神水流れる清浄な町並み、京都 上賀茂神社の「社家町」を散策しよう!

神水流れる清浄な町並み、京都 上賀茂神社の「社家町」を散策しよう!

更新日:2014/04/24 14:23

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター
ご存じ、京都盆地の北端に鎮座する上賀茂神社(賀茂別雷神社)。

その歴史は極めて古く、現在では世界遺産「古都京都の文化財」の構成要素の一つとしても知られ、まさに京都を代表する神社の一つと言えるでしょう。

そんな上賀茂神社の東隣には、独特の風情が漂う「社家町」が広がっています。上賀茂神社を参拝した際には、ぜひともこの「社家町」を散策してみて下さい。

上賀茂神社に仕える神職たちが住まう町

上賀茂神社に仕える神職たちが住まう町

写真:木村 岳人

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「社家町」とはなんぞや? と思われるかもしれませんが、それはズバリ、神主さんなど神職(社家)の住宅が集まる町の事。神職は仕える神社のすぐ側に家を構える事が多く、特に大きな神社ともなると数多くの社家住宅が建ち並び、社家町が形成されているのです。

とはいえ、かつては数多く存在していた社家町も、現在はそのほとんどが失われてしまい、まとまった規模で残るところは極々わずか。

そのような中、上賀茂神社の社家町は昔ながらの社家住宅が連なる町並みとして国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。しかも全国で唯一「社家町」という名目での選定を受けた、まさにオンリーワンの町並みと言えるでしょう。

社家の住宅は、武家住宅と寺院建築のハイブリッド

社家の住宅は、武家住宅と寺院建築のハイブリッド

写真:木村 岳人

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上賀茂の社家住宅は、外観や間取りなどは武家の住宅に近いのですが、部分的に寺院建築の特徴も併せ持つ、ハイブリッドな建築様式となっています。

正面上部には懸魚(げぎょ)や豕扠首(いのこさす)といった妻飾りも見られ、住宅でありながらも風格が感じられる、まさに社家といった風情を醸しています。

現在、上賀茂にはこのような社家住宅がおよそ20軒残っています。しかし、江戸時代には300軒を越える社家があったといいますから、驚きですね。

上賀茂神社から流れる禊の清流「明神川」

上賀茂神社から流れる禊の清流「明神川」

写真:木村 岳人

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上賀茂の社家町は、明神川と呼ばれる小川に沿って続いています。さらさらと流れるせせらぎの中、社家邸宅の門や土塀、小橋が連なる光景は風情満点。

この印象的な町並みの中心を担う明神川は、上賀茂神社の境内を流れる「ならの小川」から注いでいるもの。「ならの小川」は百人一首にも詠まれ、祭事の際には禊や人形流しが行われる、いわば神水の川。

それが神社の境内から出ると「明神川」と名を変え、社家町を潤しているのです。

敷地内に清流を取り込んだ、水のある社家の生活

敷地内に清流を取り込んだ、水のある社家の生活

写真:木村 岳人

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明神川沿いに建ち並ぶ社家住宅では、それぞれの家の敷地内に明神川の水を引き込み、生活用水や庭園の遣水、そして身を清める禊の水として利用してきました。

水の管理もしっかりなされており、庭園を巡っただけの水はそのまま明神川へと戻されますが、洗濯などに用いられた汚水は「水口(すいくち)」と呼ばれる下水処理専用の井戸へと流し、明神川の清浄さを保ってきたのです。

社家町を過ぎた後は農家の農業用水としても用いられ、地域の田畑を潤したといいます。

社家庭園の特徴を残す、旧錦部家庭園は絶対見よう

社家庭園の特徴を残す、旧錦部家庭園は絶対見よう

写真:木村 岳人

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町並みの中ほどに位置する西村家では、見事な庭園を見学する事ができます。これは西陣織で財を成した西村家が明治時代に買い取って別荘としたもので、かつては社家「錦部(にしごり)家」の住宅でした。

その庭園は養和元年(1181年)、上賀茂神社の神主を担っていた藤木重保(ふじきしげやす)が作庭したと伝えられています。

庭園の背後には上賀茂神社の祭神である「賀茂別雷大神」が降臨した神山を眺める事ができ、またその神山の降臨石を模した石組も設けられているなど、上賀茂神社の神職に相応しい庭園となっています。

<錦部家旧宅(西村家別邸)>
【開館時間】9:30〜16:30 *冬季休業(12月9日〜3月14日)
【入館料】大人500円、小学生以下250円

のんびりと散策するのにぴったりの町並みです

上賀茂神社は毎日数多くの人出で賑わっていますが、その東に広がる社家町は意外と見過ごされがちのようで、行き交う人の数もそれほど多くはありません。閑静な雰囲気で落ち着いており、社家町の雰囲気を楽しみながらぶらぶら歩くのに最適です。

上賀茂神社を参拝した後には、この社家町にも足を運んでみると、より一層上賀茂を楽しむ事ができるでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。

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