群馬県中之条町にある旧太子駅。かつて町内にあった群馬鉄山において採掘されていた鉄鉱石を搬出するための拠点として、鉄の需要が急増した太平洋戦争中の昭和20年に 日本鋼管群馬鉄山専用線(のちの国鉄長野原線)の貨物駅として開業しました。
戦後は旅客駅としても営業をしていましたが、群馬鉄山の閉山や沿線の人口減少により、昭和46年に国鉄長野原線の太子駅から長野原駅(現JR長野原草津口駅)の間が廃止、それに伴い太子駅もその役割を終えました。
廃駅となった太子駅ですが、その後も鉄鉱石の積込み施設や車止めなどの一部遺構が残されたままとなっていました。しかし、近年になってから公園としての整備が決定し、埋もれていた遺構の発掘やホーム、駅舎の復元作業が行われました。そして昨年、平成30年に公開が開始、旧太子駅の遺構を誰でも見学できる施設となりました。
旧太子駅に残る巨大なコンクリート製の遺構。これは鉄山で採取された鉄鉱石を貯めて、貨車に積み込む「ホッパー」と呼ばれる施設の跡です。太子駅が現役の時は、群馬鉄山から索道(貨物用ロープウェイ)で運ばれてきた鉄鉱石を、このホッパー上部の貯炭槽に貯めていました。その後、ホッパー下部の引き込み線に入れた貨車に鉄鉱石を積込み、製鉄所のある川崎などに運び出していました。
ホッパーが稼働していた当時は貯炭槽を含め四階建ての巨大な建造物でしたが、現在、遺構として残っているのはその一階部分のみです。それも、廃駅後は一部が土に埋もれている状態でしたが、近年の整備により施設全体と線路の一部が発掘されました。そのおかげで、今でもホッパーが現役当時の雰囲気を見ることができます。
コンクリートの柱が連なる光景はまるで古代の遺跡のよう。このホッパー跡は幻想的な廃墟の写真が撮れるスポットとして、SNSでも徐々に話題になっています。しかし、建設されてから70年以上が経過しているため、柱や天井が崩れかけている場所があります。柵などはないですが、崩壊したコンクリート片が落ちてくることがあるので、ホッパーの中に入っての撮影はやめましょう。
旧太子駅の立派な駅舎。これは太子駅が現役だった当時の駅舎の姿を平成30年に復元したものです。駅舎内に展示されている往時の写真を見ると、駅舎の形だけでなく駅の看板まで、隈なく再現されていることがわかります。
この駅舎は旧太子駅の入り口となっており、駅の窓口を模した部分が受付となっているなど、実際の駅の雰囲気を感じることができます。また、ここは資料館となっていて、太子駅の現役時代の写真や今では珍しい列車の行先標や時刻表など、太子駅や長野原線の豊富な資料を見ることができます。
旧太子駅では駅舎やホッパーだけでなく、当時から残る列車の車止めや、復元された旅客用のホームと線路が展示されています。また、線路上には大井川鐵道やひたちなか海浜鉄道から譲り受けた貨車が展示されており、太子駅が現役当時、貨物列車が運行されていた雰囲気を感じることができます。
整備が行われてから、誰でも気軽に鉄道遺構を見学できるようになった旧太子駅。鉄道好きや廃墟好きでない方も、この駅の歴史や、他ではなかなか見ることのできない遺構の迫力を感じに、旧太子駅を訪れてみてはいかがでしょうか?
住所:群馬県吾妻郡中之条町大字太子251-4
電話番号:0279-95-3055
アクセス:JR長野原草津口からバスで約15分「太子」下車後、徒歩約5分
入館料:200円、中之条町民と中学生以下は無料
開館時間:10:00〜16:00
休館日:12月31日、1月1日 ※2019年4月1日から
2019年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/10/6更新)
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