写真:菊池 模糊
地図を見る現レバノンにあった国フェニキアは、レバノン杉で造った船を擁して貿易と海運で古代地中海世界を席巻しました。カルタゴの原義は「新しい町」という意味で、古代フェニキア人が地中海交易ネットワークの中心として新たに植民した都市で、遺跡が多く残されており、現在は世界遺産に指定されています。
古代カルタゴの遺跡の中心は、ピュルサの丘です。ここは高台にあり城壁に囲まれたカルタゴ誕生の地。紀元前814年、フェニキアからここへ避難してきた女王エリッサは、地元のベルベル人から「牛の皮一枚で覆える地」なら貸すと言われました。そこで賢いエリッサは牛の皮を細長く切り裂いてピュルサの丘を囲い土地を得たという建国伝説があります。
写真は、ピュルサの丘で発掘された古代カルタゴ時代の居住区で、わずかに残されたフェニキア人時代の非常に貴重な遺跡です。ここは有名なポエニ戦役で、カルタゴ側の最後の砦となり、ローマに破壊され埋められたのですが、近年発掘され見学できるようになりました。
写真:菊池 模糊
地図を見るフェニキア人時代のカルタゴ遺跡としてはトフェがあります。タニト神の聖域とされており、写真にあるような遺跡が発掘されています。タニト神は、カルタゴで絶大な信仰を集めた女神で、多数の赤子の生贄を捧げられたという伝承があります。
ここで幼児の石棺や骨が見つかったのは事実ですが、果たしてこれが生贄であったかどうかは学説が分かれています。当時の新生児の生存率が低かったことから、赤子を大切に葬った墓所である可能性もあるからです。カルタゴが完全に滅ぼされてしまったため、敗者側の資料がなく、全ては勝者ローマ側の解釈です。現場に立ってぜひ真相を推理してみましょう。
写真:菊池 模糊
地図を見るトフェにはタニト神の印が刻まれています。この形はカルタゴの国章であり、後にギリシャ・ローマに伝わり、金星(ビーナス)を表すマークから、女性を示すロゴになったようです。タニト神は古代地中海周辺にポピュラーな豊饒の女神たる地母神信仰と結びつき、古代エジプトのイシス神との共通性も指摘されています。
母国フェニキアが滅んだ後も、カルタゴは地中海を支配し数百年の間、大いに繁栄しました。イベリア半島西岸の銀を主として交易し、現在のイギリスや、アフリカ西岸のギニア湾方面まで至ったようです。しかし、ローマが興隆してきたため覇権争いとなりました。三度にわたる戦争(ポエニ戦役)で、アルプス越えで有名な名将ハンニバルを擁して善戦しましが、最後はローマに敗れ、徹底的に破壊され市民は虐殺されました。
写真:菊池 模糊
地図を見るフェニキア人によるカルタゴが滅んだ後、ローマ人が再植民しカルタゴはローマ帝国のアフリカ属州の中心地として栄えました。現在、ピュルサの丘など残る遺物のほとんどは、ローマ帝国時代のもので、重要な遺物は丘の上にあるカルタゴ博物館に保存展示されています。また、丘の上に立つ最も大きな建築物はサンルイ大聖堂(写真参照)。これは1884年にフランスにより造営された美しいカトリック教会で、十字軍のチュニス包囲戦で没したフランス王聖ルイ9世に捧げられました。
写真:菊池 模糊
地図を見るピュルサの丘を下って海の近くに残されている大規模な遺跡が、アントニヌス浴場と呼ばれているものです。総面積35,000平米もある巨大施設で、アフリカ最大かつローマ帝国内で第3位の大きさでした。往時のローマ帝国の繁栄が偲ばれます。
写真:菊池 模糊
地図を見るアントニヌス浴場にあるローマの遺物は多くが横倒しになっています。これは自然倒壊もありますが、5世紀に侵攻してきたヴァンダル族の破壊によるものが多くを占めています。
写真:菊池 模糊
地図を見るローマ人の住居は、裕福な古代ローマ人の生活が垣間見られる必見の遺跡です。丘の中腹のなだらかな傾斜地にあり、いわば古代の山手の住宅街といった雰囲気。現在もこのあたりは高級住宅街で、はるか古代から連綿と人々が暮らしてきた長い歴史の重みを実感できます。
写真:菊池 模糊
地図を見るローマ人の住居跡には、現場に残された像やモザイクもあり、とても興味深いです。特にモザイクは列柱回廊のあるヴォリエールの別荘と呼ばれる屋敷のものが一番(写真参照)。今でも現場に色合いが残る素敵な遺物で、古代ローマ人の優れた芸術感覚がそこにあります。
写真:菊池 模糊
地図を見るカルタゴ遺跡から見つかった出土品で特に重要なものは、国立のカルタゴ博物館やバルドー博物館に収蔵されています。特にバルドー博物館の収蔵品は圧巻で、ローマ本国でも見られない見事なモザイクが間近に見学できます(写真参照)。少しカルタゴから距離がありますが、チュニジア各地の遺物も展示されていますので、少なくとも半日を費やして見学すべきです。チュニスからカルタゴとバルドー博物館を一日で回る便利なバスツアーもありますので、ぜひ行ってみましょう。
写真:菊池 模糊
地図を見るシティブサイドは、カルタゴのすぐ近くで、北へ電車で二駅。チュニスからカルタゴ遺跡とセットで日帰り観光するのに最適です。ここの街並みは、白壁に青いドアや窓が映えて美しく、いつも観光客で賑わっています。メインストリートを東に歩けば、ところどこに地中海が見え隠れし、青空になびく白雲が旅情を誘います。
写真:菊池 模糊
地図を見るお土産物を並べた店先も魅力的で、ブラブラ歩きながらアラブ商人と値段交渉の駆け引きを楽しんでください。チュニジアは物価が安いので、つい財布の紐もゆるみがち。どうせなら街の雰囲気が良いシティブサイドで買い物して、思い出作りをしてみてはいかがでしょうか。
写真:菊池 模糊
地図を見る東の端に至ると海に落ち込むような崖の広場があり、恋人たちが座って景色を眺めています。一幅の絵画を見るようです。
写真:菊池 模糊
地図を見るシティブサイドの中心にあるのが、カフェ・デ・ナットという喫茶店。この店に上がる階段は街のランドマークで定番の待ち合わせ場所です。内部は座り込む形もある昔ながらのチュニジアのカフェの雰囲気なので、ミントティーでも飲んで休憩しましょう。
写真:菊池 模糊
地図を見る海を望むオープンカフェならカフェ・シディ・シャバーンがおすすめ。碧い海と白い建物に青いテントが映える絶景はまさに地中海のリゾートです。ここを目的にチュニジアに来る人もあるという有名なお店で、絶好の撮影スポットです。
写真:菊池 模糊
地図を見るシティブサイドの見学を済ませて駅へ下る途中、ロータリーを抜けたところにデーツ専門店 Deyma Dattes があります。厳選された美味しいデーツが洒落た箱に入れられておりセンス抜群。デーツはナツメヤシを乾燥させたアラブのソウルフードですが、特にこの店のものは定評がありお土産に最適です。
また、ロータリーを西に少し歩いたところに、スーパー MG Carthage があり、安く菓子や酒類を買うのに便利です。
住所:チュニジア共和国チュニス県カルタゴ市
アクセス:
チュニスマリン駅から列車TGMでカルタージュ・ハンニバル駅(カルタゴ遺跡に最も近い)まで約30分。
チュニスからカルタゴ遺跡とシティブサイドをめぐるガイド付きツアーバスがあり便利。バルドー博物館を加える一日バスツアーもあり。
2019年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2025/2/7更新)
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