歴史が息づく童話のような街〜エストニア・タリンの中世散歩〜

歴史が息づく童話のような街〜エストニア・タリンの中世散歩〜

更新日:2019/05/15 10:40

藤 華酉のプロフィール写真 藤 華酉
赤い屋根、白い壁、蒼い海と入り組んだ路地の可愛らしい街並み―――エストニアの首都、タリンは人がメルヘンに求める全てを備えています。その上、時代考証に基づく美味しい歴メシや、歴史を愛おしく感じる中世のエピソードも盛りだくさん。中世の風を感じさせながらも、アクセスにも優れています。遠い昔に生きていた名もなき人々の生活を感じに、愛すべき街・タリンの歴史散歩へご案内します。

「三国」にはまとめられない!個性あふれるエストニア

「三国」にはまとめられない!個性あふれるエストニア

写真:藤 華酉

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エストニアは、ラトビア、リトアニアと並んでバルト三国の一角です。
しかし実はこの三国、横の繋がりはほぼバスのみとあって中々横断しにくい立地。その上、独立後は長らく経済的に苦しい中にあって、エストニアだけはIT産業で頭角を現し、「バルドの優等生」などと呼ばれて現代化が進んでいます。EUへの加入も真っ先に果たし、現在の通貨はユーロです。

言わずと知れた最先進国、フィンランドとは目の鼻の先と言う事ともあり、日本からの直行便でフィンランドを訪れる観光客にも訪れやすい立地です。

治安良し、物価良し、見どころ多し。タリンは英語が通じる事もあり、旅行好きにとっては見逃せない場所となっています。

ここがヨーロッパの出島 上の街と下の街

ここがヨーロッパの出島 上の街と下の街

写真:藤 華酉

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現代人の目をも驚かすタリンの素晴らしい中世芸術がどのように芽生えたのかと言えば、話は12世紀にまで遡ります。当時バルト海を席捲していた商人ネットワーク、ハンザ同盟の繁栄により、蜂蜜や木材と言った名産物を売り買いしていたタリンは豊かな街に成長しました。

しかし、商売とは諸刃の剣。
遠方から訪れる商人は、しばしば疫病や危険思想を連れて来るのでした―――そうした警戒から、タリンの王族は、商人たちを決して王城の近くまでは寄せ付けなかったのです。

ここがヨーロッパの出島 上の街と下の街

写真:藤 華酉

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その有様は、さながら長崎の名所「出島」のよう。タリンの街は、王城や貴族のお屋敷を含む「上の街」と、裕福な商人が築き上げた「下の街」に分かれています。

とは言え、現代においてはどちらも麗しの観光名所。
上の街には現在も国会議員となっているトームペア城(内部非公開)や大聖堂、城壁などが残り、格調高い雰囲気を醸し出しています。

太っちょマルガリータさんと今は亡き人々の下町

太っちょマルガリータさんと今は亡き人々の下町

写真:藤 華酉

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タリンを訪れる観光客を最初に圧倒するのが、現代でもあまりに立派な城壁です。そんな城壁の中でも、海からの外敵を睨むひと際目立つ門の名前が「太っちょマルガリータ(Paks Margareeta)」。ずんぐりむっくりした外見にぴったりの名前ですが、その由来は、塔が牢獄として使われていた時代、食事を切り盛りしてくれていた女傑・マルガリータさんにちなんでいると伝わります。

本名は勿論、実在したのか、どんな人物だったのかも今となっては分からない中世庶民の名前が現在にも残る、面白くも愛おしい場所です。

太っちょマルガリータさんと今は亡き人々の下町

写真:藤 華酉

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現在は「太っちょマルガリータ」は海洋博物館となり、ハンザ同盟の時代から、ロシアの圧政を受けていた戦時中に至るまで、エストニアの英知を尽くした船や貿易の様子を垣間見る事が出来ます。

<基本情報>
住所:Pikk 70, 10133 Tallinn, エストニア
電話番号:+372-641-1408
開館時間:10時00分〜19時00分
入場料:10 EUR

太っちょマルガリータさんと今は亡き人々の下町

写真:藤 華酉

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中世―――と言っても、ロマンチックなイメージばかりではありません。歴史好きな方なら、窓から排泄物を投げ捨ていた時代でしょ?と敬遠してしまうかも知れません。
それもまた事実、中世とは死と疫病の時代でした。

中世芸術の宝庫であるタリン、「聖ニコラス教会」には、悲しみを語る「死の舞踏」と呼ばれる一連の絵画が素晴らしい状態で残されています。ヨーロッパを襲ったペストの時代に好まれた、各階層の人々を死神が連れ出す「死の舞踏」ですが、色合いも鮮やかなら、モチーフも中々に意味深。死神に手を引かれた王侯貴族は絶望の表情を浮かべていますが、死は貧しい農民を手助けし、子供をあやす微笑ましい姿でも描かれています。

ヨーロッパ中に残る「死の舞踏」のモチーフですが、これ程間近に、色合いも鮮やかな状態で残されているのは珍しいもの。光と影、芸術が語り掛ける中世の姿を感じ取れます。

<基本情報>
住所:Niguliste 3, 10146 Tallinn, エストニア
電話番号:+372-631-4330
開館時間:10時00分〜18時00分

飯旨ければ全て良し 中世メシを再現!

飯旨ければ全て良し 中世メシを再現!

写真:藤 華酉

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タリンの街を歩けば、中世の時代に迷い込んだような気持ちになる事、請け合い。となれば、中世メシを食べたいし、中世人らしいお茶を飲みたくなりますね。

タリンの中世レストラン「オルデ・ハンザ」は、厳密な時代考証を経ており、ヨーロッパ内でも有名店です。考証を経た上で、何とか現代人の舌にも合う様に考え尽くされたメニューは興味深いばかり。店員さんの衣装や、店内の内装も凝っており、トイレにさえ一見の価値があります。日本語メニューも用意されているので、思う存分、中世を味わえますよ。

<基本情報>
住所:Vana turg 1, 10146 Tallinn, エストニア
電話番号:+372-627-9020
営業時間:11時00分〜23時00分

飯旨ければ全て良し 中世メシを再現!

写真:藤 華酉

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散策の後には、城壁に登ってみませんか。カフェ、「コヴィックダネボルグ」は、城壁の上と塔の中にある贅沢な立地のカフェです。
タリンの人々が愛する旧市街の街並みを、一番の特等席で眺める事が出来ますよ。

<基本情報>
住所:Luehike jalg 9, 10130 Tallinn, エストニア
電話番号:+372-554-7124
営業時間:9時00分〜23時00分

現実に帰りたくない!城壁と石畳の歴史散歩道

現実に帰りたくない!城壁と石畳の歴史散歩道

写真:藤 華酉

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タリンの観光名所は上の街・下の街を合わせても城壁内に収まっており、観光しやすい街です。その本当の見どころは、すり減った石畳が残る、街並みそのものかも知れません。

横暴を極め、宗教革命時に破壊された壮麗なドノミコ修道院の廃墟が残る「カタリーナ通り」、中世に惨殺された女性の幽霊が出るという「ヴァイム通り」、かつて覗き見趣味の男が住んでいたなんていう話が残る「ピック通り」など、タリンの街には遠い昔の人々の逸話が詰まっています。

現実に帰りたくない!城壁と石畳の歴史散歩道

写真:藤 華酉

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どの通りもおおむね、立派な市庁舎の残る「ラエコヤ広場」に続いており、城壁が目立つ事もあって迷う心配はありません。
ゆっくり街を歩き回れば、あなただけの愛すべき中世を見付ける事が出来ます。

中世のロマンに満ちた「タリン」

フィンランドのヘルシンキから船で2時間半程度、飛行機では30分程度と、非常に行きやすい立地にあるタリン。フィンランドには日本への直行便が出ている事もあり、遠いようで近い国だと言えます。
清潔で現代的な首都でありながら、遠い昔の人々の暮らしがいまだに息づくタリンの街は、中世のロマンに満ちています。中世メシを味わい、街をそぞろ歩いて、贅沢なタイムスリップをお楽しみください。

2019年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/24−2014/03/29 訪問

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