街なかに春だけの藤雲海 大阪「信達宿の野田藤」は民家を包む花冠

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街なかに春だけの藤雲海 大阪「信達宿の野田藤」は民家を包む花冠

街なかに春だけの藤雲海 大阪「信達宿の野田藤」は民家を包む花冠

更新日:2019/04/15 10:50

やた 香歩里のプロフィール写真 やた 香歩里 鈍足の旅人、地域の魅力発掘人、駅徒歩絶景ハンター

大阪市の中心部から和歌山の熊野三山に続く熊野街道。この熊野街道が通る大阪府泉南市には、「信達宿の野田藤」と呼ばれる素晴らしい藤の木があります。その藤は、公園や寺社の庭園にあるのではありません。個人宅のお庭の藤が、大切に育てられ、4万房もの花をつけるほどに成長しているのです。満開時には民家を包み込むようにさえ見える姿は圧巻。どうぞ美しさだけでなく、そこに込められた思いも感じ取ってみてください。

街なかに忽然と現れる紫のカーテン

街なかに忽然と現れる紫のカーテン

写真:やた 香歩里

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「信達宿(しんだちじゅく)」とは、熊野三山への参詣道であった熊野街道にかつて存在した宿場町。大阪府南部の泉南市にあります。古い宿場の跡が残る町ですが、4月中旬〜下旬頃にここを歩くと、街道沿いに濃厚な紫のカーテンが現れます。それが、「信達宿の野田藤」。

街なかに忽然と現れる紫のカーテン

写真:やた 香歩里

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紫の花房が一軒の民家を覆いつくすさまは、何も知らずに見ると驚愕の眺めです。

街なかに忽然と現れる紫のカーテン

写真:やた 香歩里

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こちらは、江戸時代には信達宿で旅籠を営みつつ油商も行っていた、梶本家のお宅。文化財等ではなく、現在も住まわれている、個人のお家です。

この藤は、梶本家の先代ご当主、故・梶本昌弘さんが1987年にお庭に植えたものでした。昌弘さんはこの藤を大切に育て、藤棚も設えて、丁寧に世話をされました。そのかいあって、3年もするとたくさんの花が付くようになり、やがて評判を呼び、開花の時期には大勢の人が藤を見に訪れるようになりました。

庭の藤が藤雲海を生み出すほどの名木に!

庭の藤が藤雲海を生み出すほどの名木に!

写真:やた 香歩里

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それから30年以上。大切に育てられた藤は、その思いに応えるように大きくなり、現在では4万を超える花房をつけるようになりました。たった1本の藤の木が、幅30m、奥行き27mある藤棚にいっぱいの花を咲かせます。2001年からは「ふじまつり」として一般公開されていますが、地元の方だけでなく遠方からも人が訪れるようになり、期間中に数万人が訪れるほどに。

個人のお宅ながらも、今では泉南市の公式サイトでも紹介され、大阪府内の魅力的な地域資源を発掘・再発見しスポットをあてる大阪ミュージアム構想の登録物にもなっています。

庭の藤が藤雲海を生み出すほどの名木に!

写真:やた 香歩里

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「野田藤」というのは藤の種類の名称です。藤はマメ科の植物なので、ツルを他の木や藤棚に巻き付けて成長しますが、このツルが右に巻いており、なおかつ花房が長く垂れ下がるのが野田藤の特徴です(対するヤマフジはツルが左巻きで、花房が短めです)。大阪市福島区の野田の付近が発祥とされ、そこから「野田藤」の名がつきました。

優雅な長い花房が風に揺られる様は美しく華やかで、紫の雫が滴るよう。藤棚の藤は多くがこの野田藤です

庭の藤が藤雲海を生み出すほどの名木に!

提供元:熊野街道信達宿藤保存会

http://kumanokaido-fuji.sakura.ne.jp/index.html地図を見る

「信達宿の野田藤」の、他の藤棚ではあまり見られない鑑賞の仕方として、「上から藤を見る」というのがあります。藤棚を上から見られるように観賞台が作られており、上の写真のように紫の雲海のような眺めが見られるのです。

「藤雲海」と呼ばれているこの眺めは素晴らしいものですが、まさにベストのタイミングでなければ見るのは難しいです。時期が早いと藤の花が少なくスカスカに見え、少し遅いと花が減り葉っぱがたくさん出てきて、雲海というより野原のような眺めとなってしまいます。満開より気持ち早めがこの藤雲海の見頃。ぜひ観たい!という方は、藤の開花情報をよく確認しながらお出かけください。

「平成の花咲かじいさん」が慈しんだ藤

「平成の花咲かじいさん」が慈しんだ藤

写真:やた 香歩里

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こちらでは、藤の開花に合わせ、毎年4月20日前後の1週間ほど「ふじまつり」を開催しています。期間中は、藤棚だけでなく、中庭も鑑賞することができます。中央に可愛らしい藤、そして藤棚からさらにツルを伸ばして咲く美しい藤が同時に楽しめます。

「平成の花咲かじいさん」が慈しんだ藤

写真:やた 香歩里

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もとは梶本昌弘さんの奥様の生け花用だった藤の木の残りを植えたことから始まったという「信達宿の野田藤」。個人のお庭でこの藤を維持することは並大抵ではないでしょう。

「平成の花咲かじいさん」とも称された梶本昌弘さんは、2008年に79歳で逝去されました。その後は故人の遺志を継いだ「熊野街道信達宿藤保存会」の方々が守り続け、今でも毎年見事な花を咲かせ、多くの人を魅了しています。

「平成の花咲かじいさん」が慈しんだ藤

写真:やた 香歩里

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会場には藤にまつわる展示もありますので、この藤のルーツにもぜひ触れてみてください。「ふじまつり」期間中は、週末にはミニコンサートや餅つき、平安女人衣装の着衣体験などのイベントも予定されています。詳しくは関連MEMOの熊野街道信達宿藤保存会公式サイトをご覧ください。

野田藤のポストカードや、泉南市の地場産業にちなんだ記念タオルの販売などもあり、近隣のお店でも、藤にちなんだグッズを販売しているところがあります。夜には「花あかり」として街道要所に灯りをともし、雰囲気を盛り上げます。

夜の藤は静かにあでやかに

夜の藤は静かにあでやかに

写真:やた 香歩里

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また「ふじまつり」期間中は、17〜20時の間、藤棚がライトアップされます(中庭は17時で閉鎖)。提灯にも灯りがともり、みやびな雰囲気に。

夜の藤は静かにあでやかに

写真:やた 香歩里

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昼間はかなりの人が詰め掛けますが、夜はぐっと落ち着きます。人が少ないと優雅な香りも引き立つように感じられます。

ピークの時に見たいけど、できるだけ人が少ない方がいい…という方は、夕刻〜夜にかけての時間だと、明るいうちの藤も、ライトアップの雰囲気も楽しめるのでおすすめです。

夜の藤は静かにあでやかに

写真:やた 香歩里

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付近には信達宿のシンボルである「本陣跡角谷(つのや)家」があります。往時の信達宿の記録が残る貴重な史跡で、通常は非公開になっており特別公開時にしか見ることができません。「ふじまつり」期間中、一部日程(2019年は4日21・22日)に公開される予定です。熊野街道や信達宿の歴史を垣間見てはいかがでしょうか。

美しさだけでなく愛情も降るような信達宿の野田藤

美しさだけでなく愛情も降るような信達宿の野田藤

写真:やた 香歩里

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1本の藤の木が大きく広がり、藤の花が家を飾るように覆いつくしている姿は感動的でさえあります。すばらしい眺めですが、ご覧の際には、ぜひお願いしたいことがあります。

こちらはあくまでも個人様のおうちです。現在もお住まいになっておられますので、どうぞ人様の庭にお邪魔させていただく気持ちで、静かに、丁寧にご観賞ください。また、周囲も静かな住宅街、前の道は広い道ではなく車も通ります。周囲に注意して、また気遣い合いながら、ご覧ください。

美しさだけでなく愛情も降るような信達宿の野田藤

写真:やた 香歩里

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「この藤を訪ねる人に安らぎを 去りゆく人に幸せを」
故・梶本昌弘さんの言葉です。

この言葉を胸に、藤の下に佇むと、その思いや優しさが藤の雫とともに降り注いでくるようです。ただ美しいだけでなく、この藤を育てた人、愛する人々の想いに心つかまれるような「信達宿の野田藤」。春のほんのひとときの夢のような眺めを、ぜひご覧ください。

信達宿の野田藤の基本情報

住所: 大阪府泉南市信達牧野1338
電話番号:090-4281-8741(3月1日〜5月15日のみ開設)
ふじまつり:2019年4月15日(月)〜27日(土)
※開花遅れにより、当初の22日までから期間延長。
熊野街道信達宿藤保存会のHPにて開花状況をご確認ください。
一般公開:9:00〜17:00(ライトアップゾーンのみ20:00まで)
アクセス:JR和泉砂川駅から徒歩約8分

2019年3月現在の情報です。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/04/23 訪問

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