千数百年の伝統!奈良県の工芸品を一堂に集めた「なら工藝館」

千数百年の伝統!奈良県の工芸品を一堂に集めた「なら工藝館」

更新日:2014/04/15 19:16

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
千数百年の歴史を誇る古都・奈良には、その長い年月によって培われた、数々の工芸品が伝えられています。その多くは、日本の伝統文化を代表するものばかり。そんな奈良の工芸品を一堂に集め、展示・販売をしている施設が、奈良町の一角にある「なら工藝館」です。今回はなら工藝館の展示品の一部を紹介し、奈良がいかに豊かな伝統工芸を伝えているか、ご紹介しましょう。

等身大の迫力!奈良の伝統彫刻・一刀彫の大鹿

等身大の迫力!奈良の伝統彫刻・一刀彫の大鹿

写真:乾口 達司

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一刀彫とは、その名のとおり、小刀1本で対象物を彫り上げる伝統的な木彫り技法のこと。あえて荒削りな状態にとどめている点に特徴があり、その技法は、江戸時代以降、奈良を中心に発展しました。奈良といえば、やはり、鹿!なら工藝館には、その鹿を題材にした一刀彫も展示されています。写真は、皇室への献上品なども製作している奈良県出身の彫刻家・神箸東林氏の作品「春日野(鹿)」。その大きさは等身大で、迫力に満ちています。

平安以来の伝統を伝える奈良人形の数々

平安以来の伝統を伝える奈良人形の数々

写真:乾口 達司

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一刀彫が普及する以前から、奈良では舞楽や能楽といった伝統芸能をモチーフにした木彫りの人形が製作されていました。「奈良人形」です。そのはじまりは、平安時代末期。春日大社の春日若宮おん祭では田楽が演じられますが、「奈良人形」は、おん祭りの際、田楽法師の頭の上にのせる大きな花笠や盃台から起こって来たといわれています。その精緻な造型や鮮やかな色彩が人形自体の持つ存在感を際立たせており、奈良の伝統工芸を代表する工芸品であるといえるでしょう。

独自の社会環境から発展した墨と筆

独自の社会環境から発展した墨と筆

写真:乾口 達司

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墨や筆も奈良の特産品。古代以来、有力な神社仏閣を数多く有してきた奈良では、僧侶や神職が写経などで墨や筆を使う機会が多く、その受容の高さから、墨や筆の製造がさかんにおこなわれてきました。いまでもその伝統は受け継がれており、興福寺や東大寺などが点在する近鉄奈良駅の周辺では、製墨会社や製筆会社、さらにはそれらを販売するお店を幾つも見かけることができます。一口に墨や筆といっても、小さなものから大きなものまでいろいろ。特に墨の造型は多彩で、墨といえば、墨汁を思い浮かべる人には、新鮮に感じられるでしょう。

ご存知でしたか?全国生産シェア90パーセントを誇る高山地区の茶筌

ご存知でしたか?全国生産シェア90パーセントを誇る高山地区の茶筌

写真:乾口 達司

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茶道の必須アイテムといえば、茶筌!実は茶筌も奈良で生まれたものなのです。室町時代中期、現在の生駒市高山地区をおさめていた豪族・鷹山氏から出た宗砌(そうぜい)によって、茶筌は考案されたと伝えられています。高山地区で製造される茶筌は、現在でも全国生産シェア90パーセント以上!茶道をたしなむ人には、ぜひ、見ていただきたい名品です。

この署名の主はいったい誰?奈良を代表する陶器・赤膚焼

この署名の主はいったい誰?奈良を代表する陶器・赤膚焼

写真:乾口 達司

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赤膚焼は、桃山時代、大和郡山城の城主となった豊臣秀吉の弟・秀長の命によって開かされたとされる陶器。江戸時代後期、陶工・奥田木白の活躍により、その名は全国に知れ渡りました。写真は赤膚焼の平皿ですが、それぞれの皿の表面には、何やら署名がほどこされていますよね。この署名の主、いったい誰だと思いますか?実は、イギリスの皇太子チャールズ夫妻のものなのです。チャールズ皇太子夫妻が奈良を訪れたのは、2008年10月のこと。訪問の折、なら工藝館にも立ち寄り、平皿にそれぞれサインをしたためたのでした。皇太子夫妻がいかに奈良の工芸品に関心を持っているか、このエピソードからもうかがえますね。

おわりに

奈良の工芸品が持つ豊かな伝統とその魅力を堪能していただけたでしょうか。なら工藝館では、奈良在住の工芸家たちによって作られた工芸品の販売もおこなわれており、その場で気に入ったものをお土産として買い求めることも可能です。ほかにも、日によっては、各種の展示会や工芸家たちによる工芸指導会などももよおされており、奈良の伝統工芸を学ぶのに格好のスポットであるといえます。奈良散策のついでに足を運び、千数百年の伝統を誇る、その工芸品の数々に魅了されてください。

入館:無料

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/30 訪問

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