写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る横山美術館のある名古屋市東区には、かつて多くの陶磁器工場が建ち並んでいました。
しかしそれらの陶磁器は日本人の目に触れることなく海外へ渡り、高度な技術があったことを知る日本人はいまでは少数派です。
素晴らしい作品たちを里帰りさせたい。
日本にこれだけの技術があったことをもっと日本人に知ってもらいたい。
横山美術館は、そんな情熱から誕生しました。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る公益財団法人 横山美術館の理事長・横山博一氏と輸出用陶磁器の出会いは、オールドノリタケの「ジュール金盛薔薇図花瓶」。
ニューヨーク在住の友人が持ち帰ったこの花瓶の美しさと精巧さに感動し、この職人技が現代の日本人に知られていないのはもったいないとコレクションを開始するに至ったのです。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る横山美術館1階は、さきほどの「ジュール金盛薔薇図花瓶」をはじめ、コレクションの中心となる大型作品が展示されています。
精密な和風の絵柄が描かれた花瓶や染付の藍色が美しい瀬戸焼など、細部までじっくり鑑賞したい作品ばかり。ちなみに「花瓶」といっても実際に花を生けるためではなく、装飾用の調度品です。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る横山美術館誕生のきっかけとなったオールドノリタケは、収蔵数も多く、花瓶や食器にとどまらないバラエティ豊かなコレクションです。
オールドノリタケの展示は主に3階。フロア入口で迎えてくれるのは、オールドノリタケファンなら思わず歓声があがる鮮やかな青のティーセットです。
※展示内容は2019年2月現在。展示作品や配置は随時入れ替わります。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る金の縁取りやピンクの花など、オールドノリタケらしいコレクションも豊富。絞り出した絵具の粒に金などを塗って焼き付けた「ビーディング」など、気の遠くなるほど丹念な技術も鑑賞できます。
いまなお輝きの美しい金色を保ち続けているのは、輸出用には金の含有量の多い金液を塗っていたためです。
オールドノリタケ(森村組)は当時、ニューヨークに日本人を派遣してデザイン部門を置いていました。アメリカ人の好みや最新の流行を取り入れられたのは、そんな思い切った方針のおかげでもあったのです。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見るラスター彩(さい)というキラキラ光る技法を用いたキュートなキャンディケースなども、オールドノリタケ。
ポップでユーモラス、それでいて上品な作品の数々が並んでいます。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る洋風の陶磁器だけでなく、日本的なモチーフの陶磁器や立体的な装飾技法である高浮彫(たかうきぼり)も人気がありました。
2階には、高浮彫を大成させた眞葛焼(まくずやき)の創始者・初代 宮川香山の作品も数多く展示されています。
※眞葛焼の「葛」は正式には下の部分が「ヒ」
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見るこちらは「高浮彫鳩桜花瓶」の一部ですが、まさに超絶技巧!
高浮彫の技術はもとより、この繊細な装飾を貼りつけたまま焼き上げている製陶技術そのものに感銘を受けます。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る現在の愛知県瀬戸市に生まれた井上良齋らが、東京・隅田川のそばで作っていたのが隅田焼。こちらも高浮彫の技法が用いられています。
いまにも動き出しそうな生き生きとした人々や動物がモチーフとなっており、その物語性はまるで一冊の絵本のよう。見飽きることがありません。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見るかつて数多くの陶磁器工場が立ち並んでいたという名古屋。名古屋で行われていたのは、主に絵付け作業でした。
名古屋絵付けの特徴のひとつは、華やかな色使い。「上絵金彩花鳥図蓋付壺」(左上)は、モダンな青やピンクと和風の花鳥画を合わせたセンスあふれる作品です。
名古屋の七宝職人・竹内忠兵衛が特許を取得した「石目焼」も非常に特徴的な技法。
ガラス分を含んだ粉を散布してから焼成するため、サメ肌のような独特の質感です。
水色の背景に鳥や花が描かれた作品が多く、つい見入ってしまいます。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る2019年6月1日〜10月31日は、4階で企画展「魅了する 煌めく薩摩」が開催されています。
鹿児島で誕生した絢爛豪華な薩摩焼は、慶応3年のパリ万博に出品された輸出陶磁器の先駆け的存在。明治・大正時代には、長崎・京都・金沢・東京・名古屋など各地で薩摩様式の陶器が作られるようになりました。そしてそれらは「SATSUMA」として、盛んに輸出されるようになったのです。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る薩摩焼の起源は、朝鮮出兵の際に島津義弘が鹿児島に連れ帰った陶工たち。義弘は陶工たちに改名や生活習慣の変更を強いることなく、職人として大切に庇護しました。
輸出陶磁器としての薩摩焼によく見られる特徴は、額縁のように囲った枠の中に武者絵や美人絵などを描く「窓絵」、その周囲を分割し細かな小紋柄を描く「割文様」、透明な釉薬に生じさせるごく細かなひび割れ、そして煌びやかな金彩です。
描かれるモチーフは欧米の流行によって変わりましたが、シノワズリ(中国風)とジャポニズム(日本風)が融合していることも珍しくありません。写真の「上絵金彩人物図獅子鈕飾壺」には、武者絵の上に唐子が立っています。
写真:一番ヶ瀬 絵梨子
地図を見る薩摩焼は日本各地で作られていたため、地域性に注目するのも鑑賞のポイント。
例えば、横山美術館のある名古屋で作られていた薩摩焼では、派手好きと堅実さが共存する気質のせいか、金彩をふんだんに施す一方で、縁取りが金ではなく黄色の絵具であることも。とはいえ黄色は単なる金の節約ではなく、名古屋絵付けの特徴である「盛上」(絵具を盛り上げて装飾する技法)の技法を用い、得意分野を巧みに生かす工夫が施されています。
住所:名古屋市東区葵一丁目1番21号
電話番号:052-931-0006
アクセス:
名古屋市営地下鉄東山線「新栄町」駅(1番出口)徒歩4分
名古屋市営地下鉄桜通線「高岳」駅(3番出口)徒歩4分
開館時間:午前10時〜午後5時(最終入館時間 午後4時30分)
休館日:毎週月曜日(祝・休日の場合開館、翌平日休館)、8/13-8/15、年末年始
入館料:大人 1000円(700円)、高・大学生・65歳以上 800円(500円)、中学生600円(400円)、小学生以下無料
※()内は常設展のみ開催時の料金、各種割引は公式サイトで確認してください。
2019年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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