吉大社」は、2100年の歴史を誇る全国3800余りの分霊社(日吉、日枝、山王神社)の総本宮で、40万平方mからの膨大な境内には老樹が茂み、特に約3000本のもみじが彩る県内随一の紅葉の名所として知られています。平安京遷都時には都の表鬼門を守る方除け・厄除けを祈る社として、延暦寺が開かれて以降は天台宗の護法神として信仰を深めました。
その頃より魔除けの象徴とされた猿を神の使いとして迎え、「魔が去る」「勝る」に通じることから「神猿」と書いて「まさる」と呼んで大切に扱われるようになりました。猿に因んだ見所が多いので参拝しながら探してみて下さい。
写真:和山 光一
地図を見る大宮川に架かる日本最古の石橋「大宮橋」を渡ると、はるか向こうの西本宮まで「総合の坂」といわれる参道が続きます。参道の両脇からもみじが迫り、朱色の「山王鳥居」が映えます。この鳥居の上には山が付いていますが、この山はもちろん比叡山、神と仏が調和した神仏習合の信仰を表す独特の形で、両手を合わせ合掌しているように見えるので合掌鳥居とも呼ばれます。
その手前には「猿塚」と呼ばれる大きな石組があります。これは古墳の石室の蓋が露出したものです。この古墳の穴は唐崎(琵琶湖岸)まで通じているとか、神猿さんが年老いて自身の死期を悟ったときに自ら猿塚の中へ入っていくといった伝説があります。
写真:和山 光一
地図を見る総合の坂を上りきったところが西本宮です。重要文化財に指定されている西本宮楼門の軒裏四隅には、目を凝らすとそれぞれ違ったポーズの木造の神猿さんがいます。「棟持ち猿」といって屋根を支え、お参りに訪れる方々を見守っていますよ。
写真:和山 光一
地図を見る日枝の山(比叡山)は古くから神の宿る山として崇敬されてきた霊山で、古事記上巻に「日枝の山に坐す大山咋の大神」と記されていて、日吉大社は神代に創建されたことがうかがえます。その八王子山の地主神・大山咋神を東本宮に、大津宮遷都時に奈良の大神神社から勧請した大己貴神を西本宮に祀ります。両本殿ともに日吉造という独特の形で国宝に指定されています。
写真は西本宮拝殿に掛る円山応挙の高弟、長沢芦雪が描き、寛政4年(1792)に日吉大社へ奉納された親子の「猿図」の絵馬です。
写真:和山 光一
地図を見る神の使いであるお猿さんは、「神猿」と呼ばれ、「魔が去る・何よりも勝る」として縁起のよいものとされてきました。境内には魔除け、厄除けの「神猿みくじ」があり、金色の猿は金運も占います。
写真:和山 光一
地図を見る東本宮を出て坂を下る途中には振り替えればお猿さんのような石「猿の霊石」がお見送りをしてくれていますよ。正面から見た凹凸がしゃがみこんだお猿さんの形にそっくりです。
<日吉大社の基本情報>
住所:滋賀県大津市坂本5-1-1
電話番号:077-578-0009
アクセス:京阪石山坂本線坂本駅から徒歩10分
写真:和山 光一
地図を見る日吉大社から「山の辺の道」を歩くこと15分程、門前町坂本の北西部に位置する「西教寺」は、全国に400余りの末寺を有する天台真盛宗の総本山です。
7世紀の初めに聖徳太子が創建し、推古天皇の26年(618)に大窪山の号、天智天皇8年(669)に西教寺の号を下賜されたと伝わります。その後慈恵大師良源上人(元三大師)、恵心僧都(源信)らが10世紀に入山し栄えました。文明18年(1486)には中興の祖で宗祖でもある真盛上人が入堂し、堂塔と教法を再興したのが真盛宗の始まりです。
写真:和山 光一
地図を見る坂本城遺構の総門から参道を上ると正面に勅使門があり、さらに左に進むと宗祖大師殿境内にはいります。宗祖大師殿の唐門を額縁にして見る琵琶湖の眺望は素晴らしくフォトジェニックな一枚になりますよ。
写真:和山 光一
地図を見る勅使門の左手にある石段を上ると本堂境内で、広い境内には様々な史跡や建物があり古くから愛されてきたお寺の風格があります。伏見城の遺構である客殿では小堀遠州作の庭園や狩野派が描いた障子襖絵なども拝観できますよ。また奥に入ると明智光秀一族の墓もあります。
真盛の室町時代に暴徒が攻め込んできた際には、日吉大社の使者である「手白の猿(ましら)」が身代わりに本堂で鉦をたたき、真盛と寺を救ったそうで、日吉大社の使者である猿をお堂や門の屋根に配していますので探してみましょう。
<西教寺の基本情報>
住所:滋賀県大津市坂本5-13-1
電話番号:077-578-0013
世界遺産「比叡山延暦寺」を目指す参拝客が増えているなか、注目度をましているのが、比叡山のおひざ元・大津市坂本エリアです。
坂本から世界遺産「比叡山延暦寺」へは、昭和2年開業の日本一長いケーブルカーを利用すれば、山麓坂本駅と山上延暦寺駅間2025mを11分で結んでいます。延暦寺駅から東塔根本中堂まで徒歩8分ですし、山内バスを利用すると西塔、横川へも短時間で行くことができ便利です。
また大津市には天台宗の総本山である延暦寺(山門)・三井寺(寺門)・西教寺(盛門)の三寺が現存しています。紅葉の名所でもあり、眺望もよい日本天台三総本山をめぐってみるのもいいですね。
秋の風物詩、比叡山坂本ライトアップは今年も平成30年11月10日(土)〜11月25日(日)17:00〜20:30 まで行われます。期間中は坂本エリアの日吉大社、西教寺、滋賀院門跡、日吉参道などの歴史遺産と紅葉がライトアップされますよ。
2018年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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