写真:木村 岳人
地図を見る青鬼集落には公共交通機関の類がありません。ですので、車か徒歩でアクセスすることになります。車の場合は、JR大糸線の「白馬駅」から約20分。徒歩の場合は「信濃森上駅」から約1時間の距離です。
くねくねとした山道を登って行くと、突如として視界が開け、大型の伝統家屋が視界に飛び込んできます。14棟の主屋と7棟の土蔵が肩を寄せ合って並ぶその光景はまさに圧巻の一言。迫力ある風景に、思わず目を見張ります。
青鬼集落は国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されていますが、特に観光地化されている訳ではなく、昔ながらの素朴な山村集落の散策を楽しむことができます(くれぐれも、住民の方々の迷惑にはならないようにしましょう)。
写真:木村 岳人
地図を見る今でこそ、青鬼集落は町から離れた静かな山村集落ですが、かつては鬼無里(きなさ)村を経て戸隠神社や善光寺へと至る、参詣道の途上に位置していました。
青鬼という地名も独特で、なんともドラマを感じさせられますが、実際、青鬼集落には次のような伝説が語られています。
遥か昔、鬼無里村に鬼のような大男が現れ、村人を苦しめていました。そこで人々は、岩戸山の中腹(青鬼集落の近く)に位置する底なし穴に大男を閉じ込めたのです。しばらくして、その大男が戸隠村に現れるようになりましたが、今度は人々を苦しめるどころか、助けるようになったといいます。
村人たちは、大男が穴を抜ける際に魂が入れ替わったのだろうと考え、以降はその大男を「お善鬼様」として祀るようになりました。
現在も、青鬼集落には善鬼大明神を祭神とする「青鬼神社」が鎮座しており、昔から続く祭事「火揉みの神事」が執り行われています。
写真:木村 岳人
地図を見る青鬼集落に並ぶ伝統家屋は、江戸時代に建てられた平屋のものと、明治時代に建てられた中二階建てのものが存在します。
そのうち中二階建てのものは、いずれも正面の屋根をすっぱりと切り落とした「かぶと造り」。正面から見ると、なるほど、確かに武士の兜のような形状ですね。
「かぶと造り」は屋根を切ることで二階部分の採光と風通しを良くした建築様式で、養蚕が盛んな長野県や群馬県、山梨県などで多く見られます。
通常の「かぶと造り」は妻側の屋根を切るのに対し、青鬼集落など北信濃のものは平側の屋根を切っており、どっしりと安定感のあるたたずまいとなっています。
写真:木村 岳人
地図を見る青鬼集落には「かぶと造り」の主屋以外にも、見どころが数多くあります。
主屋に付属する土蔵は、万が一の火災の際に被害を受けないよう、主屋から少し離れた位置に建てられています。冬になると雪囲いの藁が土蔵にかけられ、もこもこと可愛らしい装いになるのが面白いですね。
集落の中心部には、昭和の初期まで米搗きに使われていた「ガッタリ」と呼ばれるシシオドシのような水力精米機が復元されており、こちらもなかなか目を引きます。
また集落の入口には、集落の守り神である「庚申塔」や仲睦まじい夫婦を象った「双体道祖神」などの石碑が置かれており、青鬼集落にさらなる風情と魅力を与えています。
写真:木村 岳人
地図を見る青鬼集落を訪れた際には、ぜひともその背後に広がる棚田まで登って下さい。山の斜面に拓かれた青鬼の棚田からは、雄大な北アルプスの峰々を集落越しに望むことができるのです。
青鬼の棚田は全部で約200枚。江戸時代末期、村人総出で青鬼堰と呼ばれる用水路が引かれたことにより棚田を築くことが可能となり、この景観が生み出されました。
石垣を積んで築かれた棚田は、季節によって様々な表情を見せてくれます。またその眺めの良さも相まって、青鬼の棚田は「日本の棚田百選」にも選定されています。
今回ご紹介した青鬼の写真はすべて4月上旬。残雪もわずかとなり、ようやく春めいてきた頃のものです。この時期は北アルプスの山容が美しく、草木も少なくて集落内の見通しが利きやすい、写真を撮るには一番良い季節でしょう。
しかし、棚田に水が入れられる晩秋、青々と草木が茂る夏、稲穂が黄金色に垂れる秋など、季節ごとに違った風景が見られるのもまた魅力。
四季折々、その時々の風景を、ゆっくり散策しながら楽しむのが良いでしょう。
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この記事を書いたナビゲーター
木村 岳人
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