写真:乾口 達司
地図を見る秀吉が播磨征伐に着手したのは、天正5年(1577)の秋。西播磨の拠点・上月城や福原城を攻略し、播磨はまたたくまに平定されました。ところが、翌年3月、それまで織田方として活躍してきた三木城主・別所長治が、突如、離反。織田方と敵対関係にあった西国の毛利氏に寝返ります。それに呼応して播磨の諸勢力が次々と毛利方に寝返り、播磨における秀吉の優勢は一挙に後退してしまいました。このエピソードからは、長治の発言力がいかに大きかったかがうかがえるでしょう。
それもそのはず。別所氏は、中世以来、播磨国の守護大名として君臨してきた赤松氏の流れをくむ名門氏族。応仁の乱の後、赤松家臣団のなかから別所則治が頭角を現し、就治の代には東播磨を基盤として主家をしのぐほどの勢力を築きあげました。長治離反の折、特に東播磨の諸勢力がこぞって長治に同調した背景には、このような長年にわたる別所氏の権威と権力が強く影響していたのです。写真は三木城内に建立されている長治の騎馬像ですが、後の天下人・秀吉に叛旗を翻した謀反人であるにもかかわらず、地元の人たちがいまでも長治および別所氏に深い思いを寄せているか、この堂々たる雄姿からもうかがえますね。
写真:乾口 達司
地図を見る長治の離反が明らかになると、秀吉は三木城をとりかこみ、兵糧攻めにする作戦をとります。その鉄壁の包囲網により、城内の食糧不足は日を追って深刻化。餓死者が続出したといわれています。その状況は、後世、「三木の干殺し」と呼ばれるほど凄惨なものでした。
三木城の危機を聞きつけた毛利方は、天正7年9月、秀吉軍を攪乱し、城内に兵糧を運び入れようと試みます。いわゆる平田・大村の合戦です。このときは三木城内からも淡河城主の淡河弾正忠定範らが打って出て奮戦。秀吉軍を蹴散らしましたが、戦力の圧倒的な差の前に次第に追い詰められ、遂に自害したといわれています。写真の石碑は、定範の自害した地に建立されている「淡河弾正忠定範戦死之址」の石碑。三木合戦といえば、籠城戦というイメージがありますが、実際には兵糧の補給をめぐって、両軍のあいだで激しい戦闘も繰り広げられていたのです。
ちなみに、定範は三木城に身を寄せる前、淡河城で秀吉の弟・秀長の軍勢と戦っています。その際、定範は城内から牝馬数十頭を放ち、秀長軍を攪乱するという奇抜な戦法で勝利をおさめています。最終的に自害することになったとはいえ、平田・大村の合戦の折にも定範がさまざまな戦法を駆使して秀吉軍を翻弄していた姿が、目に浮かんできませんか?
写真:乾口 達司
地図を見る平田・大村の合戦の翌月、それまで毛利方に与していた備前の戦国大名・宇喜多直家が、織田方に寝返ります。さらに、長治と呼応して挙兵した荒木村重の有岡城が陥落。三木城は完全に孤立してしまいます。万策尽きた長治は城内に立てこもる将兵たちの命を助けるという条件のもと、自害する道を選びます。天正8年1月17日のことでした。ここに1年10ヶ月におよんだ三木合戦は幕を閉じたのです。写真は雲龍寺にまつられている長治夫妻の首塚。石塔の前には真新しい花が手向けられ、ここでも長治らがいまなお大切にまつられていることがうかがえます。
写真:乾口 達司
地図を見る三木城の落城後、秀吉は三木城のふもとに位置する本要寺に本陣を移し、戦後処理に着手します。秀吉のとった政策は、戦火から逃れた領民たちを三木の地に呼び戻すため、租税を免除するというものでした。その仕置きはみずからをさんざん悩ませた相手に対するものとは思えないほど寛大であり、そのあたりに後の天下人・秀吉の度量の大きさを見てとることができます。
写真:乾口 達司
地図を見る戦後処理を終えた秀吉は西へと軍を進め、播磨一国の平定を成し遂げました。しかし、そんな秀吉自身、この合戦の最中に大切な人を失っています。秀吉に付き従い、数々のいくさを乗り越えてきた天才軍師・竹中半兵衛です。以前から病を発症させていた半兵衛は秀吉の命によって京都で療養していましたが、膠着した戦況を見かねて播磨に舞い戻り、天正7年6月13日、遂にこの地で亡くなりました。享年36。秀吉はその死を深く嘆き悲しんだといわれていますが、その意味で、三木合戦は秀吉にとっても終生忘れられない戦いであったといえるでしょう。写真は半兵衛の墓。秀吉の本陣が置かれていた平井山のふもとにあり、いまも大切にまつられています。
三木合戦の経緯がおわかりになったのではないでしょうか?ほかにも、平田・大村合戦の折、戦死した秀吉方の有力武将・谷大膳の墓や別所氏の霊廟が置かれている法界寺など、紹介しきれなかったスポットがまだまだあります。播磨を舞台にしたNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』が放映されている今年、実際に三木の地に足を運び、長治と秀吉、両者の息詰まる攻防に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
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(2023/12/5更新)
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