ナポリの見どころが集まる旧市街の一角に「サン・カルロ劇場」があります。隣は王宮、向かいはウンベルト1世ガレリアという立地。この劇場はナポリ・シチリア王であったカルロ3世により1737年に建造。ヨーロッパ最古の現役オペラハウスとしてその名を知られ、ミラノのスカラ座、ローマのオペラ座と並ぶイタリア三大歌劇場のひとつです。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るこの劇場が誕生した背景は、カルロ3世が強国ナポリの力を世界へ見せつけるために新劇場を熱望したことから。ナポリ出身の建築家ジョヴァンニ・アントニオ・メドゥラーノらの指揮の下8ヶ月足らずで完成した劇場は1,379の観客席を有する大規模なものでした。
こけら落とし公演はカルロ3世のオノマスティコ(自分と同じ名前の聖人を祝うキリスト教の習慣)にちなみ1737年11月4日に行なわれ、劇場には国王の名前がつけられたのです。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るその後、1816年に火災に遭い、劇場は消失。すぐに建築家のアントニオ・リッコリーニにより9ヶ月という早さで再建。その際、天井には500平方メートルにも及ぶ天井画「知恵と戦いの女神ミネルヴァに偉大な詩人たちを紹介する太陽神アポロ」がジュゼッペ・カンマラーノらにより描かれました。この天井画は劇場の音響効果にも大貢献!天井に響き渡る音を観客席へ跳ね返す役目があります。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る劇場誕生から数々の音楽家がここで腕を振るい、劇場の名声はヨーロッパ各地に波及。若きモーツァルトも1778年にサン・カルロ劇場でオペラを鑑賞し、その出来ばえに感嘆しました。
1800年代は劇場の黄金期。ジョアッキーノ・ロッシーニは1815年にサン・カルロ劇場に捧げた最初のオペラ「イングランドの女王エリザベッタ 」を発表。この劇場で歌手として活躍していた将来の妻イザベッラと出会いました。ヴィンチェンツォ・ベッリーニはナポリ音楽院在籍中である1826年に「ビアンカとフェルディナンド」を、イタリアの歌劇王ジュゼッペ・ヴェルディは1859年に「仮面舞踏会」を、それぞれこの劇場のために書き上げ、発表しています。
サン・カルロ劇場はバレエでも有名です。当時幕間に上演されていた喜劇オペラをカルロ3世が廃止して、オペラの趣旨をなぞった踊りを披露させました。これがバレエの元祖。その後、長い年月をかけてヨーロッパでバレエが芸術として広がっていきました。
サン・カルロ劇場には1812年に設立されたヨーロッパ最古のバレエ学校があり、スターダンサーも多く輩出されました。
サン・カルロ劇場では専属ガイドによる見学ツアーを毎日実施。オペラ観賞以外で劇場に入れるのは見学ツアーのみです。ツアーの詳細はページ後半の「サン・カルロ劇場の基本情報」で確認してください。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るツアーではホワイエ(写真)と劇場内を見学。ホワイエは1937年に王宮に続く庭に面して新たに増設されたものです。第二次世界大戦の空襲で被害を受けましたが、戦後すぐに修復されて今ではもとの美しさを取り戻しています。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る劇場内で一番に目を引くのは、やはり豪華な王族専用バルコニー!王冠を被った天蓋は赤地に緻密な金色の刺繍が施され、席を囲うバルコニーや内部の天井は金細工で細かに装飾されています。王族専用のバルコニーに入ることはできませんが、内廊下から国王気分になってその眺めを楽しむことができます。
そして、劇場全体の配色にも注目です。「赤と金」というこの上なく上品さを感じる組合せですが、劇場が誕生した当初はブルボン家のカラーである青金銀で飾られていました。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る舞台上部の時計にご注目!1816年の火災後、新たに設けられたものです。時計右下にいる翼をもつ人物の指が針となり時刻を表示、その左に座すギリシャ神話の半人半魚の美声の持ち主セイレンが時間が進むのを止めようとしています。これは”芸術は時を超越する”ことを意味しています。時計の左側には楽器をもった三美神、右側には3人の踊り子がそれぞれ並び、時計の上にはカルロ3世を輩出したブルボン家の紋章が神々しく輝いています。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る次に注目すべきは、各バルコニー席に設置された鏡。ずらりと並んだこれらの鏡は2層中央にある王族専用バルコニーを見るためのもの。すべての鏡がこの王族専用バルコニーの方を向いています。観客はこの鏡で国王の到着を確認したり、国王より前に拍手やアンコールを要求するマナー違反をしないために細心の注意を払っていました。国王が立ってブラボーと拍手をすれば観客全員も総立ちになり拍手喝采したそうです。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る最後は、舞台前にあるオーケストラの演奏席です。当時、オーケストラは平土間席の端で演奏するのが一般的でしたが、1872年にジュゼッペ・ヴェルディの提案で舞台と平土間席の間に観客席よりも一段低くした演奏席が設けられました。世界で活躍したヴェルディの経験から生まれたこの改良で劇場の音響がより完璧なものに近づいたのです。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るそれでは、ここでサン・カルロ劇場2020年のオペラ演目と日程をご紹介!
<トスカ>1/22,23,24,25,26,28,29
<ノルマ>2/12,14,15,16,18,20
<冬の旅>3/10,11
<魔笛>3/27,28,29,31,4/2,3,4,5
<3つのオレンジへの恋>5/3,5,7,8
<奥様女中>5/14,15,16,17
<清教徒>5/24,26,27,28,29
<宮廷楽士長>6/5,6,7
<アイーダ>6/19,20,21,23,24,27,28
<つばめ>7/12,15,19,22,24
<カルメン>7/18,21,23,25,26
<メリー・ウィドウ>9/17,18,20,23,24,25,26,27
<マオメット二世>10/2,4
<椿姫>10/25,27,28,29,30,31
チケットは最上階の席で大人ひとり30ユーロからとお手頃な料金設定です。夏は劇場内の暑さが懸念されますが、空調設備が整っているので暑さ対策も万全です。
日本でのチケット購入は、ページ巻末の関連MEMO「チケットのオンライン購入」をクリックして劇場サイトから直接購入するのが便利です。ただし、オンラインでは一般料金のチケットのみ販売。年齢制限付きの割引チケット等を希望する人は劇場窓口で購入してください。
現地でチケットを購入する場合は指定代理店または劇場窓口へ。電話によるチケット購入も可能です。
最後に、劇場を訪れた記念にお土産はいかがですか?1階のカフェに併設されたお土産ショップではオペラグラスやポストカードなど素敵な劇場グッズが揃っています。忘れられない旅の思い出として日本に持ち帰りましょう!
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る住所:via San Carlo, 98/F, 80132 Napoli
電話番号:
+39-081-7972412(見学ツアー受付)
+39-081-7972331または+39-081-7972421(チケット売り場)
アクセス:地下鉄1号線トレド駅から徒歩約8分、ナポリ中央駅からR2 サンカルロバス停下車すぐ
<見学ツアー>
開催日:月曜〜土曜 10時30分〜16時30分までの計6回、日曜は午前のみ
言語:伊語、英語、仏語。言語ごとの開始時間は関連MEMO「サン・カルロ劇場の見学ツアーページ」で確認ください。
所要時間:45分
料金:大人ひとり9ユーロ、30歳以下と60歳以上は7ユーロ
※リハーサル時は実施しない回もあるので事前予約をオススメします。日本からの事前予約はメールが便利。当日申込みは劇場のチケット窓口へ。
<チケット売り場>
窓口の営業時間:月曜〜土曜 10時〜21時、日曜と祝日 10時〜18時、
電話によるチケット購入:月曜〜金曜 8時30分〜19時、土曜 8時30分〜14時、日曜 定休日
2019年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/3/19更新)
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