「陰陽の滝」は称名寺の敷地内にあります。敷地は広大で、山門では「六地蔵」が出迎えてくれます。山門から滝まではさらに5分程度の距離を歩きます。称名寺は「阿弥陀三尊」を祀る浄土宗の寺院で、鬱蒼と茂る木々に囲まれた境内は川のせせらぎが響きます。
空海が開いたと伝わる霊場は、当初「円宗寺」という寺院の管轄でした。その後、江戸時代に高僧の直誉蓮人が本堂を再興し、現在に至ります。
台座に鎮座している賢そうな少年は一体誰なのでしょう?台座の説明には「勢至丸」という名が出てきます。この「勢至丸」という少年、実は後の浄土宗の開祖「法然」なのです!
父である「漆間時国」は美作国(現在の岡山県東北部)の豪族でしたが、敵方の不意打ちに遭い瀕死の状態に陥ります。時国は死の間際に勢至丸を呼び、自分の仇を討たずに出家する道を諭したと言われています。
再建されたばかりの鉄筋コンクリート造の本堂には『一心院』の額が掲げられています。
江戸時代には江ノ島の「弁財天」からお告げを受けた直誉蓮入が「今泉不動」で祈祷を行いました。すると大黒天像の俵から米がこぼれ出した為、蓮入上人と村人たちは「阿弥陀堂」などを建立し崇めたそうです。
高くそびえた門柱が「今泉不動」と「陰陽の滝」の分岐点です。この先の階段を登っていくと、空海が悟りを開いた「今泉不動」へ辿り着きます。一方、右斜めにある階段を下ると「陰陽の滝」へと続きます。
今泉不動は「不動明王」の石像を刻んで本尊として祀り、「大黒天」の石像を守護神として祀ったのが始まりだと伝わっています。
今泉不動に向かう階段は「鎌倉石」で造られ、かなりすり減っています。比較的柔らかい石なので角が取れ、丸みを帯びた状態は長年の信仰の現れと言えます。
さらに苔が生えていることで転倒しやすくなっており、非常に危険です。手すりというには頼りないですが、中央に設置されたチェーンを掴みながら、ゆっくりと登りましょう。
階段を登り切ると「今泉不動」(不動堂)に到着します。本堂の前にはベンチが二脚置かれているだけで、ほんの少しの風で木々がざわめきます。
空海が悟りを開いた場所だけあって、五感が研ぎ澄まされていくのが実感できます。木漏れ日の光は奥深い山には眩しく、本堂が神々しく映ります。
立て札の先の階段を降りて行くと「陰陽の滝」へ辿り着きます。陰陽の滝は「男瀧」と「女瀧」の大小の滝から成り、夏などは滝の水で顔を洗うと心も体もリフレッシュできます。
鎌倉の山々から湧き出る豊富な水は、所在地である「今泉」という地名の由来にもなっています。
818年、鎌倉の山々が神仙の棲む「金仙山」であることを空海が悟り訪れました。そこに姿を現した白髪の男女の仙人は「不動明王を彫り、霊場を開くように」と命じました。
その後、空海が不動明王に祈祷すると岩肌に2つの穴が開き、3日間祈祷すると水が湧き出して滝になったそうです。
糸のように白く伸びた滝が「男瀧」(おたき)です。滝壺までは奥行きがあり、近づくことはできません。
周辺は空気の密度が濃く、深呼吸をすると心身が浄化されたような気分になります。また、滝が流れる高さまで地層がくっきり確認できるのも、鎌倉の自然を楽しむポイントのひとつです。
今泉不動へ参拝する階段からも「陰陽の滝」を目視することができます。階段がきついため素通りしてしまう参拝者の方もいますが、湧き水であることが確認できます。
滝といえば、川の上流から一気に水が落下する激しいイメージを持ちます。しかし、「湧水型」である陰陽の滝の上部には落ち葉が積もっており、神秘的な印象を与えます。
1.2mほどの高さから湧き出るのが「女瀧(めたき)」です。水量が適度なので手を清めたり、顔を洗う参拝者の姿を見かけます。
足元がぬかるんでいる為、手荷物などは持たないほうが安全です。横に建てられた石碑には「空海」の名が刻まれており、不動尊の石仏も拝むことができます。
陰陽の滝の周辺は貯水池の役割も担っており、通常は枯れた状態になっていますがコンクリート壁に囲まれています。
陰陽の滝は「建長寺」へと続く「天園ハイキングコース」に繋がっており、3.8qにわたる「鎌倉アルプス」を堪能することができます。一帯は手付かずの自然が残されているので、武家の都・鎌倉とは違った魅力を肌で感じることができます。
時間を気にせずに散策しながら、空海が巡礼した旅路に想いを馳せてみてはいかがでしょうか?
住所:神奈川県鎌倉市今泉4丁目5-1
電話番号:0467-45-1774
アクセス:JR大船駅東口から江ノ電バス「鎌倉湖畔循環」行き「今泉不動」で下車、徒歩5分
参拝時間:8:30〜17:00
2018年12月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/4/19更新)
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