日本の近代化を進めた!群馬の知られざる絹遺産を巡る

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日本の近代化を進めた!群馬の知られざる絹遺産を巡る

日本の近代化を進めた!群馬の知られざる絹遺産を巡る

更新日:2019/03/06 11:20

神山 かなえのプロフィール写真 神山 かなえ 地域研究家

高級品とされる絹。その良質な生糸の大量生産技術は、明治期に日本人によって生み出されました。それを今に伝えているのが、群馬県の絹産業遺産群です。数あるなかでも富岡製糸場が知られていますが、今回は現在も稼働する日本最大の製糸工場である碓氷製糸株式会社と、優れた養蚕法を広めた高山社跡、養蚕農家の原型となる田島弥平旧宅をご紹介します。碓氷から藤岡市、そして伊勢崎市へと車でまわるコースです。

日本最大!素朴ながら力強い機械製糸工場を見学

日本最大!素朴ながら力強い機械製糸工場を見学

写真:神山 かなえ

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ごつごつとした岩肌が特徴的な妙義山のふもとに、日本最大の製糸工場である碓氷製糸株式会社があり、工場見学ができます。(5名から受け入れ、要事前申込み)

見どころは、なんといっても繭(まゆ)から糸を引き出す機械。ずらりと並んだ機械からひっきりなしに糸が繰り出されています。やわらかく煮た繭から糸を引き出す繰糸機は生糸輸出の全盛期には各地にありましたが、現在ではここ碓氷のほか山形県酒田市の松岡と2か所のみ。完全な機械まかせではなく、不良が出たときは装置がサインを出すので人の手によって作業がなされます。素朴な機械と人の手とのバランスが取れた工程を経て、生糸が出来上がっていくのです。

日本最大!素朴ながら力強い機械製糸工場を見学

写真:神山 かなえ

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煮あがった繭から最初の糸を引き出す工程。蚕の吐きはじめの糸は生糸にはならず、別に巻き取られます。もうもうと蒸気が上がり、繭を送りだしながら回転を続ける機械の動きは迫力があります。繭をなぞって糸を引き出すハケのようなものは、稲の穂先で作られた「みご箒(ほうき)」です。装置の一部に自然が使われていることにも注目です。

日本最大!素朴ながら力強い機械製糸工場を見学

写真:神山 かなえ

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工程ごとに建物が分かれている工場内。施設どうしはパイプによって繋がっていて、各工程を経た繭が送られていきます。敷地内を歩いていると、ちょっとした迷路のように感じるでしょう。農家によって育てられた繭は工場にやってくるとまず乾燥させられ、倉庫に保管。製糸する分のみ繭を倉庫から出し、選別をうけたあと煮ます。

製品づくりで出てきたすべてを無駄にしない

製品づくりで出てきたすべてを無駄にしない

写真:神山 かなえ

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繭から糸を引き出すときにもつれて生糸にならなかった糸は「キビソ」と呼ばれ、絹紡糸などの原料になります。糸くずはパウダーへ。サナギは鯉のエサとして加工されるなど、作業工程で出たものは無駄にせずに使われます。

製品づくりで出てきたすべてを無駄にしない

写真:神山 かなえ

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糸の巻き方によって機械も異なります。じっくりと観察しながら、見学を楽しんでくださいね。見学だけでなく、希望すれば製糸工程の作業体験もできます。所要時間は30分から1時間。見学後は、絹製品が購入できる販売所へ。他では買えない生糸そのものも売っているので、お土産にもおすすめです。

<碓氷製糸株式会社 工場見学の基本情報>
住所:群馬県安中市松井田町新堀甲909番地
電話番号:027-393-1101
人数:5〜50人(小学生以上)
料金:5〜9人の場合(一人500円)、10人以上(1組5000円)

世界遺産!全国に優れた養蚕法を広めた教育機関「高山社跡」

世界遺産!全国に優れた養蚕法を広めた教育機関「高山社跡」

写真:神山 かなえ

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碓氷製糸株式会社から、山々を眺めながら富岡、甘楽を過ぎ、藤岡市へ。

涼しげな竹林を背に立つ凛々しい姿の像は、養蚕教育機関である高山社を設立した高山長五郎像です。高山社跡を知る上で、長五郎の取組みのあらましは外すことができません。

江戸時代後期生まれの長五郎は、村のために現金収入を上げようと生糸に注目しました。当時、ヨーロッパでは蚕の病気が流行り、生糸が取れなくなっていたため、日本から生糸を輸出するチャンスでした。

試行錯誤の末、明治16年(1883年)に、管理の難しかった蚕の優れた飼育法を確立した長五郎。これにより、繭(まゆ)の収量と品質が向上し、保温と換気を重要とする「清温育(せいおんいく)」を広めるため、教育機関高山社を作り全国から集まる生徒に教えました。こうして、数多くの養蚕教師を全国へ送り出したことで、優れた養蚕技術が全国に広まったのです。

世界遺産!全国に優れた養蚕法を広めた教育機関「高山社跡」

写真:神山 かなえ

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高山社跡の敷地内には、高山家の旧宅(住宅兼蚕室)が残っています。日本の近代化における養蚕業の発展に重要な役割を果たしたとして、敷地全体が世界遺産に登録されています。お庭も立派で、シーズンには美しい花を咲かせる梅の古木にも注目!駐車場から高山社跡までの小川沿いは竹林の遊歩道となっていて、ちょっとした散策も楽しめます。竹林の入口横には高山社情報館があり、高山社のあらましについて知ることができます。

保温と換気に重点をおく「清温育」が行われた養蚕室

保温と換気に重点をおく「清温育」が行われた養蚕室

写真:神山 かなえ

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母屋の2階に上がると養蚕室があります。1階のいろりの温風で室内があたためられる工夫や風通しをよくするための建築が見どころです。

スマートフォンを使った音声ガイドのほか、現地解説員の説明を聞くことができるのでわからないことはぜひ尋ねてみてくださいね。

<高山社跡の基本情報>
住所:群馬県藤岡市高山237
電話番号:0274-23-7703
営業時間:9:00〜17:00
休館日:12月28日〜1月4日
アクセス:
上信越自動車道藤岡ICから約20分(車)
JR八高線群馬藤岡駅から約30〜35分(バス)

蚕の飼育に合わせた独特の建築が見物!田島弥平旧宅

蚕の飼育に合わせた独特の建築が見物!田島弥平旧宅

写真:神山 かなえ

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藤岡市から伊勢崎市へ。埼玉県との県境、利根川をはさんだ飛び地に、明治初期に養蚕業で活躍した田島弥平の旧宅があります。蚕が卵を産み付けた紙である産卵紙を保管する種蔵、井戸、蚕のエサになる桑を保管したり加工するための桑場、門などが当時のまま残っています。(現在も人が住んでいるため、主屋(おもや)は外観のみの見学)

東門を入ると目に入る縦長の大きな建物が主屋です。今はありませんが、隣にあった新蚕室(しんさんしつ)という、蚕を飼育する場所を結んでいた渡り廊下の一部が張り出しています。この建物の見どころは、屋根の上に作られた櫓(やぐら)。この地域のほか、群馬県の養蚕農家に見られる櫓は、蚕を飼育する場所の換気をするもので、2階部分の窓が大きくとられているのも特徴です。田島弥平は養蚕には風通しが重要と考えました。この飼育法は後に、高山社を設立した高山長五郎に取り入れられます。

旧宅の周辺には、同じような養蚕農家がいくつかあり、櫓のついた古い建物を見ながら散策を楽しめます。

蚕の飼育に合わせた独特の建築が見物!田島弥平旧宅

写真:神山 かなえ

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旧伊勢崎市立境島小学校内にある案内所には、村と養蚕業の関わりから田島弥平が行った事業までパネル展示がなされています。敷地内に駐車場がありますので、ここに車をとめて田島弥平旧宅へ行く前に立ち寄っていくとより理解が深まるでしょう。

旧宅がある境島村地区は江戸時代から蚕の卵の製造がさかんな地域でした。田島弥平は優良な蚕の卵を生産する養蚕技法を生み出し、イタリアへ直接販売しました。養蚕法を生み出しただけでなく、商人としても活躍したのです。案内所では、弥平が作った産卵紙も見ることができます。

<田島弥平旧宅案内所の基本情報>
住所:伊勢崎市境島村1968-378
電話番号:0270-61-5924
開館時間:9:00〜16:00(田島弥平旧宅も同じ)
休館日:12月29日〜1月3日
アクセス(車):
北関東自動車道伊勢崎ICから約30分
関越自動車道本庄児玉ICから約20分

見どころたっぷり!群馬県の絹遺産群

県内にはまだまだ紹介しきれないほどの絹遺産があります。今回ご紹介したほか、蚕にまつわる神社やレンガ造りの倉庫、蚕の卵を貯蔵した天然の風穴など見どころがたくさん。観光の合間には、道の駅に立ち寄ってお買いものや食事も楽しいですね。

高山社跡や田島弥平旧宅からアクセスが便利な道の駅ふじおか(ららん藤岡)では、広々とした敷地内で群馬の農産物を取り扱っているほか、土地のものを使った食事処があります。また、小さな観覧車があるなど、子供連れでものんびりできますね。
ぜひ何度も訪れて、絹遺産を生んだ群馬の魅力に触れてみてください。

2019年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

取材協力:群馬県観光物産国際協会

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/02/22 訪問

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