写真：浦賀 太一郎
地図を見る富山城は、室町時代前期～中期の頃に越中の守護代であった神保氏が築城したとされています。富山城下は、北陸街道と飛騨街道が交わる交通の要衝で、上杉謙信と一向一揆の攻防など、熾烈な争奪戦が繰り広げられた地でもあります。織田信長が天下布武を掲げ北陸へ進出して来ると、歴戦の勇将であった佐々成政を城主とし、城郭の大規模な改修を行いました。
写真：浦賀 太一郎
地図を見るやがて明智光秀の謀反によって本能寺で信長が討たれると、織田軍はもろくも胡散霧消。成政も、あと一歩まで追い詰めていた上杉氏の反撃にあってしまいます。羽柴秀吉が光秀を撃破すると、北陸軍団長であり、織田家筆頭であった柴田勝家と対立、成政は勝家に味方するも、時の勢いを得た秀吉が勝利。成政も富山を追われることとなります。
その時に詠んだとされる短歌の碑が、模擬天守（写真左下・富山市郷土博物館）の傍らに置かれています。成政がただの猛将というわけではなかったことが伺える見事な歌です。「何事も かはりはてたる 世の中に 知らでや雪の 白くふるらん」
写真：浦賀 太一郎
地図を見る成政の後には、秀吉から加賀、能登、越中の大部分を拝領した前田利家が120万石で入封し、関ヶ原で徳川家康が勝利を治め、江戸幕藩体制が敷かれると、前田家の分家として、越中富山藩10万石が成立します。
現在の富山城は、城郭の多くは戦災や都市開発で消失してしまいましたが、本丸付近のみ遺構が残り、富山城址公園として整備され、市民の憩いの場、富山観光の中心地として人々に親しまれています。
平成29（2017）年には、「続日本100名城」に選定されました。公園内には、富山を「薬都」として発展させた、富山藩二代目藩主・前田正甫（まさとし）の像が建てられています。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る現在の富山城域は、かつての規模よりは縮小していますが、往時を偲ぶ遺構はコンパクトに巡ることが出来ます。城址公園への東側の入口には、「千歳（ちとせ）御門」が移築現存しています。
千歳御門は、富山藩10代藩主・前田利保が隠居所として造営した千歳御殿の正門で、嘉永2（1849）年に建築されました。総欅造りの三間薬医門で、同様式の城門は、東京大学の「赤門（重文）」など数少なく、大変貴重な遺構です。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る江戸期の富山城は、北面に流れる神通川を天然の要害とし、水堀を二重に巡らせた、平城の近世城郭でした。川面に浮かぶように見える富山城は、「浮城」の異名で知られていましたが、水害も多かったようです。明治期から今日にかけて整備され、今では公園の北側に流れる松川が、その名残を偲ぶ富山市の一風景となっています。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る富山城の本丸には庭園があったとされています。史料が少なくその全貌は解明されていないそうですが、庭園跡地の辺りに和風庭園が造営されていて、往時とは違う風景かもしれませんが、浮城と称された富山城の雰囲気を味わうことが出来ますよ。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る実は富山城は、石垣ではなく、土塁が多くの部分を占めるお城でした。鉄門の石垣は、調査の結果、元々の土塁を改修し、石垣に変えたことが分かっています。現在の鉄門跡石垣には、昭和29（1954）年に戦災復興のシンボルとして完成された郷土博物館（写真）が建っています。
写真右の多聞櫓台の石垣は戦国時代の名残を思わせる荒々しい「野面積」。写真正面の鉄門石垣は、方形に加工された石を水平に積む「布積」が用いられ、城主の聡明さを醸し出しています。
写真：浦賀 太一郎
地図を見るまた、鉄門の石垣には所々に巨石が使われているのが大きな特徴です。これは、「鏡石」という意匠で、城主の威厳や財力を誇示するために用いられていたとされています。鉄門虎口には、様々な形をした鏡石が、5個もあって、これだけ近距離に5つも集中しているのはとても珍しいんですよ！
写真：浦賀 太一郎
地図を見る搦手門跡（公園北東側）にも野面積の石垣が遺っています。現在は佐藤記念美術館が建っていますが、土台の石垣は立派な現存遺構です。石垣の隅角には、崩れにくくするために、長短の石が交互になるよう石垣の隅部を積み上げていく「算木積」も見ることが出来ます。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る既に触れましたが、富山城の模擬天守は、郷土博物館であり、往時の姿を留めてはいません。ですが、国宝の犬山城や彦根城を見本にしたという望楼型三重四階天守、二重二階の小天守という堂々たる意匠を持つこの天守は、戦災復興の象徴として戦後の富山市民を大いに励まし、後に全国に広まる昭和の天守閣建設のさきがけとなりました。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る建設から半世紀を超える郷土博物館は、戦後復興期を代表する建築物として、国登録有形文化財に登録されています。夜間はライトアップが行なわれています。公園内からもお堀の外からも望むことができ、赤や青など、刻々と色合いが変わっていきます。おすすめは、お堀端のベンチ。座って天守夜景に見惚れつつ物思いにふけるという、凄まじい贅沢を味わうことができますよ！
写真：浦賀 太一郎
地図を見る千歳御門もぼんやり照らされて良い雰囲気です。ほかにも富山市街には、県庁前公園や富山駅など、夜景が綺麗なスポットがあるんですよ！
写真：浦賀 太一郎
地図を見る熱っぽく天守付近の石垣に見惚れていると、見落としがちなのが、富山城古来の趣を物語る「土塁」の存在。先述の通り石垣が築かれたのは大手と搦手のみで、実は近世城郭としては珍しい、「土塁の城」だったとも言えるのです。
今では、本丸の広場の片隅に遺る天守東側の土塁と、西の丸土塁跡（写真）が、最初の築城主である神保氏や佐々氏といった、富山城の初期の風景を少しでも偲べるよすがとなっています。
写真：浦賀 太一郎
地図を見る郷土博物館内は大変興味深い展示が並びます。前田利長が使用したと伝えられている銀鯰尾形兜（ぎんなまずおなりかぶと）をはじめ、神保氏の興亡や佐々氏のこと、江戸期の富山など多岐に渡っています。
一部展示を除き写真撮影もOK（フラッシュはNG)なので、帰ってから復習ができるのも嬉しい所です。天守望楼からは本丸広場や大手町、総曲輪といった城郭の名が残る町を見渡すことが出来ます。
＜富山城址公園の基本情報＞
住所：富山県富山市本丸1-62（郷土博物館）
電話番号：076-432-7911
アクセス：富山駅から徒歩10分
開城時間：9:00～17:00（入館16:30まで。休館日は12月28日～1月4日・展示替え等による臨時休館あり）※城址公園内は常時開放
ライトアップ：日没～22:00
写真：浦賀 太一郎
地図を見る最後に、富山城の全体像を俯瞰できる、とっておきのスポットを紹介します！それは、富山市役所です。富山市役所には地上70mの展望塔（無料）があって、立山連峰を眺める絶景が広がっているのです。もちろん富山城もすっぽりと富山市街の箱庭風景に溶け込んでいて、お城なのにとってもカワイイんですよ！
＜富山市役所展望塔の基本情報＞
住所：富山県富山市新桜町7-38
電話番号：076-431-6111
アクセス：富山駅から徒歩8分
開城時間：
4～10月は平日9:00～21:00、土日祝10:00～21:00
11～3月は平日9:00～18:00、土日祝10:00～18:00
日中も夜間も楽しめる富山城。実は二度もの廃城を乗り越えて今日に至る、蘇りの城でもあるんです。コンパクトに巡ることができるのもgoodです。北陸・富山の旅なら、ぜひ富山城へ立ち寄って、富山の歴史を感じてみてください！
2019年12月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/4/20更新)
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