地下鉄×登山電車×路面電車!京都ー滋賀を走る京津線の秘密とは?

地下鉄×登山電車×路面電車!京都ー滋賀を走る京津線の秘密とは?

更新日:2019/05/14 12:41

陽月 よつかのプロフィール写真 陽月 よつか フリーライター、星空準案内人
地下鉄で登山電車で路面電車!この3役を同じ車両でこなす日本唯一の路線が、京都と滋賀を結ぶ京阪電車京津線。しかも日本で一番車両の長い路面電車でもあるのです。路線の途中には日本有数の急カーブや急勾配もあり、ここだけの工夫もたくさん。あまりにハイテクなその車両の価格は、1m当たりの単価では新幹線以上と言われています。
まさに乗り鉄必乗のレア路線、その必見ポイントをわかりやすくご紹介します!

京阪電車京津線は京都-滋賀を結ぶ路線

京阪電車京津線は京都-滋賀を結ぶ路線

写真:陽月 よつか

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京阪電車京津線(けいしんせん)は京都・御陵(みささぎ)駅から滋賀・びわ湖浜大津駅までの7駅間・7.5kmを約15分で走る路線。京都の地下鉄東西線・太秦天神川駅まで車両が乗り入れており、びわ湖浜大津駅で連絡する石山坂本線と2路線あわせて大津線と称され、通勤通学を含めた沿線住民の足として愛される路線です。と聞けば普通の電車のようですが、実はこの京津線は、日本でここだけの特殊な路線。

実はこの京津線は、御陵駅を出発する時は「地下鉄」、途中の山間を走行する時は「登山電車」、そしてびわ湖浜大津駅には日本最長の「路面電車」として到着するのです。

京阪電車京津線は京都-滋賀を結ぶ路線

写真:陽月 よつか

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京津線がびわ湖浜大津駅から発車する様子がこちら。駅から道路へと直接車両が出て来ますね。京津線は日本一車両の長い路面電車であり、日本で唯一地下鉄へ乗り入れする路面電車なのです。もちろん地下鉄・登山電車(専用軌道)・路面電車(併用軌道)の3種類を同一車両で走行する電車も、日本で京津線だけ。

地下鉄部分と路面電車部分を同じ車両で走るだけでもたいへんな上に、登山電車部分は歴史的にも名高いかなりの難所。この3部分を同じ車両のままで走るなんて、そんなこと可能なの?と驚いてしまうほどの難易度です。この走行を可能にするために、京津線には特例や特別な装置がたくさん!

日本最長、66mの路面電車!

日本最長、66mの路面電車!

提供元:京阪電気鉄道

https://www.keihan.co.jp/地図を見る

こちらが路面電車日本一を誇る長さ! 京津線の800系車両は1両16.5mの4両編成、その全長は66mです。日本の路面電車の長さは法令で定められており、規定は30m以下。この66mの長さは京都市交通局(乗り入れする地下鉄)の輸送力に合わせるための特例として認められたものなのです。

なお日本で2番目に長い路面電車は広島電鉄の5000形Green Moverで、全長30.5m。つまり京津線は、全国2位の路面電車より更に倍以上の長さがあるのです。

日本最長、66mの路面電車!

写真:陽月 よつか

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道路上では一般車と同じ信号に従い、停車・発進。電車車両が交差点上で停止してしまうことのないよう、交通信号制御がされています。

車体外観は京阪7200系電車を縮小した形。つまり低ホームから乗降できるようドア位置の低い路面電車と違って、いわゆる一般的な電車車両と同じ形をしています。一般的な形の電車が自動車と一緒に道路を走る場所は、日本ではここを含めて二カ所だけ。江ノ島電鉄の江ノ島駅〜腰越駅間とここでしか見られない珍しい光景なのです。(ただし江ノ島電鉄は鉄道として、京津線は路面電車として走っています)

百人一首でも詠まれた難所を越える登山電車

百人一首でも詠まれた難所を越える登山電車

写真:陽月 よつか

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地下鉄から路面電車へと転身する途中区間、まるで登山電車と言われるのが大谷駅から上栄町駅区間。通常なら線路・軌道として許可されないほどの急勾配や急カーブを幾つも重ねて山を越えるのです。しかもこちらの山は古来から難所として有名な逢坂山、百人一首で蝉丸が読んだ「知るも知らぬも逢坂の関」の歌でも知られています。

最大の傾斜は61パーミルの急勾配。通常は軌道の勾配は法令で40パーミル以下と定められているのですが、その約1.5倍の急勾配を特例で認められているのです。なお1パーミルとは1000メートル進むうちに1メートル登る傾斜のこと。

百人一首でも詠まれた難所を越える登山電車

提供元:京阪電気鉄道

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最大急勾配部分の最寄りとなる大谷駅も傾いており、駅ホームの傾斜は40パーミル。法令では駅の勾配は10パーミル以下なのですが、こちらも特例を認められています。駅のベンチは傾いた床の中でもまっすぐに座れるよう、ベンチの脚の長さを左右違えてありますよ。

山越えの急カーブ!最小半径カーブはR40

山越えの急カーブ!最小半径カーブはR40

写真:陽月 よつか

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山越えに多発する急カーブも必見! 写真は逢坂山トンネルのびわ湖浜大津駅側カーブでR45m(=半径45m)、京津線3番目の急カーブです。電車車両の端が当たってしまわないか心配になるほどの急カーブでありながら、これでまだ3位なのです。

山越えの急カーブ!最小半径カーブはR40

写真:陽月 よつか

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こちらが京津線2番目の急カーブ。びわ湖浜大津駅を出てすぐの交差点で、R43mとなります。車内では前方車両がカーブを曲がっていく様子が、後方車両の窓から見えるほど。更に最小曲線部分は上栄町駅からびわ湖浜大津駅側の道路になる場所で、なんとR40mという小回りカーブです。

線路の急カーブには散水装置がついており、レールの摩擦とカーブに伴う騒音を低減しています。また車輪も防音車輪。山とは言え住宅街の中を走るため、カーブ通過時のキシリ音にも配慮がなされているのです。

1m辺りの車両価格は新幹線越え!驚きのハイテク車両

1m辺りの車両価格は新幹線越え!驚きのハイテク車両

写真:陽月 よつか

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駅や線路の他、車両自体にもたくさんの工夫がほどこされていますよ。地下鉄という狭い空間を走行するために床下や天井の機器はコンパクトに抑えられており、とりわけ屋根の上のクーラーは超薄型。また路面電車でもあるため、夜間に自動車からよく見えるよう、車体側面には左右12個ずつ・合計24個の車幅灯を設置。

1m辺りの車両価格は新幹線越え!驚きのハイテク車両

写真:陽月 よつか

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パンタグラフは、地下鉄内では低く(175mm)、道路上では架線が大型車の通行の妨げとならないよう高く(1725mm)する必要があるため、1550mmもの高さ変動に対応。また急勾配に対応するために全車両が電動車(モーター車×2ユニット)で、万一1ユニットが故障しても走行可能なほどの力強さを誇ります。車輪は最大660mmと、一般的電車の車輪(最大860mm/京阪本線車両)より小さめの作り。

更には京都市交通局線内(地下線)と京津線の2種類の安全装置を搭載し、京都市交通局線内では自動運転も可能なのです。この高性能っぷりは、もう日本一のハイテク車両と言えるかも! 1m辺りの車両価格は新幹線以上と言われています。(金額は非公開)

1m辺りの車両価格は新幹線越え!驚きのハイテク車両

写真:陽月 よつか

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沿線には、神社の参道を電車が通過するちょっと珍しいスポットも。こちらの神社は関蝉丸神社。百人一首で逢坂の関を詠んだ蝉丸を祀る神社で、神社の敷地内である燈籠の後ろ・鳥居の前に電車の踏切がある形です。またこの近くの妙光寺も、門がまえの奥・山門の手前に京津線の踏切が挟まれる形。ちょっとした撮り鉄スポットとなっています。

京阪電車京津線「びわ湖浜大津駅」の基本情報

住所:滋賀県大津市浜大津1丁目3番8号
アクセス:京都市営地下鉄東西線「御陵駅」より京阪電車京津線乗車(直通)

お問い合わせは
電話番号:06-6945-4560
(京阪電車お客さまセンター/平日9:00〜19:00、土休日9:00〜17:00)

2019年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2019/03/21 訪問

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