長崎県では「長崎めぐり旅」と題した現地発着ツアーや体験プログラムを提案している。詳しくは公式ページを参考にしてもらいたいが、ガイドと一緒にめぐる観光タクシーは現地観光の強い味方だ。
特に観光目的での移動手段がほぼ車に限られる長崎外海(そとめ)へは「長崎めぐり旅 キリシタン紀行〜世界遺産 外海編〜外海と共に生きたド・ロ神父の偉業にふれる旅」をおすすめしたい。
写真:塚本 隆司
地図を見る利用方法は「長崎めぐり旅」サイトから3日前までに予約。出発地は、JR長崎駅近くのNHK長崎放送局向かい「大村ボート行きバス乗り場」。キリシタンの歴史に興味があるなら外せないスポット「日本二十六聖人殉教記念碑」の近くだ。
写真:塚本 隆司
地図を見る2〜3人ならタクシーで、グループ旅行ならジャンボタクシーに乗り込み、ドライバーの長崎言葉に旅情を感じながらの旅が始まる。
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地図を見る長崎県の外海町は、角力灘(五島灘)に面した「陸の孤島」と呼ばれた道なき地。船を使っての往来が主流だったほどだ。近年はトンネルも通っているが、大型バスでは入れない細き道も多い。
まずは簡単に外海が潜伏キリシタンにとってどのような土地だったのかをふれておこう。
江戸時代、弾圧を逃れようとするキリシタンにとって役人の目が届きにくい外海は格好の潜伏地となる。表向きは寺の檀家や神社の氏子として信仰を守るなか、1800年頃の五島への開拓移住を機に多くのキリシタンが五島列島へと逃れた。
明治になり禁教の高札が取り除かれ、フランス人のマルク・マリー・ド・ロ神父(1840−1914)が外海に赴任する。外海の貧しい境遇を救おうと尽力した神父への感謝は、偉業を示す品々とともに今に伝わっている。
写真:塚本 隆司
地図を見る写真は黒崎教会。ド・ロ神父の指導で造成した地に信徒がレンガを積み上げて完成させた。
写真:塚本 隆司
地図を見る禁教が解かれた後、全ての潜伏キリシタンがカトリックに復帰したわけではない。260年の間守り続けた信仰の形を変えなかった人たちもいる。
黒崎教会のたもとに「外海潜伏キリシタン文化資料館」がある。カトリックに復帰しなかった家に生まれた人が個人で開いた小さな史料館だ。解説を聞きながら眺める貴重な品々は、まさに心打たれるものばかり。どんな博物館の展示もかなわない重みがある。
黒崎教会から車で10分ほど行けば、枯松(かれまつ)神社に着く。
写真:塚本 隆司
地図を見る途中「祈りの岩」と呼ばれる大岩がある。潜伏期の約250年間、文字や形に残せない信仰が受け継がれた奇跡の場所だ。年に1度、復活祭前の「悲しみの節」の夜、この地で祈りの言葉「オラショ」が岩陰でひそかに口伝された。
写真:塚本 隆司
地図を見る枯松神社は、日本人伝道士バスチャンの師サン・ジワンの墓といわれている。明治になり神社となった。キリシタンを祀る神社は、日本には数例しかない。
ここは潜伏キリシタンらの墓地でもあった(現在は移転)。密かに信仰を守った苦労をガイドドライバーが見せてくれる。
墓(長墓)の石の上に白い小石を十字に並べ、親指を交差させクロスを作り祈る。祈りが終われば、小石は集めて脇に置いておく。信者以外が来てもわからない工夫だ。
写真:塚本 隆司
地図を見るド・ロ神父が来日したのは、禁教期の幕末。1879(明治12)年に出津(しつ)教会主任司祭として赴任し、1882(明治15)年に出津教会堂を建設した。ド・ロ神父が関わった教会は美しい姿をしている。
写真:塚本 隆司
地図を見る出津教会堂から徒歩で5分、ド・ロ神父記念館や旧出津救助院がある。ド・ロ神父記念館には、住民の生活向上と地域整備のため神父が私財を投じてもたらした品々が残されている。
旧出津救助院は、女性の自立を促すために建てられた。2階では130年前の柱時計が今も時を告げ、当時の最新式のハルモニウム(オルガン)を弾くことができる。
写真:塚本 隆司
地図を見る貧しき地のため「食べること」を最重要と考えた神父は、耕作地の開拓にも力を注いだ。「食べ処 ヴォスロール」では、神父が開墾した畑「ド・ロ様畑」から収穫した野菜や小麦を使ったパスタやパンなど神父ゆかりの食事がいただける(観光タクシープランは、ヴォスロールでの食事付き)。
写真:塚本 隆司
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写真:塚本 隆司
地図を見る出津教会堂から、車で約10分。わずか26戸の信者のため、神父が設計施工した小さな教会「大野教会堂」がある。マリア像がなければ、民家としか思えない。
玄武岩を積み上げ強い海風にも耐えられる外壁「ド・ロ壁」と屋根にあしらわれた十字架が印象的だ。
写真:塚本 隆司
地図を見る山中には、伝説の日本人伝道士バスチャンが隠れ住んだ場所を再現したバスチャン屋敷跡がある。禁教令により外国人宣教師が追放となった後の日本人指導者で「7代のちに海の向こうから、告白を聞く司祭がやってくる」と予言し、人々に希望を与えた。事実その通りになっている。
写真:塚本 隆司
地図を見る遠藤周作の小説『沈黙』の舞台「トモギ村」は黒崎のことだ。映画化した『沈黙―サイレンス―』のマーティン・スコセッシ監督も実際にこの地を訪れている。
黒崎教会近く「道の駅そとめ」の隣りに五島列島を望む海に向かい「遠藤周作文学館」が建つ。外海を旅するなら『沈黙』を読んでから訪れると実感がわくだろう。
長崎外海の旅は、見るだけではもったいない。ガイドドライバーが同行してくれる観光タクシーなら、効率的に回れるうえ説明もあり、中身の濃い旅となる。外海で潜伏キリシタン関連を巡るなら、観光タクシーはありがたい旅の味方だ。利用して損はない。
2019年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
取材協力:長崎県
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